第55章〜籠城〜
革命軍が王都に突入を開始した。
緊急事態の伝令を聞き、全ての境界門は効果を失っていた。
「みんな俺について来い!」
バルト率いる第一境界門は若い男性を集めた主力部隊。全員がアサルトを持ち城に向かっていく。
「賽は投げられた!みんな今こそこの国を壊す時だ!」
ルーメン率いる第二境界門は10人ほどの小隊で、全員が銃などの扱いに長けた精鋭部隊だ。
「……進み続けるぞ、この中の誰が死のうとも!」
そして、残りの女性、老人などを率いるファントムは第三境界門を潜り抜けた。
今や城内は半ばパニックに陥っていた。王が退避すべきか、侵入者はまだ城内にいるのか。そんな城に追い討ちをかけるように大量の兵士が戻ってきた。
「お前達、どうしてここにいる?国境門の警備はどうした!」
「緊急事態、侵入者、至急全兵王城に戻れ。と通信がきましたが」
「なぜだ、私はそんな命令は出していないはずだ!…………そうか!侵入者は通信室か!」
その言葉で数人の兵士が階段を駆け降りていく。
「つまり、我々は国境門に戻れば……」
「……いや待て。なぜ、侵入者は…………!おい!今すぐ戻れ!革命軍が王都に侵入している可能性がある!」
一斉に三つの部隊に分かれて、国境門へと素早く戻って行った。
「とうとう……来たのか……あいつは何をやっているんだ……」
一人残された参謀は歯軋りをしながら、窓の外を見た。
王都のやや人通りの少ない狭い道を通り、第二国境門へ向かう兵士が走っていく。
普段なら通ることのない薄汚い道だが、状況が状況なため文句を言っていられない。
革命が起こっている可能性があることを暗に告げられ、全員内心焦っていた。
そんな中、一人の兵士が頭から血を噴水のように噴き出した。
「はっ!?」
額をきれいに撃ち抜かれ一瞬のうちに事切れた。
「射線を探せ!」
「10ナル方向(後ろ)の民家の上です!」
そう叫んでいる間にも次の兵士が別の場所から撃たれた。
「総員!駆け抜けろ!」
地形の利を奪われ、迎撃は無理と判断した隊長の指示は、完全に手のひらの上だった。
何人もが正確な狙撃で撃たれる中彼らは路地を進んだが、そこで見た景色に絶望した。
大量につまれたゴミの上で大きく炎が上がっている。簡易型の焼夷弾で着火したバリケードが完全に道を塞いでいる。
「……引け!今すぐ引き返せ!誰が命を落とそうとも足を止めるな!生き残って状況を……」
「もうあんたらが生き残る道はない」
兵士たちの後ろにライフルを持った女、ルーメンが立っていた。
火に目を取られていた兵士が声に気づいた瞬間、兵士たちの足元で嫌な音が鳴った。
強い爆風と音で近くの兵士は原型を残さずに吹き飛び、狭い地形が悪さをして効果は倍以上だった。
そして、なんとか伏せて生き残った兵士たちに追い討ちをかけるかのように、簡易型焼夷弾が降り注いだ。
「こちら第二境界門部隊。境界門へ向かう兵士たちを撃破」
本部への連絡の後、屋根から狙撃していた手慣れ達がゾロゾロと降りてくる。
「次に打つのは王の額だ。行くぞ」
「完全にバレたみてぇだな……」
境界門への偽の指示をフラマが送ったことで、革命軍が王都に突入を成功させた。しかしそれは、俺たちがこの通信室にいることをバラしたのと同じこと。
「うん、想定よりかなり早い。直属兵たちの集団行動力はかなり異常だね」
「逃げないのか?そっちの方がいい気がするけど」
玲人がアサルトライフルの弾をリロードしつつ外を覗く。
「絶対にダメだね。地の利が向こうにあるからここからは出られない」
「でも、天井を壊されて突入されでもしたら一貫の終わりだぞ」
「それについては大丈夫。この城を壊すことはありえない。重要な遺産らしいからね」
壊した扉から少し顔を覗かせながら銃を構え続けるが、一向にやってくる気配はない。
何かにはめられたような気持ちになって、全く落ち着かない…………
『こちら第二境界門部隊。境界門へ向かう兵士たちを撃破』
「了解。王城へ突入せよ」
「一隊撃破したの?」
「ルーメン達が一つ壊滅させた」
「よかった。今のところは順ty……」
リエルが話終わる前に、弾丸がリエルの顔を貫通した。
「リエル!?」
「玲人、流羽人そこの通気口を塞いで!」
ノックスが指差した先に、わずか5cm×5cm程の小さな通気口があった。
こんなわずかな隙間から……?
「玲人兄さん、私は大丈夫!その前に入口も!」
仕組んだかのようにそのタイミングで扉の外から打ち込まれていた。
「くそ……何か塞ぐものは!」
……壊れた扉の残骸を通気口の前に置くが、すぐに撃たれて床に落ちる。
「私がそれを持っておく!流羽人は扉の方に!」
「分かった!」
扉の前はかなりの数の兵士がいた。
弾丸を多少受けても平気なノックスがヘイトを買うことで、玲人と俺で援護をして数を減らしていく。
しかし、2、3人撃った所で兵士全員が壁に隠れた。
「一度立て直しか?」
「いや、違う部屋に入って!」
ノックスの一言がなければ危険だった。
城を壊さない程度の旧式の手榴弾が複数投げ込まれていた。
旧式だからといって威力が弱いわけではない。人の殺傷には十分すぎる威力を持っている。
外を覗けず、一方的な防戦を強いられている……
何か反撃の一手を打たないと……
「ホスティル様、参上いたしました。×××××でございます」
王の部屋に黒服の男が訪れた。
「よく来た。緊急だから端的に言う。Red bloodの組織員をこの革命軍の対応を手伝ってくれ。貴様らの欲する臓器とやらは全部くれてやるし、兵士も自由に使って良い」
「……かしこまりました。Red bloodの目標にこれで達成できそうですし、全員を対応にあたらせましょう。加えて新型兵器もこちらが提供しましょう」
「あぁ感謝する」
「では、失礼致します」
部屋を出る寸前、男は誰にも聞こえないような声でつぶやいた。
「革命軍か……直属兵か……どちらも捨て難いな」
「何か言ったか?」
「いえ?何も言っておりませんが」




