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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第三部〜ロビンズギルド編〜

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幕間〜イデアより〜

時系列は、幕間 Ⅰ から第28章までです。

「アニムスを持つ限り、人は完全には死なない」


 あの神は私にそう告げた。


「私は、必ず……生き返る」

 死ぬ前の私だったら、そんな夢は、我儘が通るような世界ではないのはわかってる。

 それでも…少しでも私は生きている。

 絶対にお兄ちゃん達に…感謝を伝える。玲人お兄ちゃんともう一度会う。




 お兄ちゃんが帰った後のイデアは、音も時間もない、「無」に戻っていた…はずだった


「無」のはずの空間に…何か緑色の物体があった。


「何…これ」

 近づいてみると、イデアを満たす水のような透明な液体の底から、何かの芽が生えていた。


「…芽……何の植物…?」


 芽は、小さな緑色で生えていた。

 …ここは、「無」の空間のはずなのに……なぜ……


 ……わからなかった。でも、何もない空間で暇を潰していた私の暇を紛らわした。






 芽は、何も変化することはなく…時間が過ぎていった。

「…!」

 遠くで何かの楽器のハーモニーが響いた。

「……あぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」

 女の子の叫び声が聞こえた。


 そちらに向かうと、イデアで狂ったように叫ぶ少女が、前のめりで四つん這いになっている。

「どうしたんですか?お姉さん」

「……ひっ」

 少女が起き上がり、体を引いて怯える。

「……あなたは…?……ここはどこ……?」

「私は、ここのイデアの番人です。ここは、私のイデアですよ」

「イデアの番人…イデア…」

「生と死の境目の空間。それがこのイデアですよ」

「……どういう事……私は…死んでいるの…?」

 少女の目から少しずつ活気が消えていく。


「…大丈夫。あなたは死んでいない」

「…えっ……?」

「あなたは……強い意志アニムスを持っていた」

「アニムス?」

「えぇ。だから、死ななかったんですよ。あなたには二つの選択を与えます」


 私は能力を使い、この子のアニムスを『透視』する。

 …この少女の思いは……「王を殺すこと」……!?

 そんな大きな野望を持った少女は、能力を使って目が緑色に僅かに光っている私を、恐ろしそうに見つめて僅かに震えている。


 こんな少女が………

 王政が残っている国は…かなり少なかっはたずだし…その全てが絶対的な権限が王にある。そんな王を殺すことなど不可能に等しく、殺しても待っているのは処刑台のみである。



「二つの中から…あなたの好きな道を選んでください。一つは、あなたの死ぬ寸前に戻る」

 ……この少女は近衛兵に追われた末に射殺された。もし、戻ったら…弾丸を避けれたとしても…逃げ切れる可能性は低い。


「もう一つは、あなたの平和な生活。あなたの両親が死ぬ前にあなたの時を戻します」

「…父さんと母さんが……戻るの?」

 ……彼女の両親は…国家反逆罪で処刑されている。

「記憶も消えて、あなたの両親が死なない未来を取り戻せます」


 少女は固まった。

 

 しかし、一瞬でそれは終わり、彼女は首を振った。

「違うよね。お父さん、お母さん」

 涙を拭って彼女は立ち上がった。


「私をあの撃たれた瞬間に戻してください」


 ……

 こんなに迷わずに…………

 彼女はアニムスを選んだ。


「…分かりました」


「……汝にその意志の強さをもって、生を与える」

 

 彼女は少しづつ透明になっていく。

「ありがとうございます…女神…?えっと…イデアの番人さんだっけ」

「えぇ、頑張ってくださいね」


 彼女が腰元の銃に手をかけた。


 …!

 彼女の雰囲気が一瞬にして変わった…瞬間に彼女はイデアから戻ってしまっていた。


 …すごい意志だったな……私も頑張らないと…

 お兄ちゃん達に会うために…


 ゆっくりと来た道を引き返していた。

 なぜか毎回戻るべき方向は分かっていた。こちらに来るときに何度か進む方向を変えたとしても、だ。

 そのイデアの中心部とも呼べるのかもしれない。



「あれ……?」

 戻ると芽が明らかに大きくなっていた。

 5cm程だったはずの芽が、2倍くらいの高さになっている。


 ……時間による成長ではない。私があの事話す前は、少しも成長していなかったと思う。

 だったら、関係があるのはあの子という可能性が高い…のかな?


 芽が関係したのは、流羽人兄さんとあの子だけ。


 …意志を選んだ人がいるたびに成長する?…いや……確か流羽人兄さんの前にも一人、長身のお兄さんが理想イデアリスに打ち勝っていた。けど、その時には何も起こらなかった。


 もしかして……私に要因がある?


 だとしたら、変化は一つしかない。


「私のアニムス…?」


 私のアニムスをこの芽が表している………?

 それが正しいなら…私が生き返る方法は………この芽を成長させること………?

 私に今できそうなことはそれだけだった。




 それから、長い間芽を見ていたが何も変化はなかった。

 私が、「生き返りたい」「兄さん達に会いたい」としゃがみ込んで話したりしてみても、当然反応はない。







 …あ、……まただ…

 今度は、鐘の音が聞こえてきた。



 そこにいた銀髪の男性は何者かに襲われていたらしく、「熱い…熱い!」と叫んでいて、精神が半分壊れていて、あの少女と違い、話しかけても反応しない。

 このような人物が稀に来ることがあるが、迷わずに『死者の国(モートゥース・テッラ)|』に送れと言われている。


「我、汝を死者の道に送る」


 暴れる彼に向けて魔法を放ったが、彼は直前に気が付きそれを避けた。

 しかし、地面に着弾した衝撃が当たり、彼は消滅していく。


 それに抵抗するように暴れ回ったが、それが無駄だと彼は気づいたらしく、イデアに仰向けに寝転がり目を閉じた。

 彼は完全に消える寸前、彼は薄く微笑んでいた。


 満足したような、絶望したような、さまざまな思いが入り混じったような表情をしていた。

 その顔は、頭の中に深く刻みついた………


 ……「生きたい」…これがこの人のアニムスだった。

 組織に幼い頃に捕まって、余儀なく組織員にされて、死ぬ間際に命乞いをして情報を吐こうとしたら……


 今まで、他人のものとして見てきたアニムスが………どこか他人のものとは思えなくなった。




「あっ…」

 戻ると、芽が再び大きくなり、膝丈程になっていた。


 ………私は、必要以上にその人のアニムスや死んだ状況を見なかった。ただ、流羽人お兄ちゃん以降の三人は、かなり深くまで見た。

 

 ………色々な人のアニムスに深く触れること………それが、この植物を育つ栄養……?


 すると、今まで少しも動かなかった植物が、「正解だ」とでも言うように僅かに揺れる。

 それは、偶然ではなかった。


 ……風が吹いている。


「無」が少しづつ……変わっていっている。










 その植物は、私がイデアにきた人のアニムスを深く知り、選択を与えるたびに大きくなっていった。

 真ん中の茎が茶色くなっていき、木の幹のようになっていった。


「これ…木なのかな…」

 だとしたら…どれだけかかるんだろう………

 元の世界では…3、4リムぐらいかかったよね…


 もちろん、通常の成長よりは早いと思う。

 それでも…ここに人が来るのは不定期だし、膨大な時間がかかるのも間違いないと思う。



「……まぁ…時間は無限にあるんだし…がんばろ……」

 小さくなった私の身長を超え始めている木の近くに寝転がった


 …………風が静かに吹いている。

 私にはもう眠いという感情はないようだったが、目を瞑り、その小さな風の音に耳をすませていた。


 突然、1枚目の子葉が激しく光ったあと、茶色に変色して枯れそうになった。

 

 …あの葉は…お兄ちゃんの時の…お兄ちゃんに、また何かあった…?

 とりあえず、なんとかその葉を戻そうと再生の魔法かけようとした瞬間、私の体は少し電気が流れたように震えた。


 ……!

 上空から知らない施設を見ていた。

 …兄さんが100人近くの大人から子供に囲まれている。全員その手にはナイフや拳銃などの武器がある。


 ………私になんとかできれば………

 葉を離すと視点が戻った。


 …………イデアにいる私には、お兄ちゃんがピンチだと分かっても助けるすべはない。

 悔しさで奥歯をかみしめた。


 ……その瞬間、その二枚の子葉は茎から落ちて、風で少し離れた場所に落ちた。

 

 そして、その着地地点に二枚の葉から、今にも壊れそうな扉が形成された。


 ………あれはもしかして………

 私は扉を開けた。

 そこには先ほど見た風景が広がっている。

 ……間違いないあの場所だ。


 そして、お兄ちゃんが男に押し倒されてナイフが振りかざされた。

 私は躊躇いなくすぐに扉に飛び込んで、お兄ちゃんの周りで魔力の盾を展開した。


「木魂の盾」




「君は…」

 お兄ちゃんは私だとは、まだ気づいていないようだった。

 でもそれを伝えている場合じゃないと、第六感的にわかった。


 あの扉はすぐに壊れる。


 説明もせずに魔力を放つ。お兄ちゃんなら分かってくれるはず。


「Paradise lost memory………堕ちろ…この楽園から…!」


 私の周りに魔力が集まっていき、私の身体が宙に舞う。

 そして、一回で全ての魔力を放った。


 地面から触手が大量に生えて、敵を捕らえた。

 お兄ちゃんは、それを見て気づいたらしい。


「Another world…破壊し尽くせ…!」


 触手に雷が落ちて、勢いよく燃え上がった。





「で…君は結局誰なんだ?」

「分からないとしか言えないかな…」


 そして、さりげなく忠告をする。


 ………ここはイデアではない。……なら、


「これは独り言………」


 イデアのルールの干渉が少ない今だったから……間接的に伝えることができた。


「…瑠……」

 名前を言いそうになるお兄ちゃんの口慌てて塞ぐ。


 ………時間切れだ。

 私の体が透明になっていく


「じゃあね…多分これ以上、私は干渉できないから……絶対に死なないで」

「…死なないよ」

 お兄ちゃんはなんとか言葉を絞り出した。



 大丈夫。私は生きている。

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