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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第四部〜テサー王国下町編〜

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37章〜テサー王国の戦い〜

 リエルを先頭にして、落ち葉を踏み分け山を登っていく。


「こっちだったかな……」

 リエルが知っているという吸血鬼の村への裏道を通っているらしい。

 確かに、簡単に人が通りそうになく、進みにくい。


 1ナルほど歩くと、少し開けた場所に出た。

 そこには木の柵とボロボロの看板があり、中央に大きな岩がある。


「ここだ…これ…吸血鬼が成人する時に乗って儀式をする岩だってお母さんが言ってた」

 その岩に歩いて行き、リエルが手を触れた。


「兄さん…」

「どうかしたのか?」

「…いや、兄さんたちじゃなくて…本当に兄さんがいた気がしてきて……」

「…リエルの兄…?」

「村が燃えた時にはもういなかったと思うけど、…この岩の上で私の兄さんが儀式してた気がする…」

「どれくらい年上だったとかは覚えてるか?」

 全く覚えてない、とリエルは首を振った。


 遅れ玲人が登ってきて倒れ込む。

「ここ、戦闘になったら終わりだからな…」

「十分にあり得るn…」


 玲人が一瞬で起き上がり俺を突き飛ばす。

 俺がいた場所には、血の槍が突き刺さっていた。

「リエル!?」

「私じゃない!」

 リエルが血の槍で木の上を攻撃した。


 木の上から男が飛び降りてきて、着地と同時にリエルに血が襲いかかる。

「同族か…まぁ血は薄いようだな」

 苦しげな表情で、男の血の槍を自分の血で正面から受けているが、若干押されている。


「Another world!」

 電気を打ちながら突撃して、鉄の棒で体への直接攻撃を狙い、左側から玲人が吸血鬼の弱点である炎を打つ。


 しかし、電気も炎も軽く避けられた、と思った直後には俺と玲人の足に深々と血の槍が突き刺さっていた。

「お前らはいい魔石が抽出できそうだしな…」

 薄く笑いを浮かべて、次はリエルの体に2本の槍が襲いかかった。


 持ち前の反射神経で避けようとしたが、血の槍が体を動きにくくしていたせいで、両側から体に槍が刺さり、力が抜けて背後に倒れる彼女の腹に、全ての血の槍が刺さった。


 リエルの体が腹に刺さった大量の槍を支点として宙に浮く。

「お前は…そうだな…あっちに連れていくか」

 目に生気が宿っていないリエルをそのままの状態で、男はどこかに連れて行こうとする。


「待て!」

 鉄の棒を杖がわりにして立ち上がり、男の進もうとした立ち塞がる。

「お前、死にたいのか?」

 血の槍が数本、リエルから抜けて俺の方に向く。

「死ぬ気もねぇよ!」


 弾丸を1発男に打ち込む。同時に無理やり電気で体をうごかして攻撃する。


 その瞬間、リエルの体が大きく動いた。

 男は…その弾丸の弾を…リエルを盾にして防いだ。

 俺の撃った弾でリエルの顎が砕けた。


 その光景に思わず足が止まった。

 止まった俺の腹にも槍がつき刺さる。


 苦しげな声を上げながらなんとか血の槍を体から引き抜くが、体がもたず仰向けに倒れ込む。


「さぁ、あとはお前だけだ」

 疲労と足の怪我でほとんど動けない玲人が、対峙している。

「お前が俺と戦って勝てるとでも思っているのか?」

 無言で玲人は男を睨み続ける。


 話すのも無駄だと思ったのか、男は血の槍で玲人を攻撃した。

 玲人はそれをギリギリで避ける。

 そして、地面に両手をつけた。


「Nightmare flame」


 一気に地面の草が大きく炎をあげて広がっていく。

「…お前!何をしているんだ!こいつを離すぞ」

「あぁいいさ。そいつはお前の言うように血が薄いからな」

「そっちの男はどうする気だ!」

 俺を指差しながら男が叫ぶ。


「…まぁ耐えてくれ」

「馬鹿かお前…」

 叫ぶ気力もなく、炎から逃れようと立ち上がる。


 男はリエルの体を炎の中に投げ込み、逃げようとした。

「着弾爆炎」

 玲人の炎が次々と近くの木に当たって爆散して、男の逃げ道を封じていく。


 逃げ道がなくなり、男の体に少しの火の粉が当たった。

 うめき声を上げながら男が倒れた。

 そこに玲人が火をつけたことで脆くなった巨木が倒れ掛かり、男の声が消えた。


 玲人がリエルを背負い、火の中を走っていく。

「流羽人こっちに走ってこい!」

 走っていた方向に、俺もなんとか電気を使って向かった。




 山が大火事を起こしていた。

「リエル!リエル!」

 玲人が何度も体をさするが、全く返事する気配もなく、体が修復されていない。

 何度も傷を負って、血不足になったところで火に投げ込まれていたからだろうか…


 玲人が自分の肩をナイフで切った。

「…!何してるんだ!」

「血を飲ませるにはこうするしかないだろ!」

 リエルの牙を自分の肩に差し込んだ。


 玲人が苦悶の表情を浮かべる。

「…玲人…!自分も危険な状態だって分かってるのか!」


「…飲んでる」

 確かにリエルの体の傷が少し治っている。


「…分かった」

 リエルの腹の部分に布を強く巻きつけて止血して、少しでも血の量が減らないようにする。

 同時に玲人の体も止血する。


 顎の骨や、火傷の跡が少しずつ消えていく。

 そして、リエルがゆっくりと目を開けた。


「リエル!」

 再び倒れて、玲人の肩に深く牙がつき刺さりそうになるのを、なんとか体を支えて防ぐ。


 リエルの腹の傷は完全に消えて、ほとんど不自由なく動けるようになっていた。

 ただ、俺と玲人は違った。


 足に深刻な傷を負って出血も酷い。

「兄さんたち…」

 また玲人の血を大量に消費したことに、負い目を感じているのか玲人に肩を貸す声は少し低かった。


「玲人…どうする……?」

 少し先に、リエルが暮らしていた村だった場所があった。

 そこに村の影はなく、この場所に合わない大きな建物が立っていた。

 新しく、不気味で、以前訪れた二つの施設と同じ雰囲気のする。


「…ここまで来て逃げるのか?山火事で国王直属兵が来るはずだ」

 先ほど玲人が燃やした地帯は、草の少ないこちらには大きく燃え広がらなかったものの、山の斜面が野枝広がっていっている。

「俺は戦う」

 短くそう言い切り、足に布を強く巻いて立ち上がった。


 ゆっくりとその大きな建物に向かって歩いていく。


 施設が全体的に見えるようになったところで、リエルが血の槍を放った。


 目に見えない速度で突っ込んできたフードを被った女が体を引いた。

 その直後にナイフを俺たち三人に投げつけて、同時に高く跳躍した。


 俺と玲人は軽く避けて、リエルは自分のナイフで弾いて上からの攻撃に備えた。

 リエルが後ろに避けると同時にその場所に、深く両手剣が突き刺さった。


 その着地の反動でフードがめくれて顔がはっきりと見えた。



「…お母さん………」

 ぽつりとリエルが呟いた。

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