27章〜崩れる仮定:trap〜
二つの監視塔の光がこちらに向けられた。
「こっちに向かってきてる!」
サグスラモン(南東)の監視塔の下を狙っていたが足音でばれて、後ろに一度引く。
危ない…体の前を光が通り抜けていった。
リュックから玲人の作った、小型爆薬を塀に向かって投げた。
光がそちらへと向く。
その隙にノガロビン(北東)の塔の下に辿り着くことに成功して、小型爆弾を逆のサグスロビンに向けて投げることで、塀を抜ける時間を作り出す。
塀に爆発音の小さい爆薬をセットして、壁を破壊した。
よし、これで……
…!
銃が頭上を掠めた!
「こっちn…」
発砲した男に一瞬で近づき、暗闇で相手が見えない中、鉄パイプで顔を砕き黙らせる。
「どうした!」
しかし、男が地面に倒れ込んだ音で気付かれた。
仲間らしき男が、こちらにライトを向ける。
「Another world!」
高速の電気の弾をそちらの男に打ち込む。
しかし、運悪く男が反射的に投げたライトに当たり防がれた。
「お前…能力者か……電気…藤堂流羽人か!」
「…!」
なんで、名前が知られてる?
「…藤堂流羽人がこちらにいる!」
『………了解!警戒しておく!』
…!
「なぜ…知ってるんだ!」
トランシーバーで情報を送られた。
「こっちは、お前らのことは全部知ってるからな」
男が、胸元から緑色の小さなガラス玉を飛ばしてくる。
電気弾を飛ばして、その弾を防ぐ。
…はずが、光はその玉に吸い取られて消え、その弾は軌道を変えず俺の足元に落ちた。
着弾した瞬間、その弾からは緑の光が溢れ出して、その強い波動に吹き飛ばされた。
体が焦げるような感覚に襲われ、地面に倒れ込む。
しかし、それを待つ暇もなく男は、追撃にもう1発投げ込まれた。
電気は効かないので、腰元の拳銃を取り出しその飛んでいる弾を撃つが、弾は小さく、手も震えているのでうまく当たらず、再び近くに弾が落ちて、吹き飛ばされる。
そして、うつ伏せになって動けなくなっている俺に、後ろから駆け足で走り込む音が聞こえる。
手を回した反動で体ごと投げ出すことで、俺の心臓を狙ったナイフが地面に突き刺さる。
男が舌打ちをして、抜けないナイフではなく拳銃に持ち替え、超至近距離で発砲した。
頭に打たれるという読みが当たり、転がってなんとかかわし、ハンマーを下ろしている間になんとか立ち上がった。
そして、拳銃を至近距離でこちらも発砲するが、相手は屈んで即座に打ち返される。
…!
ここしかない!
相手は…かなり戦闘慣れしている……だったら、これが効くはず…!
相手の弾丸は、急所以外で受ける覚悟でタイムロスを減らして、落としていた鉄パイプを両手で横から振るそぶりを見せる。
太ももを弾が掠る。
相手は、危険を察知して横からの攻撃に、バックステップで後ろに倒れ込むという最適解を行った…
が、決着はついた…
俺はそれに対して、力をかけていない横振りの動作をやめて、一歩踏み出して、全力で頭に叩き込んだ。
男は立ち上がれないまま、頭に叩き込まれて、血飛沫をあげながら倒れ込んだ。
その死体の確認は急いでいるので行わずに、開けた穴に向かって走っていった。
警戒しながら中に入ったが、予想とは真逆で見張りは全くいない。
そのことが、さらに不安にさせる。
選択肢は残されていない。
俺は一番大きな建物である、孤児棟へとゆっくりと屈んで歩いて行き、玲人に指示された場所に爆弾を仕掛けていく。
もちろん、先ほどのトランシーバーのせいで、職員棟から次々と職員が銃などの武器を手に持って近づいて来る…
銃の射程範囲に入った途端、20人以上の職員が、威嚇のように、発砲を始めた。
その弾幕をかわしながら、着実に設置していく。
…!足首に1発着弾した。
それでも、止まらずに走り続け爆弾を設置し切った。
爆発させる…!
ライターを遠くから投げつけ孤児院が崩壊して、中から多くの子供達が顔を覗き出して、恐る恐る出てきた。
「逃げろ!ここから出られるのは、今しかない!」
叫んで、孤児達を逃がそうとする…
しかし、孤児達は全く動こうとしない。
「それで、用事は済みましたか?」
孤児達が動かないまま、職員達が近づいてくる。
…なんで…孤児達は逃げないんだ…?
一斉に俺に向かって銃が撃ち込まれる。
しかし、弾丸はすべて胴を狙ったものなので、しゃがんで避け切った。
その次の瞬間、顔を上げると空中に大量の緑の弾が飛んできていた。
…しゃがむことを誘っていた…!
まずい…!
電気の速度で、なんとか射程範囲内から出て孤児院の壁に追いやられ、前で大爆発が起こる。
「お兄さんが、藤堂流羽人?」
……!?
正面に少女が立っていた。
「そうだけど…早く逃げて!ここから、出たくないの?」
「いや、出たくない。出れないよ」
「…どういうことだ…?」
「どうしてだろうね?」
そう言って、少女は孤児服のポケットに手を突っ込み、出した手には……ナイフが握られていた。
「えっ………………」
少女は、振りかぶって俺の心臓を一直線に突いた。
ギリギリで腕で心臓を守ったが、左の手首に深く突き刺さる。
「どうしてだ……?」
その回答は、すぐに出た。
2階にいる孤児は俺にライフルの標準を合わせて、他の孤児は拳銃やナイフを持って出てきた。
「ここを孤児院だと思っていたんですか?」
後ろから嘲笑うかのような声が聞こえて来る。
100人以上に完全に囲まれる。
「ここは、確かに元は孤児院でしたよ、でも今は違う。ここにいるのは、全員あなたの敵ですよ」
隙の大きい技を安易には打てない状況だ。
少しずつ全員が近づいて来る。
相手も、お互い味方に着弾させないため安易に銃を撃てない。
少しずつ、大群が迫りつつある。
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「リエル?もう歩けそうか?」
「う、うん…大丈夫」
リエルの傷口は完全に治っている。無理するように顔を背けているが。
「で…ここが、倉庫なの?」
そのことに触れずに、話を始めた。
「うん。そうみたいだ。サイレンサー(消音器)とかがあればいいんだけど」
「分かったよ」
リエルが、一歩下がった後、鍵穴を殴って壊した。
…何度見てもすごいな…力任せでやっているわけではなく、体の力を最大限に使用している…
倉庫が開いた。
中には、大量のサイレンサーだけでなく、大量のナイフ、拳銃、弾丸、ライフルなどが、かなりの量入っていた。
「…すごい量だね…とりあえず、サイレンサーを持っていく?」
……なんだこの感覚は……?
違和感がすごい…
……何が変なんだ……?
…!
「リエル……ここに来るまでに少しでも違和感のあったものがなかったか?」
「……?」
「ここの職員数は……20人から30人だったよな…」
「うん」
「なんでこんな量の銃が必要なんだ?」
……流石に、ストックとしておくには多すぎる。
もちろん、他の組織員への武器の供給ということも考えられる。
でも、まだ不審な点はある。
「確かに…」
「あと、監視等も変だよな……なんで、光を外に向けているんだ?」
…考えてみれば、孤児の脱走を考えるならば、中に向けるはず。それなのに、侵入者を見張るように監視塔の光を向けていたのは不自然だ。
「だから……リエルも何か不審に思ったことや、ちょっとでも違和感を持ったことはない?」
リエルは少し考えて、何かを思い出したかのように言った。
「そういえば………あの庭園のたくさんの紫陽花の色が青かったなぁって思ったけど……関係ないよね」
…青い…紫陽花………!
「なぁ…リエルが逃げた時は、他の孤児も逃げていたんだよな?」
「……えっ……うん…絶対にたくさん逃げてた」
頭の中で、全てが繋がっていく。
青い紫陽花。それは、酸性の土壌で育てられるとできやすい。
しかし、この辺の土地は……土の酸度は低い。
だから、なんらかのことを行う必要がある。
そして、酸性にする物の一つとして…………人の死体がある。




