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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第三部〜ロビンズギルド編〜

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30章〜血痕と足跡:footprints〜

 目が覚めたのは、もう日が高くなった頃だった。

 いつも通り起きあがろうとして、右手の肩で体を支えてしまい激痛が走る。


 ……一晩で治るはずもないか…


「誰も起きてないのか?」


「リエル?玲人?」

 扉を開けた瞬間、中でベットから誰かが落ちた音がした。


「大丈夫か?」


「う、うん…」

 リエルがベッドから転がり落ちていた。

「ん…どうした…?」

 続けて、玲人が寝ぼけながら起き上がる。


「玲人兄さんのホールドから逃れようとしたら…こうなって…」

 リエルがやや俯き気味だ…


「玲人…」

「…度々すみませんでした」

 寝起きとは思えない以上な速度で土下座をする。


「い、いや大丈夫だから…朝食…いや昼食作ってくる…」

 慌てて部屋を出て行った。


「玲人…」

「…本当に申し訳ない………」

「…まぁ、リエルも気にしてなかったみたいだし…昼食食うか…」


 玲人がパジャマを脱ぎだす。

「玲人…あと、よだれ垂れてんぞ…」

「…?どこ?」

「ほらここ」

 玲人の右肩を指差す


 ……

「え?俺…左肩下にして寝る癖があるから、そんなことありえないけど……」

「…え?…誰の…?」

 そうは言ったものの、次の瞬間には二人とも答えが分かった。…玲人以外には一人しかいない。

「「…」」


 無言で部屋を出て、昼食を食べにリビングに行った。



「「「いただきます」」」

 まともにゆっくりと食事をするのは久しぶりだ。


 家に残っていたケルと野菜で、簡単な昼食をとっていた。


「あ、そういえば…これ」

 玲人が箱型の物体を机の上に置いた。

「…情報電波ラジオ…?」

「何…?それ?」

 リエルは初めて見たようだ。


「これはラジオって言って、電波で遅れてる情報を集められてるんだよ」

「へぇ…すごいね…」

「どこで手に入れられたんだ?しかも、こんな小さな便利なやつ」


「裏市に落ちてたやつを孤児院に行く前に、修理してたけど…重いから置いてったんだよね」

 玲人が電源をつけた。


『次です。今日の8ナル、ラウー総長が会見を行い、最近起きている連続殺人の捜査を強化することを発表しました』


「…すごい…こんな箱から音が聞こえる」


『速報です!』

 短いサイレン音が鳴る。


『今日の早朝、国の孤児院で火災が発生しました。事故かと思われていましたが、土の地面に腹を弾丸で撃ち抜かれた状態で発見されました』


「……あそこ土だったっけ…?」

 …完全に土で燃えないということを忘れていた。


『そして、その男性は首を噛みちぎられたかのような跡がついていて、死因は出血過多と発表されました。同時にその周りに3つの足跡があったことから、複数犯であり、そのうちの一つの足跡や重なった血の解析から、犯人はの一人はシュープリー連合国で指名手配中の「藤堂流羽人」なのではないかと言われています。明日から、シュープリー連合国のラウー長官と会談した上で、強い封鎖などを行なっていく可能性があると発表しています』


 思いっきりむせた。自分の血や足跡のことは考えてなかった…

「…流羽人兄さん…指名手配だったの?」

「うん。放火罪と殺人未遂罪で」

 リエルが若干引いている。

「いや、冤罪だから!」

 俺は、あいつらに攻撃をほぼ加えられていない。

 あのラウーたちはいつになったら気づくんだよ…俺の住んでた家なのに。


「でも、一回ロビンズギルドから出ないといけないのは間違いないな……」

 玲人が少々めんどくさそうに頭を掻く。

「そういえば玲人兄さんたちは、この後どうする予定だったの?」

「一応、俺と流羽人は各国にある拠点を潰して行ってるかんじかな……リエルはどうするんだ?」

「ついていくんじゃないの?」

「別についてこなくても、リエルが12歳なら親が法律上必要ないから、この家で普通の生活に戻って…」


「何言ってるの?」


 とても強い口調だった。

「私は逃げない。お父さんも…お母さんも…ノックスも奪った奴らを許しておけるはずがない……。……私もRed bloodを破壊する」

 言い切り、まっすぐとこちらに眼差しを向けていた。


「…ごめん…リエルの決意を否定してたな」

「大丈夫………だから、私もついていく」





 昼食を玲人が片付けている間、俺は荷物の整理をした。

 必要な書類と武器を中にしまう。

 ここまで使っていた鉄パイプは、刀でかなり変形させられていた上に血だらけだったので、この家に隠しておいていくことにした。



 玲人も準備が終わり、リビングに再度集まった。

「…リエル…服多くない?」

 玲人が以前、ラモングからこちらに来るのに使っていた大きなキャリーケースが大きく膨らんでいる。

「…?これでもかなり減らしたけど」

 ……普通…なのか…?

 俺は基本、服に無頓着なので毎日同じもの着ていても気にしないが、普通はここまで気にするのかもしれない。

「まぁ…いいか……で、次はどの国に行くんだ?」

「テサー王国だよ」


 テサー王国…大陸中王部の王政王国で、国民が完全支配されている王国。大陸戦争では西側で戦い、戦士の士気の高さから多くの奇襲による逆転を起こした。


「理由は?」

「一つは、シュープリーを通らずにいける直通便がある。北西部のマラドバー、ベライスを通る周遊特急がある。あと、言語が大陸共通語とテサー語で、全然通じるから」

「分かった。リエルもテサー王国でいいか?」

「私はどこでもいいよ」


「じゃあ…行こうか」


 俺たちは荷物を持って1ソム(20日)程を過ごした、この家を後にした。





 今日も中央市場は、人で賑わっていた。

 俺は身体や顔の特徴が出回っているので、玲人とリエルが買ってきた。

 中央市場の格安チケットでも20Arするほど人気の周遊特急らしい。


 久しぶりの旅行に行く気分で、俺たちはやや気持ちが上がりながら駅に行った。

 しかし、その気持ちは一瞬で崩される。


 駅の唯一の入り口前に警備員が二人立っていて、俺と同じくらいの身長の男子は一度止められている。


 すでに…国外逃亡は対策されていた……

「…流羽人…」

「…どうすればいいんだ…?」

「気づいてないふりをするな……着替えてこい」

「…そうなるよな」


 近くのトイレで着替えて女装をしたことで、警備員を楽に通過して列車の乗車口へと向かった。

 中は、シュープリー連合国やラモングよりも豪華で、商人らしき人から、スーツを着た会社などの上役まで幅広い人々が列車に乗り込んでいた。


 また、蒸気機関車も20両編成の最も大きい部類のものだった。

「すごい…こんな大きいものが動くんだ」

 …当然、俺や玲人が初めて列車に乗った時のように興味深々だった。


 玲人のとった2等室は清潔感があるやや大きい部屋で、しっかりと4つベッドがあり、ラジオも部屋常備の高性能なものがあった。


 到着には半ソム(10日)かかるらしいから、かなりゆっくりできそうだ。


「兄さん達!動き出した!」

 プライベートデッキから外を眺めていたリエルはが叫んだ。



 夕暮れの中列車は出発して、このロビンズギルド中央街を走り抜け、ノガ部へと向かっていった。

作者の利糸です。

今回で、第三部ロビンズギルド編が完結しました。幕間を挟み、次回からは第四部テサー王国編です。

新たな仲間リエルと共に、Red bloodの情報を探していく中……大きな陰謀に巻き込まれていきます…

今後もよろしくお願いいたします!

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