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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第三部〜ロビンズギルド編〜

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28章〜あの楽園の記憶:Paradise lost memory〜

「リエル…これはあくまでも、仮説の範囲なんだけど…」

 リエルが頷く。

「リエルが逃げた時、本当にここの孤児は逃げ出してたんだよね?」

「うん………あっ!……それから……監視塔も内側に向いていたと思う」


 …少しづつ仮説が確証に近づいていく。


「だから、間違いなくこの孤児院には何か変化があったんだと思う。そこで怪しいのがさ……」

「…?」

「あの青い紫陽花……あれは、酸性の土壌に出来やすいんだけど、この辺にそんな土壌は無い。だったら、何か(・・)をあの土の近くに埋めた可能性が高い」

何か(・・)…?」

「おそらく、人の死体」

「…………どういうこと?」

「俺のいた孤児院でも……あの青い紫陽花があった気がする」


 あの孤児院のパイプディノン構造の周りにあった…花畑。たまに意味もなく外を見ていた時に見た、紫陽花も…確か青かった。


「俺の孤児院ではよくいた、逃げようとしたりした孤児が埋められていたんだと思う。………けど、恐らくここで埋められているのは……かつてのほとんどの孤児なんじゃないかな」

「…ほとんどの孤児……何で……逃げなかった孤児は…」


「ここは、もう孤児院では無いんだと思う」


 リエルは、全く分からないとでも言いたげな顔をしている。

「じゃあ…ここは?」


「……新しい組員の養成施設ってとこ……」


 リエルが数秒遅れて、その言葉の意味を理解し始める…


「……じゃあ流羽人兄さんは…ノックスは………」

「あの大量の死体は…組織に入ることを拒んだ子供たち……と言えるんじゃないか……あと……そのノックスっていうのは?」

「…あれ、言ってなかったっけ……私の弟。…一緒に……この孤児院に入れられたの………ノックスは……」

「………その子が…生きることを選んだのか、自分の正義を選んだのかによるね………あくまで俺の仮説があっていたと仮定する場合だけど」



 孤児院が崩れ去る爆発音が鳴った。



「…流羽人兄さんのいる方…!」

「行こう!」


 合流のタイミングを思い出し、その建物が見える方まで走っていった。


「「……」」

 先程の最後の一言の保険が崩れ去る景色を見た。


 遠目でよく見えないが、孤児院が崩れて逃げられるのにも関わらず………彼ら彼女らは逃げなかった。


 そして、しばらくすると全員が武器を取り出して、全てが確定した。

 

 リエルは信じたくなかった光景を見せつけられて、膝をつく。


「リエル…流羽人がまずい。助けに行かないと!」

「…う……うん…」


 ただでさえ辛い思い出のこの孤児院で、弟が死んだか、悪の組織の手先にされ敵であるという事実を突きつけられた辛さは計り知れない。


 ただ、リエルがこのままいても危険なだけだから……乗り越えてもらうしかない……


「やはり、お前達か」

 …!


 後ろからの足音に気づけなかった。


「……」


 刀を懐に持った男が立っていた。あの、裏市で殺した刀男に瓜二つである。


「弟を殺してくれたらしいな…藤堂玲人」

「どうだろうな…心当たりが多すぎる」


 それを言い終わる頃には、男は俺の首を正確に捉えて斜め上から刀で切り込んできていた。

 ナイフを投擲し、男の動きの軌道を変えて攻撃を遅らせることで、容易にナイフで受ける。

 しかし、前と同じように力で押し切られかける。


 右手を添えて何とか耐えつつも、刀が傾けられることも警戒しなければならない…!


「玲人兄さんから離れろ…!」


 リエルが立ち上がり、高速でナイフを男の手首に刺しに行った。男が、一度攻撃を止め半歩引いた。


「…吸血鬼か……非常に面白い……」

 男は不敵に笑い、リエルが次々と放つ血の槍を、全て刀で振り払った…!


 その無防備な体に投擲ナイフを投げつけるが、簡単に刀の先で弾かれる。


「お前らじゃ俺に勝てないよ」


 守りの姿勢をとき、先程の速度をはるかに超える速度で、俺とリエルを仕留めにきた。






 Side〜流羽人〜


 全員が、少しづつ俺に詰め寄ってくる。


 …!来る


 初めの攻撃は、2階からのライフル弾だった。正確なその狙撃は後ろに転がって避けたが、その直後にナイフを持った全員が距離を詰めた。


「Another world!」

 電気を複数の方向に放ち牽制するが数が多すぎた。


 前の仲間気電気で倒れようとも、取り憑かれたかのように止まらず攻撃を仕掛けてくる。


 数人を電気で倒すと、俺は鉄パイプで何とか耐えるだけとなっていた。


 …!

 銃声が響き、俺の肩を銃弾が砕いていく。

 鉄パイプを取り落し、丸腰となった瞬間は当然見逃されない。


 …全方向からナイフが襲ってくる…

 …!


「Another world!」


 最後の足掻きに雷を周りに落とすが、その後隙にナイフが来る。

 頭だけの回避をするが、そのナイフの主の男に馬乗りにされて動きが封じれられた。



 体が動かせない様固定されている…!



 男はナイフを振り下ろした…


 それは、俺の心臓を貫く

 …………ことはなく、代わりにその男含む周りの敵が吹き飛んでいた。




……何があったんだ……



「木魂ノ盾」

 そこには、少女が立っていた。


「リエル………?」

 ではなかった。


「君は……」

 イデアにいた少女が立っていた。

「お兄さん…意志アムニスがあるからって。無理したら死にますよ」

「…また……選択をもらえるのか…?」


 もちろん………戻る気はない。


「いえ、これは私の意思ですよ」

「…君は…」

 ー元々人間で……俺のことを知っているのか?


 しかし、組織員達が再び戦闘体制をとっていることを確認して、会話を止める。

「まず、こっちが先みたいですね」


 少女は軽く飛ぶと、宙に浮いた。

 そして彼女は目を瞑り、手を合わせる。


 彼女に向かって、周りの植物がから魔力らしき光が集まっていく。

 周りに、彼女を守るかのように透明の魔力の球体が形成されていく。


 誰もが動かなかった。

 その少女に目が釘付けになっていく。


 そして、少女が目を開けて叫んだ。

「Paradise lost memory………堕ちろ…この楽園から…!」


 …!

 地面から大量のつたが湧き出てきて、職員や孤児と思っていた全員を捕縛した。

 悲鳴が上がるが、すぐに全員が手に持つ武器でそのつたを壊そうする。


「お兄さん!これ以上は持たない!早く!」


 彼女は…これ以上は魔力的に限界らしい……「早く」?……

 …!彼女の意図がわかった。


 全てのつたに繋がっている様に見える彼女の浮く真下にあるつたの前で、自分のできる最大まで電気を溜める。


「Another world!…破壊し尽くせ…!」


 つたに電気が流れ、まだ捕まっていた組織員たちは体が痙攣して動かなくなる。

 そして、何とか逃れても…つたが燃え出して炎の海に飲み込まれた。



 つたが消滅すると、火は燃え移ることなく消えた。

 その場には、100人以上の死体が転がっていた。

 いつもなら何も感じないが、今日ばかりは………自分よりも幼い少年少女がいたこともあり……何か…虚しさの様なものを感じていた。


 ただ、その死体から意識を移すかのように俺は少女の方を向いた。

「で…君は結局誰なんだ?」

「分からないとしか言えないかな…」

 微笑みながら答えられた。



「何で…俺を…」

「なんとなく?……まぁ…強いて言うなら…妹のために復讐して命投げ出すなんて馬鹿だなぁって思っちゃってね」

「…そうさせられたんだよ」

「あなたが死んだら、本末転倒ってことを絶対に忘れちゃダメ。分かった?」

「…分かった……」

「あと……これは独り言。とある少女がいたんだけどね…」

 ………まさか……そんな…


「その子の名前は分からない…その子は、右目に深い傷を負っている薄い赤髪の男が突然押し入ってきて…殺された。ただ、あなたと同じく死んだ後に彼女にはアムニスが残って、この世に引き留めた。その子は…まだ死んでないよ…お兄ちゃん(・・・・・)


「…瑠……」

 口を塞がれた。


「じゃあね…多分これ以上、私は干渉できないから……絶対に死なないで」


 彼女の体が薄くなっていく……

「…死なないよ」

 うまく笑えなかったが、その言葉だけは絞り出せた。

 それを聞いて彼女は微笑み、やがて空気に溶けるように完全に消えていった。





 …遠くでの炎と銃声の音で我に帰った…

 玲人とリエルが…!まだ…敵がいるのか…!

 その音の方向へと手を庇いながら走って行った。

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