44章〜望まぬ訪問者〜
「こいつらは司令官ってことでいいのか?」
「うん。特にノックスはすごい実力だし」
「確かに。お前が負ける奴なんかそうそういないしな」
テーブルに座る男とフラマが話し合っている。
「話し中悪いが……休憩というか睡眠できる場所ってあるか?」
玲人が大きなあくびをかいた。
そういえば俺もリエルもしばらく寝ていなかった。
「そっちの部屋にあるよ。3ナル後ぐらいに起こして計画を話すから」
指さされたドアを開けると、そこには粗末な布が引かれているだけだった。
「……これが……寝床なのか……?」
わずかに布が分厚いのが救いだが、布はひどく汚れており、人が寝る場所とはとても思えない。
「そう?普通だと思うけど」
「それよりも眠い」
施設で牢屋のような場所に入っていたり、貧民街で過ごしていたリエルからすれば問題なく、玲人は睡魔に勝てずに倒れ込んだ。
「……ノックスは?」
「僕は気にするけど仕方ないかな」
ノックスは気にするとは言いつつも布の上に寝転んだ。
…………
顔をしかめながら俺は布に寝転がった。
硬いけど我慢できないほどのレベルでは無い。
すぐに眠れば気にならないと思い目を閉じるが、一つ気になる事を忘れていた。
「ノックス。そういえばあの少年は何だったんだ?」
砂嵐の中での戦いを思い出した。
「……リテネだと思う」
ノックスが寝転がったまま答えた。
……リテネ?
どこかで聞いたような……
「最後まで蒸気車に乗ってたっていう候補生だったっけ?」
「玲人……よく覚えてるね」
わずかに出てきた候補生の話も覚えている玲人に、ノックスは驚きの眼差しを向ける。
「つまり、かなり優秀な元孤児って事だな」
「うん。あいつは1期も2期も一位だね」
「「1位!?」」
ノックスですら4位という猛者の頂点……
「説明しておくとあいつは吸血鬼じゃない」
「血の槍を使ってたのに?」
「うん。あいつの能力は弱い風の能力。でも家系能力がある」
「家系能力?」
「兄さん達の家系に魔力が強いのと同じように、家系の固有魔力がある家庭があるんだよ」
俺の質問には代わりにリエルが答える。
「で、あいつの家系能力は『recreate』。発動条件や解除条件は知らないけど、人の能力を『コピー』する」
……なるほど……コピーね…………コピー!?
聞いた規格外の能力に自分の聞き間違いを疑う。
「コピーって……まさかな……」
「いや合ってるよ。あの時は僕かリエルの血の槍をコピーしたんだと思う」
「流石に強すぎないか……」
玲人も眠気が吹き飛んだらしく起き上がっている。
「もちろん制約はある……というか合って欲しい」
ノックスの言葉も半分願望で、完全にあるとは言い切らなかった。
もし、無条件で能力をコピーできる敵がいるとしたら……
考えただけで背筋が凍る。
今まで以上に厄介になりそうだ。
「……あと、あいつの声は偶然ノックスと似ているのか?」
「いや……それはあいつの特技。人の声を真似るのが得意なんだよな……」
加えられた情報にさらに絶望する。
「というか、Red bloodの奴がなんであそこにいたんだ?」
「それは分からない……僕もあいつがどこに行ったか知らないから」
……ノックスは肩をすくめ目を閉じた。
「僕は寝るよ。実際、今考えったって仕方ないでしょ」
言い切るとすぐに寝息を立て出した。
それもそうだと思い俺も布に寝転がった。
「流羽人!玲人!リエル!ノックス!起きて!」
耳元で叫ばれて、耳を押さえながら起き上がる。
「3ナル経っただけならもっと優しく起こしてくれよ……」
玲人も不満げに起き上がるが、リエルとノックスはまだ夢の中。
「違う!なぜか国王直属兵が大量にこっちに向かってきてるらしいの!」
……国王直属兵が……?
10人以上を相手に余裕で戦っていた彼女が焦っているのを見ると、本当にまずい状況らしい。
「……どうしたの……?」「…………?」
リエルとノックスが目を掻きながらゆっくりと起きる。
「もうそこまで兵士が来てるの!」
全員寝起きで頭がぼやけたまま中央のホールに連れて行かれた。
ホールのテーブルを先ほどの男とバーのマスター、それから銃を構えた若い女が囲んでいた。
「おぁ来たか大将。それから新入り」
男はこんな状況でもジョークを欠かさなかった。
「兵士達の動きはどう?」
「店の扉を破ろうとしてたな。壁も扉もかなり固いから少しで壊れることはないと思うが」
しゃがれた声のマスターが答えた。
「数は?」
「少なくとも100ってとこだ」
「1人で12、3人相手か……かなりきついね……」
連携力も高い国王直属兵を1人で大量に倒すのはかなり至難の業だ。
「フラマはいけるんじゃないの?」
リエルがついさっきの戦いのことを指摘する。
「いや、あれは急襲だったし煙幕を使えたからね……ここで煙幕を使うと全員に迷惑がかかる……」
フラマは弱々しく首を振った。
「いや、勝機はあるぞ」
今まで黙って会話を聞いていた女が言った。
「あぁ名乗り遅れたな。私はルーメン、この革命軍のサブリーダー的な立場だ」
俺たちの視線の意図を察して彼女は自己紹介をした。
「そんなことより!……勝機って何!」
「まぁ落ち着けって……この部屋に入れる場所はあの階段のみ。私たちは奴らが入ってきた瞬間あそこにランチャーをぶち込めば多少楽になるだろう。加えて階段に何個かトラップを仕掛ければ、1人で8人相手ぐらいになる」
1人で8人。かなり厳しい数ではあるがやるしかない……!
『お前達革命軍の本拠地であることは分かっている!3ベル以内に全ての武器を捨て投降せよ!さもなくば実力行使を行う!』
上の声が伝わるパイプから国王直属兵の言葉が聞こえる。
「迷ってる暇はない!すぐに準備するぞ!」
俺たちにも中型のアサルトライフルが渡されて手短に使い方を教わる。
その間に男女が階段にトラップを仕掛けた。
『最後だ!この警告で反応がなければ突入する!』
「全員武器を構えて!」
女がランチャーを階段に向け、残りの全員はアサルトの銃口を向ける。
1ツムの沈黙の後、国王直属兵が動き出した。
『突入!』
扉が何度も叩きつけられる音が響く。
多少は壊れないと言っていたが、何度も叩かれ続けてすぐに扉が破壊される音がした。
心臓が大きな音をたて、アサルトを持つ手が震える。
一斉に兵士が流れ込んでくる音が聞こえた。
『こっちに地下への階段があります!』
『全員注意しながら降りろ!』
階段を兵士たちが静かに降りてくる。
が、まさか平民がトラップを用意するとは思わなかったらしく階段で爆発音が響き、悲鳴が上がる。
ただ爆発は1回だけだった。2個目以降の爆弾は避けられついに兵士が階段を降り切ろうとした時、ランチャーが階段に向かって発砲されて多くの兵士が吹き飛ばされる。
しかし、その直後には大量の兵士が突入してきた。
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