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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第四部〜テサー王国下町編〜

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31章〜拾った少女は:gamblers〜

 列車はロビンズギルドを北上していき、マラドバー連邦を走行していた。

 極寒の地域である山脈では、雪が降り始めてデッキ内にもちらほらと入ってきていた。



「雪は………初めて…じゃないな……」

 俺は窓から視線を戻し、情報電波(ラジオ)から流れるニュースを聞き流しつつ思い返した。


 大陸の中央西部に位置するシュープリーに基本的に雪は降らないが、山の山頂などでは見られることがある。

 両親がいた頃には、よくキャンプに行っていたからそのうちのどこかで雪を見たことがったのかもしれない。


 今後………の生活のことは考えられる状況ではないが、見る機会はしばらくないと思うから、俺は外の景色をじっと見つめていた。



「チェックメイト!」

「うわー!また負けたー……」

 しかし、リエルと玲人は窓の外など全く気にせずにチェスをやっている。


『若人、碧星へきせい(ブルースターのこと)見ずに肉を食う』

 という言い伝えがあるがどこかの国にあるが、完全にこの状況だ……


「ねぇ!流羽人兄さん!玲人兄さんがずっと本気出すから勝てないんだけど!」

 リエルは10連敗中らしく、ロビンズギルドで購入したお菓子が玲人の前に積み上げられている。

「…あいつは本当に強いから、初めて1ツムのリエルじゃ勝てないよ」

「……うぅ…。………!なら、流羽人兄さんもやろーよ!」

 リエルは完全に「流羽人兄さんなら間違いなく勝てる」とでも言わんばかりの顔をしている。


 俺も、一応チェスの経験はあるし、シュラールの定期戦ではそこそこの成績だった。

 たまには兄らしいところも見せないとな……!


「いいぜ…その勝負乗った!」


 俺は対面机を玲人と代わり、駒を並べて初手を打った。





「チェックメイト!」

 結果はというと、惨敗だった。


「…俺が…負けた……初めて1ツムの初心者に………」

 …リエルが美味しそうに、俺の買ったクッキーを食べている。

 ただ、そんなことはどうでもいい。経験者の俺が…初心者のリエルにかなりの短時間で敗北した…………

 それがかなり精神的なダメージを与えていた。

「兄さん!もう一試合しよ!」

「やらねぇよ!」

 そのままベッドに辿り着き倒れ込んだ。


 列車の旅はまだ続く。







 〜5ツム目〜

 列車は、東西(ラモンズロビン)に長いマラドバーをラモンへと向かっていき、街の中を通る時間も増えていった。


「…チェス飽きた………」「暇すぎるよ………」

 玲人とリエルがベッドに倒れ込んでいる。


 5ツム目になり、俺含め全員が退屈になってくる。


「カジノも未成年だからできないしな………」


 部屋が一瞬静かになった直後に、玲人がベットから起き上がった。

「未成年でもできる!」

「…何言ってんの?」「玲人兄さん、多分暇で頭おかしくなったんだと思う」

 しかし、俺たちの言葉を聞かずに玲人はお金の準備を始める。

「…だから…」

「ここは、マラドバーだよ」

 玲人は紙幣を数えながら答えた。


 ……!そういうことか!

「どういうこと?」

 当然だが、リエルは分かっていない。

「マラドバーは、かなり自由度が高い国で未成年もカジノができるんだよ!」

 進行中の列車はその通行中の法律に従う。つまり、マラドバーを通る今なら俺たちでもカジノができる…!





 本場のカジノ場ではないとはいえ高級列車のカジノ場なので、2両分使われていて造りは豪華で、年季の入ったカジノ場の雰囲気が感じられる。

 しかし、カジノ場は昼間ということもあり人はやや少なかった。


「じゃあ1ナル後、一番増やせてた奴が利益総取りにしようよ」

 玲人の提案に俺たちは乗って、全員が2Arを持ってそれぞれのカジノへと向かった。


 スロット台は大量に壁に沿って設置されており、お酒を飲みながら一喜一憂している。


 2両目に進むと、ルーレットやトランプなどの本格的なカジノが用意されていた。


 …ひとまずルーレットでもやってみるか。

 俺もルールをよく知らないので、一応見たことのあるルーレットに行く。


「お兄さん、ルーレットは初めてかい?」

 ディーラーの一人が俺の不慣れな様子を見て話しかけてきた。

「えぇ。ルールを説明してもらっても?」

「もちろん。簡単にいえば、俺たちがかけた後にボールを一つ転がす。それを予想するという単純明快のカジノがこれだ」

 ディーラーがポケットから白いボールを取り出した。

「で、数は0、00、1〜36の38個。賭け方は、一つの数にしてもいいし、赤、黒。もしくは、奇数、偶数でかけてもいい。他にも1〜12、3、6、9…のように3分の1の賭け方なんかもあってそれぞれの倍率がある。まぁ気楽に賭けていきな」


 ……普通に最初は安定の2分の1でいいかな…?


「プレイスユアベット(賭けてください)」


 指定されていたシートの赤色のマスに10Aチップを置く。

 他の客も同じく黒や奇数に置き、ある人はそのチップを両手の手の平で擦り合わせて「00」に置いた。


「スピニングアップ(ボールを転がし入れること)」

 先ほどのディーラーが、ルーレットにボールを転がし入れた。


 ボールはルーレットの周りを静かに転がり、「13」に入った。

 ……黒色だ……。


 あの00に賭けた男が崩れ落ちる。

 身なりを見るに、生死に関わるようなレベルではないものの、最後にかけたのが10Arチップだったことから、判断能力が最悪になるまで負け続けたのだろう。


 男はトボトボとルーレット場を後にした。



 俺はその後も、2分の1や3分の1に賭け続け、1ナルが経とうとする頃には初期+1Ar800Aほどになったいた。

 次が時間的に最後か…


 俺は、最後は少し多く賭けようと800A分のチップを取り出した。

 …しかし、その時に1ゲーム前に1点10Ar賭けに成功した男の、満面の笑みが浮かんだ。


 ………かなりまずい思考に陥ったことには気づいた。だがそれだけだった。

 800Aに加えて1Arチップを2枚。合計2Ar800Aを取り出して、自分の生まれたツムの数、「4」に1Ar80Aを置く。


「くそ!もうどうにでもなれ!」

 隣の女が、「0」に…20Ar!?


 それを見て最初の10Arをもらった男が脳によぎり、自分のしたことの重大さに気づきチップを回収しようとした。


「スピニングアップ」


 だが遅かった。ボールが入るともう変更はできない。

 ボールはルーレット場に円を描いて、「9」に入る。


 …………2Arと800Aが回収されていく。






 部屋に半ば放心状態で戻ると、同じように放心状態の玲人と意気揚々と鼻歌を歌いながら車内販売のパフェを食べるリエルがいた。


「…玲人…お前もか…」

「……」

「…何に使ったんだ?」

「…ぜってぇおかしいだろぉぉぉぉ!」

 半狂乱の玲人の言葉を聞き取った限り、玲人はスロットで最初一回大きな当たりを引いてのめり込んでいると、気づけば所持金が0だったらしい。


 ……俺以上に酷い…

「そんな流羽人兄さんはどうなの?」

「…1Ar」

「…あ…想像の倍、マシだった」

「俺のことなんだと思ってんだよ…」

「双子の弟あれだよ」

 リエルが玲人を指す。


 ……自分もラストで3Ar弱消してるから反論できねぇ……


「…で、リエルは?」

「あ、ポーカー出禁になった」

 …「出禁」?耳を疑った。


「いや、問題行動を起こしたとかじゃなくて、なんか連勝しまくってたらディーラーのおじさんに10Arチップを渡されて、静かに『帰ってくれ』って言われた」

「…リエル…経験あるのか?」

「ん?もちろんない」

 ………拾った少女が、超ハイスペックだった…


 とりあえず心に決めた。

「カジノには二度と手を出さない。少なくとも俺と玲人は」







 〜9ツム目〜


『間も無く、入国調査機関に停車します。お客様方は全ての荷物をまとめて下さい』


 夜19ナル。このアナウンスで俺たちは目を覚ました。


 最初の関所である「入国調査機関」

 俺たちは調査員の調査のために荷物の用意を始める。



 高い塀が近づいてきてその一部の入り口が開き、銃を構えた軍人らが待ち構えている。

 列車は減速して入国調査機関に停まった。

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