30章〜血痕と足跡:footprints〜
目が覚めたのは、もう日が高くなった頃だった。
いつも通り起きあがろうとして、右手の肩で体を支えてしまい激痛が走る。
……一晩で治るはずもないか…
「誰も起きてないのか?」
「リエル?玲人?」
扉を開けた瞬間、中でベットから誰かが落ちた音がした。
「大丈夫か?」
「う、うん…」
リエルがベッドから転がり落ちていた。
「ん…どうした…?」
続けて、玲人が寝ぼけながら起き上がる。
「玲人兄さんのホールドから逃れようとしたら…こうなって…」
リエルがやや俯き気味だ…
「玲人…」
「…度々すみませんでした」
寝起きとは思えない以上な速度で土下座をする。
「い、いや大丈夫だから…朝食…いや昼食作ってくる…」
慌てて部屋を出て行った。
「玲人…」
「…本当に申し訳ない………」
「…まぁ、リエルも気にしてなかったみたいだし…昼食食うか…」
玲人がパジャマを脱ぎだす。
「玲人…あと、よだれ垂れてんぞ…」
「…?どこ?」
「ほらここ」
玲人の右肩を指差す
……
「え?俺…左肩下にして寝る癖があるから、そんなことありえないけど……」
「…え?…誰の…?」
そうは言ったものの、次の瞬間には二人とも答えが分かった。…玲人以外には一人しかいない。
「「…」」
無言で部屋を出て、昼食を食べにリビングに行った。
「「「いただきます」」」
まともにゆっくりと食事をするのは久しぶりだ。
家に残っていたケルと野菜で、簡単な昼食をとっていた。
「あ、そういえば…これ」
玲人が箱型の物体を机の上に置いた。
「…情報電波…?」
「何…?それ?」
リエルは初めて見たようだ。
「これはラジオって言って、電波で遅れてる情報を集められてるんだよ」
「へぇ…すごいね…」
「どこで手に入れられたんだ?しかも、こんな小さな便利なやつ」
「裏市に落ちてたやつを孤児院に行く前に、修理してたけど…重いから置いてったんだよね」
玲人が電源をつけた。
『次です。今日の8ナル、ラウー総長が会見を行い、最近起きている連続殺人の捜査を強化することを発表しました』
「…すごい…こんな箱から音が聞こえる」
『速報です!』
短いサイレン音が鳴る。
『今日の早朝、国の孤児院で火災が発生しました。事故かと思われていましたが、土の地面に腹を弾丸で撃ち抜かれた状態で発見されました』
「……あそこ土だったっけ…?」
…完全に土で燃えないということを忘れていた。
『そして、その男性は首を噛みちぎられたかのような跡がついていて、死因は出血過多と発表されました。同時にその周りに3つの足跡があったことから、複数犯であり、そのうちの一つの足跡や重なった血の解析から、犯人はの一人はシュープリー連合国で指名手配中の「藤堂流羽人」なのではないかと言われています。明日から、シュープリー連合国のラウー長官と会談した上で、強い封鎖などを行なっていく可能性があると発表しています』
思いっきりむせた。自分の血や足跡のことは考えてなかった…
「…流羽人兄さん…指名手配だったの?」
「うん。放火罪と殺人未遂罪で」
リエルが若干引いている。
「いや、冤罪だから!」
俺は、あいつらに攻撃をほぼ加えられていない。
あのラウーたちはいつになったら気づくんだよ…俺の住んでた家なのに。
「でも、一回ロビンズギルドから出ないといけないのは間違いないな……」
玲人が少々めんどくさそうに頭を掻く。
「そういえば玲人兄さんたちは、この後どうする予定だったの?」
「一応、俺と流羽人は各国にある拠点を潰して行ってるかんじかな……リエルはどうするんだ?」
「ついていくんじゃないの?」
「別についてこなくても、リエルが12歳なら親が法律上必要ないから、この家で普通の生活に戻って…」
「何言ってるの?」
とても強い口調だった。
「私は逃げない。お父さんも…お母さんも…ノックスも奪った奴らを許しておけるはずがない……。……私もRed bloodを破壊する」
言い切り、まっすぐとこちらに眼差しを向けていた。
「…ごめん…リエルの決意を否定してたな」
「大丈夫………だから、私もついていく」
昼食を玲人が片付けている間、俺は荷物の整理をした。
必要な書類と武器を中にしまう。
ここまで使っていた鉄パイプは、刀でかなり変形させられていた上に血だらけだったので、この家に隠しておいていくことにした。
玲人も準備が終わり、リビングに再度集まった。
「…リエル…服多くない?」
玲人が以前、ラモングからこちらに来るのに使っていた大きなキャリーケースが大きく膨らんでいる。
「…?これでもかなり減らしたけど」
……普通…なのか…?
俺は基本、服に無頓着なので毎日同じもの着ていても気にしないが、普通はここまで気にするのかもしれない。
「まぁ…いいか……で、次はどの国に行くんだ?」
「テサー王国だよ」
テサー王国…大陸中王部の王政王国で、国民が完全支配されている王国。大陸戦争では西側で戦い、戦士の士気の高さから多くの奇襲による逆転を起こした。
「理由は?」
「一つは、シュープリーを通らずにいける直通便がある。北西部のマラドバー、ベライスを通る周遊特急がある。あと、言語が大陸共通語とテサー語で、全然通じるから」
「分かった。リエルもテサー王国でいいか?」
「私はどこでもいいよ」
「じゃあ…行こうか」
俺たちは荷物を持って1ソム(20日)程を過ごした、この家を後にした。
今日も中央市場は、人で賑わっていた。
俺は身体や顔の特徴が出回っているので、玲人とリエルが買ってきた。
中央市場の格安チケットでも20Arするほど人気の周遊特急らしい。
久しぶりの旅行に行く気分で、俺たちはやや気持ちが上がりながら駅に行った。
しかし、その気持ちは一瞬で崩される。
駅の唯一の入り口前に警備員が二人立っていて、俺と同じくらいの身長の男子は一度止められている。
すでに…国外逃亡は対策されていた……
「…流羽人…」
「…どうすればいいんだ…?」
「気づいてないふりをするな……着替えてこい」
「…そうなるよな」
近くのトイレで着替えて女装をしたことで、警備員を楽に通過して列車の乗車口へと向かった。
中は、シュープリー連合国やラモングよりも豪華で、商人らしき人から、スーツを着た会社などの上役まで幅広い人々が列車に乗り込んでいた。
また、蒸気機関車も20両編成の最も大きい部類のものだった。
「すごい…こんな大きいものが動くんだ」
…当然、俺や玲人が初めて列車に乗った時のように興味深々だった。
玲人のとった2等室は清潔感があるやや大きい部屋で、しっかりと4つベッドがあり、ラジオも部屋常備の高性能なものがあった。
到着には半ソム(10日)かかるらしいから、かなりゆっくりできそうだ。
「兄さん達!動き出した!」
プライベートデッキから外を眺めていたリエルはが叫んだ。
夕暮れの中列車は出発して、このロビンズギルド中央街を走り抜け、北部へと向かっていった。
作者の利糸です。
今回で、第三部ロビンズギルド編が完結しました。幕間を挟み、次回からは第四部テサー王国編です。
新たな仲間リエルと共に、Red bloodの情報を探していく中……大きな陰謀に巻き込まれていきます…
今後もよろしくお願いいたします!




