第58章〜取引と偽物〜
「あぁ久しぶりだね、ノックス」
人を小馬鹿にするような声の少年が、髪をいじりながら部屋の入り口に立った。
「どういうつもりだ……今の俺が敵であることは分かってるだろ」
リテネが次の一歩を踏み出した瞬間、リテネとノックスの額に向けて互いにピストルを構えていた。
「相打ちか……こっちは上等だ」
「生憎だな、吸血鬼は額を撃ち抜かれたところで死なねーよ」
ピリついた空気に俺たちが何も動けずに、ゆっくりと時が流れる。
お互いに表情を少しも変えずに向けていたが、突然リテネが銃を下ろした。
「残念だけど、明らかに部が悪いね。君を殺したあと彼らと4対1は微妙だ」
「元々そのつもりじゃないだろ。お前の目的は」
ノックスは銃を下ろさずに話し続ける。
「もちろん。君たちにとってもいい話がある」
胡散臭い微笑みで、獲物を見つけた蛇のようにこちらを見つめていた。
「今君たちと取引するメリットは全くない。いつでも殺せるんだぞ。さっさと全部話しきれ」
話終わると同時にノックスは発砲した。弾丸はリテネの顔面スレスレを通り、壁に着弾する。
しかし、リテネは全く動じなかった。
それどころか、即座にホルスターからピストルを抜き取り発砲して、ノックスの髪の毛を掠らせた。
「反応が鈍ったんじゃないかい?」
「うるせぇ。いいから話せ」
ピストルを持つ手を震わせながら睨み続けている。
「そうか、話を本題に戻そう。もし君たちがこの話に乗ってくれるのであれば、僕たちも革命軍側に寝返る」
……思ってもない話だった。国と癒着関係にあるred bloodがなぜこちらに乗るか、意味がわからない。
「どうして?って思うだろ。僕たちもこの国に忠誠心があるわけではない。ただ、従っておけば色々と便利だったんだよ」
「なら、その立場を継続すればいいんじゃないの?」
リエルがもっともな質問を返す。
「もちろん。ただ、その立場を捨てるほどのものがある」
…………
「俺たちってことか?」
玲人が一拍後に答えた。
「その通り。どうする?フラマ」
突然話を振られたフラマは、肩を跳ねさせた。
「断る。一択だ」
「君の話は聞いてない。決めるのは君だ、フラマ」
俺の返答はあっさりと切り捨てられ、フラマは詰め寄られる。
「フラマから離れろ!」
ノックスが再び発砲するが、力んだ手で撃った弾丸はリテネの頭上へと逸れた。
「ま……待って……流羽人達が欲しいってどういうこと?どうなるの?」
「彼らは僕たちからしたら、特定脅威……組織の他の国の支部を壊されてるからね」
フラマが振り返って、怯えた目で見返した。
「違……」
「彼らの身柄を渡すならば、この国を壊せる」
フラマの身体がゆらゆらと揺れ始め、空ろな目になる。
「壊……す」
「今、君の他の部隊はもう撤退を強いられている。今この国を壊すには乗るしかないよ」
「壊……せる?」
……フラマの様子が明らかに変だ……
「流羽人そいつを止めて!精神攻撃を受けてる!」
ノックスが再び背後から足に発砲するが、軽く足をあげて避けられる。
「流羽人達……ちょっと話を聞かせて」
「ダメだ……!話を聞くな!」
「ちなみに君たちの計画がミスした原因、裏切り者は彼らだよ」
「………えっ」
「「は?」」
「流羽人達……?あの時から……」
「違う……本当に俺たちは国とは繋がっていない!国とつるんでいた奴の言葉を信じるのか?」
「いや、彼らは最初から僕らとは別に国と繋がってたんだよ」
フラマの瞳の色が褪せていく。
「やっぱり……最初から……みんな敵……壊す……今すぐ壊す……この国を……」
体から色のついた覇気が出始めて、こちらにゆっくり歩いてくる。
「条件はただ一つ!彼らを捕えろ!」
フラマがスモークグレネードを部屋の中心に投げ込み、窓のほとんどない部屋は深い煙に覆われた。
「僕とリエル姉でフラマを止める!そっちはリテネを止めろ!」
「了解!」
煙の中、相手の位置を探ろうとした矢先、頭に小石がぶつけられた。
「俺だ!こっちには攻撃すんなよ」
危うく玲人の方に向けていたピストルの位置を変えて、目を瞑り相手の足音を探る。
……全く音がしない……?
ただ少しの勘だった。体を右に投げ出した瞬間、自分のいた場所に血の槍が飛んできた。
「そこか!」
その隙に玲人がピストルで、血の槍の根本を撃った。
「……another world」
弾丸が地面に落ちる音が数ピル遅れて響く。
「……俺の能力…………!?」
「おそらく分かってるだろうけど、僕の能力は他者の能力のコピー」
常軌を逸している……。
「君たち全員の能力はもうコピーした……例えば、nightmare flame!」
玲人がかがんで火の玉を避ける。
……どうやって勝てばいいんだ……この化け物に……
煙が少しずつ消え始めて、リテネとフラマ達の姿が見え始める……
「そっちはもう片付いたらしいね」
「あとは流羽人達だけだね」
「冗談きついぞ……」
2対1な上に、吸血鬼である2人に煙幕はほとんど効果がないはずだった。
しかし、フラマは傷一つ負わずにその場に立っていた。
そしてその足元には、急所の一つ、心臓を抉られたリエルとノックスが意識を失っていた。
happy birthday 流羽人&玲人!
主人公の流羽人と玲人が今日、1月4日(正確には1ソム4ツム)誕生日です。
ちなみに大陸では、ケーキを買う文化はほとんどなく、豪華な肉を買うことが多いです。




