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ミーハー根性は、教室から始まった2

 

 どこに行くのかなと思っていた時でした。

 前方から六年生の先生が、片手をブンブン振りながら、どたどた、ドスドス走って来たのです。


「お父さーん!すみませーん!」


 その時のお父さんの顔ったら!面白くて仕方なかったです。

 思わず笑いそうになって、必死にこらえました。


 お父さんは、かっと目を見開くと、次の瞬間ポカーンとなって、最後に口を、あーんぐり開けて棒立ちになりました………この表現が、ピタリと当て嵌まりました。

 あんな呆然顔って、見た事ありませんでした。



 はっと我に返ったお父さんからは、もうすっかり毒気が抜けていました。

 そして、困ったように眉尻を下げて、大谷先生に、こそっと小声で言ったのです。


「先生、もういいです。あのお母さんじゃあ、まともな子供には育ちません。僕には、よく分かります。ああいう人には、何を言っても通じませんから。すみませんでしたね」


 後ろで聞いていた筆者は、吹き出しそうになりました。

 謝った保護者の方って初めて見ましたし、何より大変な勘違いをしていたんですから!


 そんなお父さんに、大谷先生が、困ったような申し訳なさそうな顔をして言いました。


「お父さん、担任です」


「えっ!?」


 再び目を剥き、ポッカーン!! 大口を開けて、あーんぐり!!

 最っ高に面白かったです。


 まさか先生だとは思わなかったのでしょう。

 物凄く素敵な先生で、筆者は大好きだったんですけど。

 まあ、その風貌は、見事でした。

 《性格が良いバージョンの悪役令嬢》という言い方が、的確だと思います。


 まずは、見事な縦巻きロール!!『エースをねらえ!』という漫画があるのですが。そう、まるで、お蝶夫人!!

 次に、装飾品!!さすがに指輪は小ぶりでしたが、大きめのイヤリングにネックレス!!


  上下ともに、ふりっふりっのファッション!!

  例えるなら、ピンクハウスというブランド品のワンピースでしょうか。いとこが好きで着ていたのですが、全体的にすごかったです。

  華やかというか、派手やかといいますか、可愛いと思いますけど。


  ラメ入りのド派手メイクも、ばっちり!!

  少し残念なのが、ぽっちゃり系、オブラートに包まず言うと、でっぷり系でした。

 廊下をバタバタ走ってではなく、「ドスンドスン走って来た」が、ぴったりの体系でした。


 性格は、めちゃくちゃ優しくて、子供たちに大変好かれていて、頼りになる姉御肌で愛されキャラの先生でしたけど、ファッションヘアメイクだけは、今でいう悪役令嬢そのものでした。


 そういうわけで、お父さんは、完全に勘違いを起こして、先生が話す間、気もそぞろといった感じで、さっさと帰りたいのか、一言も発しませんでした。

 先生が、児童が意地悪をするに至った経緯や、状況やら何やらを説明しながら、ひたすら謝っているのを、うわの空で聞いているという風に見えました。


 黙って帰って行った時は、子供心に嬉しかったので、思わず万歳をして声に出していました。


「やったー!やっつけたー!」


 どっと笑いが起きました。職員室で仕事をしていた先生は、皆笑っていました。 


 筆者は、片一方に(先生側に)肩入れする性格でしたので、(今も変わっていませんが、)この一件は、痛快でした。


 悪を撃退したかのような、晴れ晴れとした気持ちで、事務員さんから貰った菓子パン(昼ご飯)を食べました。


  そのお父さんは、筆者が知る限りは二度と邪魔をしに来ませんでした。


  悪役令嬢スタイルの愛され先生は、とっくの昔に退職されていますが、おそらく今も、見事な縦巻きロールの素敵なおばあちゃんだと思います。


 先生の面白い武勇伝は多々ありますが、この辺で終わります。

 小学校の先生の実情は語ってはいけないので。おもいっきり語りましたが。

 そのお父さんは、先生よりもずっと御歳で、あれから何十年も経っているので、時効という事に致します。


 きっと筆者のミーハー根性は、小学校から始まったのだと思います。

 もしかしたら、保育園かもしれませんけど。


 小学校のプールで泳がせて貰ったり、先生たちから菓子パンを頂いたり、丸付けを覗いたり、先生たちの談笑に耳を傾けたり、ミーハー根性を思う存分発揮できた楽しい夏休みでした。


 母親は、色んな場所に遊びに連れて行ってあげたかったと言ってくれましたし、クラスの子供たちは、どこそこのプールに遊びに行った、遊園地に行ったなど、夏休みが終わると、自慢話のように得意げに言っていましたが、羨ましいとは思いませんでした。


 世界中を探したって、誰もいない夏休みの教室、それも「自分が通う小学校ではない」を校内探検した子供はいないでしょうし、無人の教室に、こっそり入った子供はいないでしょう。


 夏休みの《小学校の教室の匂い》を知っている子供は、当時一人もいなかったので。

 もちろん、自慢なんかしませんでした。先生たちが、咎められますから。


 今、書いていますけど、その頃いた先生たちは、みーんな退職されて長いので、これもやはり時効でしょう。

 自分に甘い事この上ないですが、ミーハー根性で、生きてますので。


あの夏休み、あのお父さんに、こう言ってやりたかったです。


「愚痴なら校長に電話しろ!!」


 先生びいきは、一生変わりません。


 小学校が、ブラック企業さながらなのは、何十年も前から変わっていませんが、今は、どんどん世代が変わっています。

 年配の先生たちが退職しているので、若い子に負担がかかるようになって、小学校の先生になるのを嫌がる子が増えてきたようです。



高校生編の後書き 



 あの時、「先生たち、先週の復習をしてるから。その間に、食べ終わりなさい」と言って貰いましたが、正直、全然嬉しくなかったです。


 隣の席の友達は、「良かったね」と悪気なく笑っていましたが、チクった生徒には、本気で腹が立ちました。


 仕方がないので、皆が英語の復習をする中、一人だけ昼ご飯を黙々と食べました。正直なところ、恥ずかしかったです。


 それに、冷めた唐揚げは微妙な味でしたし、今でも心の中に、虚しい後味が残っています。非常に虚しい昼休みでした。 


 でも、中学生に混じって、わいわい、わあわあ騒ぎながら一緒に廊下を走ったのは、楽しかったです。そこは、いい思い出、まさに青春の一ページでした。


 けれど、告白を邪魔された男子は、本当に気の毒でした。

 一緒に、からかわれた女子も、可哀そうに思いました。


 ミーハーにも、暗黙のルールは必要です。

 盗み見るなら、黙って見守る!それが、真のミーハー根性!

 筆者は、そう思います。


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