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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第五部〜テサー王国革命編〜

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第54章〜王城潜入〜

「流羽人、起きて」

 玲人の声で目が覚めた。

 あたりは完全に暗いが、街の光はいまだに明るかった。


 王都の中に入った貨物は検査されることはなく、身を潜めているだけでいい。

 そのうち、交代で仮眠を取ろうという話になって今に至る。



「そろそろ時間だよ。王城に侵入する」

「正面突破するのか?」

「まさか。裏口から潜入する。だから拳銃とその能力とやらは目立つし音が出るから使えないよ」

 拳銃を装備しようとしていた玲人がナイフに持ち替える。


「私に着いてきて」

 王都の人通りの少ない道を進んでいき、王城の近くの大通りに出た。


「あそこが入り口なの?」

「国外のお偉いさんとかの入り口。私たちが潜入するのはあっち」


 正門からかなり東にある小さな門を指差した。

「あれは?」

「あっちは下働きなんかが出入りする通用門。警備も手薄だから5人がかりなら余裕。ただ、バレる前に行動を封じなきゃいけない」

「スモークグレネードは?」

「煙が出たら流石に正門にもバレると思う。だから警戒させないように近づいて一撃で倒すのが一番いい。それで一番警戒されにくいのが……」




「止まれ。王城内へ何の用事だ?」

 警戒したような聞きながらも、門番は武器を下ろしていててにかける素振りすら見せない。

「グラサルバード子爵様への遊女です」

 一人で門の奥に行ったリエルはかなり露出の際どい服を着て、猫撫で声で返事する。


「そうか。入れ」

 門番は簡単に彼女を通した。そしてその後ろ姿をこっそりと拝もうとした時、少女と目が合った。

「……!?」

 悲鳴を上げる隙すら与えられず、門番が血を流して倒れた。


「ナイスリエル!」

 俺たちも通用門の奥に行く。


「あ、みんな……」

 手に持ったナイフを何度もその死んだ門番に刺している。

 そのままこちらを見つめて微笑む。

「早く服返してくれない?フラマ」

「ごめんってリエル……これぐらいしか思い浮かばなかったんだよ」






「私たちの背格好じゃ下働きとは思われない。けど、一つだけ私たちの歳でもおかしくない職業があるの」

「何なの?」

「考えてみてよ」

 フラマは何か後ろめたさがあるように笑う。

「……もしかしてその真似をするのか?」

 何かを察した玲人が俯く。

「そうしかないの!」


「結局答えは何なんだ?」

「「遊女」」

 ………………………


「仕方ないじゃん!」

「……いや、問題は誰がそれをやるかって話なんだが」

「え、リエルしかいないじゃん」

 さも当然かのようにフラマが答える。


「いや、少なくともフラマでもいいじゃん!」

「私みたいな下町の娘が遊女にいると思うの?」

「下町かなんて分からないじゃん!」

「日焼け具合だよ。少なくとも遊女はこんなに焼けてはない」

 少し腑に落ちる。確かにリエルは吸血鬼の影響か肌が透き通るように白い。フラマはもちろん日焼けしている。


「……そうだ!流華ちゃんにやってもらえb……」

「リエル、黙れぇぇぇぇぇ!」

 黒歴史を掘り起こされそうになり、リエルの口を塞ぐ。

「流華ちゃん?」

 ノックスとフラマが首を傾げる。

「知らなくていい」

「流羽人兄さんの女装した時の名前」

 怪力で口に当てた手を外され、一瞬でバラされた。


「……聞かなかったことにしとく」

 数秒の沈黙の後、気まずそうに視線を逸らされた。


「……っい、いいからリエル行ってきて」

「はいはい分かったよ……」

 渋々とリエルが通用門に向かった。


「あ、リエルこれ着ないと。流石に門番もそれ程馬鹿じゃない」

「………っ……!?流石に嫌だよ!」

 しかし、男子が一斉に後ろを向いたまま、無理やり着替えさせられた。




 リエルが再び服を着替え終え、狭い入り口から王城内に入った。

 通用門の先とは言っても王城で、床にはラグが引かれ、照明も見たことのない程豪華なものだった。

 しかし、いつ兵士が現れるか分からない状況で周りのものに気にする余裕はなかった。


 そのまま兵士と鉢合わせになることはなく、しばらく歩くと2階への階段があった。

『上に行くよ』

 小声と手振りでフラマが示し階段を登っていく。


 前を登っていた玲人が突然足を止めた。

『どうかしたのか?』

『みんな一回止まって』


 足音が上から聞こえてきた。

『見回りがいる』

『下がるか?』

『いや、やるしかない』

 先頭のフラマが腰元のナイフを構えた。


 兵士が2階の階段に入った瞬間、伏せていたフラマがその足を引いた。


 兵士は突然の出来事でも咄嗟に受け身を取ろうとしたが、そこに地面はない。

 下で構えているリエルとノックスのナイフが兵士に深く突き刺さった。


 ただ、兵士は最期に最良の判断を行っていた。

「侵……入…………者」

 刺されたことを感じた瞬間、トランシーバーのスイッチをつけて声を捻り出した。


『ベーラ!どうした!侵入者か!……ベーラ応答せよ!ベーラ!』

 慌てて玲人がスイッチを落としたが、もう遅かった。


「こうなったら先手必勝!4階の通信室を制圧する!」

 フラマが階段を駆け上がり、1テンポ遅れて俺たちも追う。


「貴様ら!」

 3階から4階の踊り場で二人の兵士と鉢合わせするが、銃を取り出す前に二人は刺し殺され、トランシーバーも破壊されていた。


「こっち!」

 4階に上がると右側の通路を爆速で走っていく。


 そして突き当たりの部屋には、ご丁寧に豪華なプレートで「通信室」と書かれていた。

『この扉破れない?』

 聞き終わる前にはリエルが固い金属製の扉を蹴り壊していた。


 中の兵士たちが振り返るよりも早く、フラマが二人、俺と玲人が一人ずつ倒しきった。

「制圧完了……さぁここからだよ革命は」



 フラマは一つのマイクに向かって言った。

『緊急要請、緊急要請。王城に侵入者前境界門の国王直属兵は直ちに王城に帰還せよ』

次回は4日の土曜日12時です!

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