29章〜最果ての刀:End of sword〜
「玲人!リエル!」
二人は、職員棟の建物の裏にいた。
「…流羽人……遅かった…とは言えない速さだな…」
玲人は、リエルを前に横抱きしながら戦っていた。刀を自由に振らせないよう、ナイフや炎で牽制しつつ距離を保っている。
「リエルは!」
「大丈夫だ…血が不足してるらしい…俺の血を飲んでる」
リエルはよく見ると確かに息をしていた。
「あの大群を振り切ったのか…大したもんだ」
「誰だ」
玲人たちの前には、着物を着た長身の長刀を持った男が立っている。
「俺が答えて何になる?お前たちが死ぬ直前にな」
「上等だ…Another world」
電気の弾を見えない速度で横に避け、俺たち二人に切り掛かる…
…着物を着ているとは思えない速さだ…!
玲人は、リエルを抱えているので早く動けない…
なら、俺が受けるしかない…!
鉄パイプを左手を主にして、男の刀に正面から打ちつけた。
火花が散って、金属音が響く。
力で押し込もうとする相手に対して俺は一瞬力を抜き、バランスを崩した時、相手の刀の刃を握った。
血が出ることなど気にしない…!
ここで、一撃で決める!
「Another world……破壊し尽くせ………!」
俺の魔力もおそらくギリギリだが、なんとか人が感電する電気を刀に流し込む…!
刃が光り、俺はその圧力で後ろに吹き飛ばされた。
……なぜだ…俺は、電気を流し込んだはず…
男の刀が砂色に光っていた。
「……魔力の刃か…」
玲人がつぶやいた。
「魔力の刃?」
「あぁ…その名の通り、魔力攻撃が可能な刃…のことだよ」
「…ご名答」
男が手を叩く。
「だから、ネックレスをつけていなかったのか…」
「その通りですよ」
…確かに…この男はなぜか魔力が吸われるネックレスを持っていない……!
「あれは自分の魔力攻撃すらも吸ってしまいますからね。珍しく私の本気を出させたことを後悔しなさい」
男は剣の先を俺たちに向ける。
「いいよ。受けて立つ」
リエルが立ち上がり、再び吸血鬼となる。
「本気で殺す」
「同じく。3対1だ」
玲人は拳銃のマガジンを入れ替えて刀男に向ける。
「最果ての剣」
俺たちの周りを砂埃が舞い始める。
その技の終わりを待たず、玲人は弾丸を男の顔面に打ち込んだ。
男は軽く避けたが、俺は鉄パイプを男に振り腹部から吹き飛ばす!
鈍い音が鳴って、叩いていたのは硬い地面だった。
…!
男が上から刀を下に向け飛び降りてくる。
落下する力に勝てるはずがないので、俺は避けて着地した瞬間に再び頭を叩きつける。
が、これも男は、着地後すぐに体制を立て直して、片手で横に突き上げた刀で受けられた。
「終わりだね」
俺の刀を受けている男は、後ろからのリエルの攻撃を受けられない!
もし、こちらを離せば俺の鉄パイプが命中する。
「緩すぎる」
リエルはナイフを刺す直前、横に倒れ意識を失ったようだった。
…その腹にはナイフが刺されている……
まさか…こいつは…片手で…ノールックで…ナイフをリエルに刺して、片手であそこまで吹き飛ばしたのか…
「化け物じみてやがる…!」
「そいつもヴァンパイアだよ。俺からしたら」
空いた片手で腹を殴り飛ばされる。
……あばらの骨が折れてる…
「リエルはバケモンじゃない…!」
玲人は男に発砲するが、避けられる。
男は、次の発砲の瞬間いなくなった。その場には土の柱ができている…
こいつは……周りの地面を操れる…!
「流羽人…!立てるか!」
「…いける」
何とか鉄パイプを支えにして立ち上がった…
…!
男は高所から発砲してきた
意識を失っているリエルに向かって…!
「リエル…!」
電気を使うには…間に合わない…!
うめき声が上がった。
「玲人!」
弾丸を腕で受けていた。
そして、その直後にもう片方の手で発砲する
男は土を消して地面に降り立つことで避けたが、そこに玲人が高速で2発撃つが、これも前に土を作りかわされる。
そして、そこから出てきた男に6発目を発砲した。
その瞬間、男は速度を変速して避けながら一気に玲人に詰める。
拳銃の弾丸は6発。玲人はリロードしなければ撃てない…!
俺も発砲するが、左手しか満足にしかつけないせいで明後日の方向に飛んでいった。
玲人は下を向いたまま、銃を構えたままでいる。
「玲人っ!」
静かに刀が振られる。
玲人が顔を上げた。
そして、勝利を確信したかのような顔をした。
銃から7発目が発砲される。
刀男は何とか心臓を逸らすが、右肺に命中する。
「何故だ……」
男が状況が理解できずに、動きが止まる。
その止まった瞬間…リエルが突然飛び上がり、男にナイフを持って飛びかかった。
男の剣で…リエルの右腕の根本が斬りつけられ、リエルはナイフを取り落とした。
しかし、リエルは勢いそのままに…男の首元に牙を突き立てて噛みちぎった。
男の体から力が抜けて、首から血を流しながら倒れた。
「玲人…リエル……」
リエルが、口から男の血と肉を吐く。
「監獄を壊せたよ…ノックス……助けられなくてごめん…」
『ノックス?』
『彼女の弟らしい』
彼女は、その場にいない弟に想いをはぜていた。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
倒れているリエルに向けて、銃が発砲された。
やばい…!俺は必死に走り、何とか手を伸ばして腕で弾丸を守り切った。
リエル…!
後ろを一瞬見たその時、彼女は目を開いて笑っていた。
…演技か…!
なら…おそらくリエルは、近距離で相手に隙を作れば勝てる…!
俺は、わざと当たる可能性が低いと知りながら6発を撃った。
男は、俺の撃った弾の数を当然把握していて、6発目の直後にこちらに詰めてきた。
まだ遠い……まだ……まだ…………今だ…!
男が、振り下ろす直前…俺は最後の弾を撃った。
俺は、最初にリロードする時………1発装填していた。
だから……7発撃てる状態だった。
その生じた隙にリエルは攻撃を仕掛けて、勝負は決した。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
「兄さん達…大丈夫?」
リエルは、すでに体のほとんどが回復している。
しかし、俺は右肩がライフルの弾で砕けて、男のパンチであばらが折れている。玲人もリエルを庇った右腕に深々と弾丸が突き刺さっている。
「あぁ…まぁ大丈夫だ」
「……流羽人、リエル…まだ敵がいるんじゃないか?」
「…どうして?」
「数が少なすぎる…21人程度で管理できる施設の大きさじゃない」
大きな蒸気車の発信音が響き渡る。
「逃げたんだ!」
どこからか知らないが逃げ出したらしい
「追うぞ!」
「いや、待て!情報が先だ!」
玲人の指差した職員棟から炎が上がっている。
…証拠隠滅を図られた…!
俺たちは追いかけることを諦め職員棟に向かい、炎耐性のある玲人が中に入ろうとした。
「熱っ!」
…玲人が…耐えられない……!
「分からないけど…何か特殊な炎だ…」
突入できないまま、周りの草に燃え移っていった。
俺たちは…退く事しかできなかった。
迫る炎から逃げて、壊した塀を潜って外に出る。
空には、勝利を祝福するかのようにブルースターが輝いていた。
家に辿り着き扉を開けると、朝出た家がしばらく帰ってない家のように感じられた。
そして、全員が疲れからか、何も話さずに無言でそれぞれの部屋に入りベッドで眠りに落ちた。




