表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
猫、猫、猫!──機械の猫に心を与えるのは罪ですか?  作者: 綾白
第2章 満たすもの

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/40

第10話 鋼の棲家

 廃工場区画へ向かう道には、鋭い風が吹いていた。

 鉄と油の匂いを乗せた空気が、昼の日差しの中でも鈍く重く感じられる。


 風化した道路をラドリーのバイクが走り抜ける。

 後部座席に乗ったソラは、しっぽを風に揺らしながら興味津々に周囲を見回していた。


「ここって……なに? 建物がみんな、ぐしゃって潰れてる」


「昔の戦争で吹き飛ばされて、そのまま放置されたんだ。元は物資工場だったらしいが、今じゃモンスターの棲家になってる」


「モンスターの……すみか。悪いやつらのおうちだね」


「ああ。気を抜くなよソラ」


「うん、わかった!」


 二人がたどり着いたのは、かつて自動兵器や産業機械を製造していた大規模工場群だった。

 建物は崩れ落ち、鉄骨やパイプが地面から骨のように突き出している。

 ひび割れたガラス、ねじれた金属——時の止まった風景がそこにあった。


 ラドリーはバイクを物陰に隠し、ソラの耳元で静かに囁く。


「目撃情報が正しければ、多脚型サメシャークが4体。目よりも振動や電磁波に敏感なタイプだ。動きは速いが、狭い場所じゃ思うように動けない。上から撹乱できれば、俺が仕留められる」


「ボクが囮になるんだね」


「できそうか?」


 ソラはニッと笑った。


「ボク、速いよ」


 工場内へ一歩踏み込むと、空気が変わった。

 腐食した床が軋み、奥からかすかに機械音が聞こえる。


 ラドリーはライフルを構え、耳を澄ませた。

 そのとき、暗がりの奥で赤いセンサーアイが幽鬼のようにいくつも浮かびあがった。


「来たか」


 鉄屑の山を崩すように現れたのは、金属の脚で地を掴む異形——多脚型サメシャーク。

 かつて海で使われていたAI兵器を地上用に転用した結果、野生化したモンスターだ。

 5メートルを超える巨体が、4体。


「ソラ、行け!」


「了解!」


 ソラが跳ぶ。


 梁から梁へ、支柱から崩れた足場へと、しなやかに駆け抜ける。

 動きは予測不能で、瞬く間に敵の注意を惹きつけた。


 鋭利な脚が床を裂き、ソラに迫る——


 ラドリーは狙撃位置につき、静かに照準を合わせる。


 一発。赤い目が消える。


 一体が崩れ落ち、残る三体が警戒モードへ移行する。

 だが、ソラはすでに別の場所に姿を隠していた。


 次の瞬間、天井を走るパイプを蹴って空中へ。


 二体目の真上を飛び越え、壁の影に素早く潜り込む。

 一体が反応して壁を突き破る勢いで跳躍した——そこに、ラドリーの二発目が正確に入る。


 ——残り二体。


「ラドリー、こいつら……ちょっと賢いかも! 連携してくる!」


 通信越しにソラの声。


「なら、こっちもだ。下の通路、行けるか?」


「うん、任せて!」


 ソラは軽やかに身を翻し、一段下の通路に滑り込んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ