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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第四部〜テサー王国下町編〜

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32章〜残された想い:memorandum〜

「入国審査官だ。荷物を全て確認する」

 大柄な男が二人俺たちの部屋に回ってきた。

 テサー王国は、王政の国の中で極めて自由度が低く、かなり入国検査が厳しい。


 二人は俺たちの出した荷物を一通り確認し終わった後、全て元に戻し3丁の拳銃だけをその場に残した。


「この三点は、法律上の銃器とみなし没収する」

「わかりました」

 俺が女装していると声でバレないように、玲人が代わりに答えた。


「では、軽い捜索を行うので部屋の外に出なさい」


 二人は部屋に隠された武器がないかを確認するために、俺たちを外に出した。

 ……もちろん武器は大量にある。


 玲人の毒薬、睡眠薬などのさまざまな形状のこの王国で違法な薬。リエルが主に使う戦闘用ナイフと投擲ナイフ。全員が持っているメインの拳銃。


 これらを没収されると、魔力が効かない相手に対して戦えず絶望的な状況となる。

 だから……なんとかこの4ツム間の間に考えた細工が……通じるといいが……


 俺たちは緊張したままドアの前で待っていた。


「君達に、特に不審なものはなかったので入国を認める」


 ……見破られなかったようだ…!

 3枚の入国許可証を渡されて、彼らは次の部屋へと向かった。



 1ナル程で全員の審査が終わって、国に入った。

 しかし、出発時に入国調査機関から何人かの悲鳴が聞こえて来ていた。おそらく、武器を隠し持っていたスパイか何かだろう。


「「「危なかった……」」」

 リエルは、トイレの手洗いの下の水を溜める部分から防水袋に入ったナイフを取り出し、玲人は部屋の歯車式の電灯の改造部を破壊して、中から袋に入った白い粉末を取り出す。


 その2箇所にあった武器もなんとか隠しきれていた。

 俺たちの拳銃は俺とリエルのスカートの中の太もものホルスターに隠して、液体薬は水筒の中身に隠していて、これは通ると予測していたが、後の二つは微妙だった。


 しかし、俺たちが最初に銃を抵抗なく出したおかげか、ほとんどの場所を探さずざっと確認するだけで済んだようだ。


『まもなく、テサー王国中央駅に停車します。お降りのお客様は、下車準備をお願いいたします』




 入国許可証を見せて問題なく入国すると、専用の出口に通された。


 駅の出口を出るとすぐそこには金の像が立っており、朝日に照らされ輝いている。

 そして、発展した綺麗な街並みが並んでいて、商店が賑わっている。


「すごい…綺麗な街だね」

 リエルは感心したように頷きながら街を回っていた。それは俺たちも同意見で、確かにここまで巡った4つの国で最も都心部が発展していると言えるだろう。


 ……ただ、やはりと言うべきか雰囲気がおかしかった


 商店の人は話しかけたら陽気に話してくれるのに、農村から来たような身なりの、おそらく買い出しをしに来ただろう人々は、ほとんど無視されていた。

 また、その顔はひどく疲れ切っており、常に何かに怯えているようだ。


 この国は、王に絶対的な権力のある絶対王政の国家。王に逆らうことはもちろん、さまざまな法律に違反すれば簡単に処刑される。そして、国外へ出ることは許されない。

 いわば、監獄に近しい。


 街を一通り周り終えると、旅行客の指定ホテル(国が旅行客が泊まるホテルを指示する)に向かいチェックインを行った。


 通された部屋は、3つのベッドとキッチン、お風呂までついたマンションの一室とほぼ同等の機能性のある部屋だった。


「確かに…ここならしばらくは滞在して生活できるな」

「…とりあえず、流羽人は無闇に血を残さないこと」

 ここに急いで来る原因を再び指摘される。

「わかってるって」

 半分不貞腐れながら、ベッドに自分の荷物を置き寝転がる。

 うん。悪くない。

 程よい硬さだった。


「とりあえずだけど、5ツムぐらいは休養兼情報収集でいいか?」

「…そんなゆっくりしてる暇はあるの?」

「…リエルは確かに問題なさそうだな」

 玲人が左腕の袖を捲った。


 俺と玲人は当然体は完治しておらず、正直に言うと病院に行きたいレベルだった。

 しかし、この国は国外旅行者に医療は行わないと言われているので、自然治癒を待つしかなかった。


 そう、そのための5ツムだった……はずだった……

「とりゃ!」

「なんの!」

 リエルと玲人が、前にラモングで買ったプラスチックの練習用ナイフで、室内で戦闘を行っている。

 室外で見られると、実力的に武器の所持を疑われるためだ。

玲人は、傷がすぐに回復していた。


 ただ、問題があるとすれば………

 顔の真正面にナイフが飛んで来て慌てて避けた。

 いくらプラスチック製のナイフとはいえ、リエルなどの力がある人が投げれば十分凶器になり得る。実際、その避けたナイフは壁に軽く突き刺さった。


「だから!こっちに向けて投げんなつってんだろ!」

「ごめんって…玲人兄さんが素早いから投擲ナイフ必須なんだよ」

 そう言って再び戦闘が再開する。


 しかし、先ほどから勢いは段々とエスカレートしていっており、ナイフが壁に刺さる音が聞こえる。


 最後に風を切る音がするほどのすごい速度でものを投げる音が聞こえる。

 そして、その直後にすごい音で何かが破壊された音が聞こえた。


「…何してんだよ……」

 振り返ると、リエルの投げたナイフが大きな物置の奥の板を突き破っていた。


「……これって弁償……?」

「…かもな……」

 流石に玲人とリエルも反省したのか、声が少し沈んでいる。


 玲人はその棚に近づき、壊れ具合を確認した。


「……ん?……なんだこれ…?」

 玲人がその棚の奥の板の奥から、少し古いメモ用紙を取り出した。

「…二重になってる………」


 なんと奥の板はダミーで、その奥に薄い空間があった。


「……革命」

 メモの上部にタイトルの書かれたメモを読み出した。


 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜



 第1回革命…パレード中に奇襲を試みる。失敗。俺を除く十二人が全員処刑された。

 第2回革命…秘密裏に組織を結成「××××」。精鋭で突撃するも失敗する。国に協力している奴らがいた。高性能な武器で全員が突然倒れて、連行されていった。

 もう時間はない。もう時期この部屋にも人が来る。あいつらに伝えてくれ。


 この国の軍と司法部は思ったほど馬鹿ではない。



 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


 焦って書いてることが伝わってくる、殴り書きで書かれていてかなり読みづらく、一部が塗りつぶされている。


 読み終わり一息つく。

 今回の俺たちとは全く関係のない話だが、この筆者がしようとしていたことが分かり、処刑されたと思うと、少しやるせない。


 ただ、二人はそこまで気に留めなかったらしく、証拠隠滅のために手前の壁を完全に剥がした。

 その音が、何か悲鳴を上げるような…この筆者の残した想いが全て消えていくような感じがして、それを誤魔化すために、俺は風呂に向かった。


ただ、俺も

「この国の軍と司法部は思ったほど馬鹿ではない」という意図のわからない文のことはすっかり忘れていた。

次回は11日金曜日の予定です。X(@riitotakase)で、小説の設定などを公開していこうと思っています。ぜひ、いいねとフォローをよろしくお願い致します!

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