43章〜歓迎会〜
「政府と犯罪組織が繋がりを持ってるのか……?」
政府からすれば治安が悪くなる対象は処罰するはずだ。
「これは毒じゃなくて睡眠薬。ただ、今のところ大陸では即時に効く睡眠薬なんて発明されていない。……いや、公になっていない」
「つまり、それを発明する技術があるのはRed bloodだけってこと?」
リエルが赤く濁った睡眠薬を観察する。
「でも、王国が密かに発明したという可能性も……」
「あなた達……さっきから何を言っているの。あなた達の旅の目的は何?その年で旅なんて何か特殊な事情があるの?」
ノックスを遮って少女が放ったその質問に全員が沈黙した。どう話せばいいのか分からないわけではない。
ただ、それぞれの目的の原点を思い出して気分が重くなる。
「私達は家族をある組織に殺されたの」
沈黙を破ったのはリエルだった。
「私たちはその犯罪組織を潰そうとしてる。もしこの国の政府が関わっているなら見逃すわけにもいかない」
「そうなのね……まぁ私も国王直属兵に両親を殺されたから気持ちは分かる」
フラマが同情するように呟く。
「ちなみに私達の本当の母親を殺したのはあなた達なんだけどね」
その同情の言葉にリエルは睨みで返した。
「私達が殺した……?国王直属兵以外を殺した覚えはないけど」
リエルの頭から角が生える。
「私とノックスは吸血鬼……あなた達は血族とも言うけど」
フラマは怖じけずに答えた。
「あぁあのことね。……あれは国に抵抗できるような脅威を排除するため。という名目で国王直属兵が勝手にやったのよ」
リエルとノックスはその言葉を聞いて固まった。
「本当に……?」
「本当だよ……ねぇみんな!」
少女が先ほどの人たちに呼びかけた。
「何リムか前の放火作戦って覚えてる?」
「……あぁ人権問題とかで問題が起きたやつな」
「あの時から政府はイカれてたよな」
後始末でその場に残っていた何人かがこちらに来ながら答えた。
「ほら。あれもこの国のせいなんだよ」
リエルは左手の拳を握りしめている。
「ごめん兄さん達。Red bloodが関わっているのかどうかなんて関係ない。私は革命軍に加わる」
「当然僕も」
二人は決意を固めて俺たちの判断を待っている。
「じゃあ、この二人は革命軍に加わるのね。そっちは?」
「玲人、Red bloodが関わっている確率はどれくらいだと思う?」
「俺はかなり黒いと思う。ノックスの話の中にもそう言う点があった」
ノックスの話の中に?
話を思い返してみるが特に思い浮かばない。
「入国審査が緩かったって話しただろ」
「それは賄賂とかじゃないの?」
「賄賂を普通カードで渡すか?」
確かに、お金を通信決済するカードは高価なため流通はまだそれほどしていない。
一兵士が持っている可能性は限りなく低い。
「一番不審だったのは。山を逃げるときに国王直属兵がRed bloodの名前を叫んでたでしょ。なぜか名前を知っている上に、言い方的にもかなり親密な関係だなと思った」
「……ここまで言っといて悪いけど玲人が決めてくれるか?」
俺は判断しかねて玲人に全てを丸投げすることにした。
玲人は静かに頷いた。
「俺たちも革命軍に加えてもらえるか?」
「もちろん。じゃあみんな、新しい仲間の歓迎会でもしようか。本部に連れて行くよ」
少女と数人の人々に連れられて、俺たちは狭い路地を何度も曲がっていった。
そうして、暗い路地の中の一つの店の前で立ち止まった。
フラマがベルの音を鳴らしながら店の扉を開けた。
「いらっしゃい」
白髪のサングラスをかけた男が俺たちを出迎えた。
「マスター。今、奥大丈夫?」
「あぁ空いてるよ」
のれんの奥に案内されると、そこは地下へ繋がる階段があった。
大きな地下室は薄暗く中にいた数人の顔はよく見えなかった。
部屋の壁には違法な武器などがかかっていてる。
「改めて、革命軍へようこそ!」
フラマが振り返ってこちらに手を差し出した。
「いつもそんなことしないだろ」
後ろの男に突っ込まれた。
「別にいいじゃん!有用株の人が入った時ぐらい」
出鼻をくじかれて不服そうにフラマが振り返った。
どこに連れて行かれるのやらと緊張していたが、アットホームな雰囲気に少しだけ安心する。
「話を戻すと私はフラマ。この革命軍のリーダー」
……リーダー!?この少女が?
「まぁ私の両親が革命軍のリーダーだったらしいんだよね……知らなかったんだけど」
「で、俺たちの歓迎会ってのは?」
「あぁ『歓迎会』は隠語だよ。新しい同志の実力を測るってのが正しいとこかな」
フラマはニヤリと笑い、俺たちに訓練用の木のナイフを渡してきた。
俺と玲人とリエルが地面に倒れ込む。
この子……強すぎる……
初手に光の速度で攻撃をして瞬間、カウンターで腹パンされて出オチした。
玲人も同じように倒され、リエルは少し粘ったが、最後に素早い一撃を喰らって倒れた。
「まぁ司令官ぐらいかな?」
フラマは全く疲れた様子はなく平然と立っている。
「最後は……ノックスさん……だっけ?」
「ノックスでいい」
ぶっきらぼうにノックスが返して、二人の戦いが始まった。
身長差は10cm以上。リーチ差もかなり大きい。
お互いが様子を見ながら少しずつ間合いを縮める。
3歩ほど前に出た瞬間、フラマが仕掛けた。
背の低さを逆に生かして、下から潜り込むように攻撃しようとする。
しかし素早いその攻撃をノックスは見切って腕を掴むが、フラマはすぐに振り払い再び攻撃に出る。
次の顔への攻撃も軽く避けるが早すぎて反撃ができない。
フラマはさらに素早く腹への攻撃。と見せかけて直前にナイフの軌道を変えて顔に向け、勝負を決めに行った。
フラマの手からナイフがこぼれ落ちていた。
「嘘……」
ノックスは一瞬で対応してフラマの腕を捻っていた。
「なんで対応できたの……?」
フラマはいまだに自分の攻撃が受けられたことを信じられないらしい。
「見切った」
ノックスは不可能なことを平然と言ってのける。
「見切ったとしても……対応は……」
「あぁ……何となく読んでた。あんだけ強いのに攻撃が単調だったから、途中で変速すると思ってた」
「……完敗だね」
「いや、もし2発目から変速してたら全然負けてた。その年で誰が教わったんだ?」
ノックスが木のナイフを膝をついているフラマに返した。
「私、少し前に人質にされたことあるの。その時に変だけど、その犯人の人がナイフの使い方を教えてくれたの。その人が私が身を守れるようにって」
少女は少しうつむきながら話しだす。
リエルが「それって……」と言おうとしたが、ノックスに静かに口を塞がれた。
「それから練習してたらいつの間にかこうなった感じ。で、その人も吸血鬼だったのは覚えてるんだけど、なぜかそれ以外は思い出せなくて」
「そうか……その吸血鬼については詳しくは知らないけど、すぐに僕よりは強くなれるよ」
ノックスはなぜかごまかしながら、俺たちが立ち上がるのを手伝った。




