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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第五部〜テサー王国革命編〜

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第56章〜想いの波〜

 本格的な戦いが始まったのは日が回った頃だった。


 今まで税を吸い上げられて蓄積された恨みが一気に爆発して、ファントム率いる部隊の女、子供、老人たちは境界門に向かう兵士たちと正面から戦っていた。

 女や老人たちでも士気は当然高く、数もはるかに多い。さらに、


「末代まで呪ってくれるわぁぁぁぁぁ!」

「私が死のうともあなたたちは必ず地獄に落ちる!後悔しろ自分の過ちを!」

 強い罵詈雑言を浴びて、兵士たちの攻撃の意思も弱まっていく。


 民衆の壁は波のようだった。胸が血に染まって前の同志が倒れても止まることはない。

 尖った鉄板、桑、斧、レンガ。それぞれの手に不揃いの武器を持って、兵士たちに向かって進軍していく。


 兵士たちが飲み込まれるのにそう時間はかからなかった。

 飲み込まれた兵士は何度も民衆に踏みつけられ、全く動かない。


「逃げろ!」

 1人の兵士が叫んだ瞬間、後方の兵士は一斉に逃げ出した。

 十数人の兵士はライフルやアサルトを捨て、我先にと逃げ出した。

 後ろからは鬼の形相で民衆達が追いかける。逃がすはずがない。


 路地に入り込んだ数人はすぐに見つかり、何十もの手によって引きずり出された。囲う人がいなくなった時、顔は原型を留めていなかった。

 残りの兵は、紅い血を流しながら蜂の巣になった。自分たちのものだった銃によって。


「止まれ!」

 ファントムが叫んで全員が足を止めた。


 中隊ほどの人数の兵士たちは、多数の犠牲を覚悟した革命軍によって一瞬で壊滅した。

「こちら第三境界門部隊。直属兵を撃破」

 無線を切った後、傷ひとつついていないファントムは俯きながら振り返った。

「撃たれた同志の埋葬を始めよう」

 始まる前から覚悟はできていたはずだった。それでも親しくしていた婆さんや幼い子が動かなくなっている姿は直視できなかった。


 戦地に散らばった死体を道の隅に並べていく。銃で撃たれただけで死体がバラバラになっているわけではないので、処理は簡単だった。

「革命が終わったらちゃんと埋葬するから。今はこれで許してくれ」

 第三境界門部隊の生き残りが、皆手を合わせた。


「……まだこれは始まりに過ぎない。進むぞ」

 全員が拳を掲げた。

 瞬間、老人達が胸を押さえて地面に倒れ出した。

「爺さん婆さん!?」

 そこから少し遅れて、女たちも体が痙攣し始め地面に倒れた。


 その場に立っていたのは、ファントムと数人の幼い子供達だけだった。


「有用そうなのは君たちだけだったか」

 通りの奥、兵士たちの死体が積み上がっている場所にいつの間にか1人の男が立っていた。





 一つの手榴弾の衝撃で、手榴弾が中に入ってきた。

 瞬時にリエルが反応して繭に包まれた。

「……これで3回目だぞ。もう狙ってるだろ」

 さっきから同じように手榴弾が室内に入ってくることが増えている。

 4人の魔力持ちならば突撃することも何度も考えたが、地の利。そして背後にいるRed bloodの存在が気がかりで籠城戦を強いられ続けている。


 再び手榴弾が入ってきたとともに、フラマが押さえていた板が何度も撃たれていた蓄積ダメージで砕き破られた。

「そっちを頼む!」

 再度手榴弾をノックスが囲み、俺は一瞬で通気口を新しい板で覆う。


「本当に限界が近いぞ!」

 玲人が手榴弾を投げる後隙を狙ってピストルを撃ったが、引っ込むスピードが異様に早く太刀打ちできない。

「あと少し、彼らが到着した瞬間ここを出る。それまでは耐えて!」





 バルト達第一境界門部隊は、直属兵を一度避け、背後から奇襲をする計画だった。

 しかし、すれ違うはずの路地でなぜか兵士と鉢合わせした。

「革命軍!武器を捨てろ!」

「構わん撃て!」

 銃の訓練をいくらしていたとしても、相手は本職兵士。反応速度で勝てるはずがない。

 狭い路地のおかげで3、4人しか発砲はできなかったが、撤退をするには十分すぎた。

 数でも負けている50人弱の第一境界門部隊は、スモークグレネードを貼った上で一度引くことになった。



「……全員、怪我はないか?」

 少し離れた路地に撤退して、状態を確認する。

「……腹に1発」

「こっちは腕だな……」

 先頭にいた数人の兵士が負傷していたものの、戦闘の続行が不可能なレベルではなかった。

「それよりも、なんであいつらに経路がばれてんだ?」

「……確かにそうだな。あんな道普通兵士達が通るはずがないだろ」

 予想外の事態に男たちは頭を悩ます。


「あの……」

「お、どうした?」

 まだ若い青年が弱々しい声で呼びかけた。


「こんなこと言いたくはないのですが……内通者がいる可能性もあるかもしれません」

 屈強な男が即座に立ち上がり、その青年の胸ぐらを掴んだ。

「ここにいる全員に対して、あの同志に対してそんなこと言えんのか?1人でも革命を本気で失敗させようと思っていた奴がいるとでも言いたいのか」

「言いたいことはわかるが、まぁ落ち着け」

 バルトがなだめ、青年の足が地面につく。


 数回咳こんで、荒い息をしながら再び全員に言う。

「そうではないと信じたい。でも、常に最悪の事態は考えていかないといけませんよ」

「そうか……まぁゼロとは断定できない。とりあえず今はそんなことはどうでもいい」

 バルトが立ち上がり通りに出る。


「予備の作戦で行くぞ」

連載を一定期間休まさせてもらいます。(詳しくは活動報告を観てください)

代わりに資料集か短編集を投稿しているので、そちらを見ていただければ嬉しいです。

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