26章〜完成品と未完成品:original or not〜
〜Sideリエル〜
私の首が爪で刈り取られる直前、私はなんとか首を前に倒して骨が折られるのを防いだ。
首の後ろの皮膚がちぎれる。
「小賢しいわね…おとなしく死ねばいいのに」
なんとか前に倒れ込んだが、回復は当然追いついておらず座ったまま入り口の扉に触れる
…鍵がかかっている!
……私たちが侵入することが……バレてた……!
座り込む私に、二人の少女はゆっくりと近づいてくる…
「小汚く生き残っていますね」
「本当に小汚い」
二人の少女が、私の皮膚に牙を立て血を吸い、血で剣を生成する。
「「死に絶えなさい」」
「Wind blade!」
かろうじて風の剣で、二人の剣を防ごうとしたが押し負けて、なんとか心臓や首などをそらしたものの、両手の手首に深い傷が入る。
手も垂れ落ちた私に、無情にも左の少女は心臓目掛けて血の剣を刺しにくる。
血の剣で応戦しても、彼女らの言う、「未完成品」の私には全く敵わなかった。
血の剣が、心臓に突き刺さる。
完全に地面に倒れ込んだ。
その私にもう一人の少女はすかさず、首を狙いにくる。
…これなら…!
ポケットに隠していた玲人兄さんの麻痺薬を、まだ使い物にならない手でなんとか弾き飛ばす。
ガラスが私の体の前で割れ、少女達に薬がかかる。
…しかし、一切効かなかった。全く効果はなく、ふらつきすらしない。
私は急所の1つ、心臓を壊されたから、回復能力がかなり低下している。
彼女らは間違いなく、私の残りの急所を潰しにくる。
心臓が完全に回復しないまま立ち上がり、双子の攻撃が、他の急所に刺さることだけをなんとか阻止する。
「……兄さん達…」
左目からも血が滴り落ち、ぼやける視界の中、私はなんとか生きていた
「…そろそろ諦めては?」
「それは、出来ないね」
同時に放たれる魔力の弾を、風で弾くが、その圧力で再び後ろに吹き飛ばされる。
後頭部からも血が流れ落ち、私は再び立ち上がることも、もうできなくなっていた。
「10秒で終わらせろと言ったはずよ」
「「申し訳ありません」」
女の咎めるような口調に、二つの声が重なる
「じゃあ…その子にふさわしい最期にしてあげて」
女は心底愉快そうに、でもそれが表に出ないように必死にこらえているように薄く笑った。
…ふさわしい…?
「かしこまりました」
彼女は後ろに置かれてある。1つの大きな蓋のついた缶を手に取った。
「……それは?」
絶え絶えの意識の中、声を絞り出す。
「あなたが無駄に抵抗するからよ。もっと早く死ねばよかった。すぐに死ねば…こんな苦しい思いすることはなかったでしょうに…」
「これはエンジンですよ」
女の言葉に続けて少女は答えた。
体の芯が凍った。
あの、村を襲った大火災が……
あの時も…このエンジンと同じ匂いがしていた
「ただ、あなたも何度も再生しているせいで、並大抵の炎じゃ死なないみたいだしね。しっかりと絶望の中で死になさい」
双子の一人が手にライターを、もう一人がエンジンの蓋を開けた。
そして、私にかけようと後ろに一度振りかぶった。
私にエンジンが振りかかる直前、…扉が開く音がして、エンジンが大きな音を立てて爆発した
……!?……
まだ缶の中に入っているエンジンに火がついたのだ。双子の少女達の体は燃え盛り、死体となって燃え尽きた。
「…誰!」
女が、銃を構える
「うちの妹に手出しするのは、感心できないな」
ナイフを手に持った背の低い影が浮かび上がってきた。
〜Side玲人〜
「おい誰だ!」
倉庫の裏に隠れたはずが、即座に気づかれた。銃をこちらに何発か発砲してくる。
「お前!あっちの奴の仲間か!」
「何のことかな?」
「とぼけても無駄だ!」
男は、胸元から何かの武器を取り出そうとした。しかし、そんな大きな隙…見逃すはずもない。
「Nightmare flame!」
男はネックレスをつけておらず、一瞬で炎に飲まれる。
「お前、まさか…※どぅ×いとか!」
最期に叫んで火の中で体が倒れた。
…今こいつ……俺の名前を呼びかけた?…まさか侵入の計画が漏れてるのか…?
その疑問が確証となったのは、その男の持ち物を見てからだ。
ほとんどの物は焼けてしまっていたが、胸元の攻撃魔石だけは無事だった。男には投げるタイミングがなかったようだが。
攻撃魔石を投げると、その属性の攻撃を一定範囲が散らされると言うことを孤児院での経験で知っていた。
男が、持っていたものは3つ。地属性の魔石、水属性の魔石、そして自然属性の魔石。
……俺達3人の属性…雷、炎、風に対して全て有利な属性だ。
……誰か情報提供者がいる…!
…いつ……誰が……?
………!……確かにあのリエルが裏切った時、リエルが職員が何かのボタンを押していたと言っていた気がする…
……だとしたら……待ち構えられてる可能性が高い。流羽人は囮だから、また大丈夫かもしれないがリエルは…?
嫌な予感を感じて、俺はできる限り職員にバレにくい道で、職員棟の間を通って、美しい花園の中を隠れながら、円形の施設に向かった。
入り口のドアは鍵がかかっておらずすぐに入れたが、内部のホールに入るドアは厳重なロックがかけられていた。
壁に耳を押し当てると、中からわずかに声が聞こえた。
「小汚く生き残っていますね」
「本当に小汚い」
そして、リエルのうめき声。
俺は急いで扉の破壊を試みた。俺はナイフを使って壊そうとするも、俺の小さな体格では壊すことは不可能に等しかった。
…くそ…間に合うかわからないが、ナイフを扉の隙間に差し込み、ロックをかけている金属を何度も叩いた。中の戦闘の音のおかげで、俺はバレることなくたたき続けた。
永遠とも思われる、1ツムが経ち、ようやく鍵の部分が壊れ、いつでもドアを開けられる状態となった。
しかし、聞こえる話からすると、相手は本物の吸血鬼という物らしい。俺が1人で挑んで勝てる確証はほとんどない。
ただ、吸血鬼の絶対的な弱点といえば炎。それはよく神話でも言われている。それを高火力で浴びせればいい。
しかし、俺の炎攻撃は何も燃えるものがない空間では、少なからず爆散する。リエルへの流れ弾が致命傷となり得る。…せめて、何か可燃性のものがあれば………しかし、リュックの中には役立つような物はなく、リエルがどんどん追い詰められていった。
「あなたが無駄に抵抗するからよ。もっと早く死ねばよかった。すぐに死ねば…こんな苦しい思いすることはなかったでしょうに…」
「これはエンジンですよ」
………!
エンジンをリエルにかけるつもりか?……ただ、こっちとしては好都合だ。ガソリンの蓋が開けられる音が鳴った瞬間、俺は扉を開けて、貯めていた炎を一気にそのガソリンの缶目掛けて打ち込んだ。
ガソリンが軽い爆発を起こし、二人の少女は燃えていく。
その後ろの女やリエルにも火の粉が飛び散ったが、炎耐性のある俺がリエルの前に立ち、なんとか直接の被弾を防いだ。
「誰!」
女がこちらに銃を向ける。
「うちの妹に手出しするのは、感心できないな」
もう、リエルは家族同然だ。これ以上家族を失う気はない。
「玲人…兄さん……」
そばで、リエルは意識が朦朧としながら座り込んでいた。
「さぁ第2Rだね…」
ゆっくりとその女に近づいていく
「……あなたが…藤堂玲人ね…」
「さぁね。で、奴隷のいない調教師?に戦闘力があるの?」
女は、その言葉を聞き、奥歯を噛み締めて叫んだ。
「うるさい!死ね!」
女は狂ったように銃を乱射し出した。その弾は炎で落とし、リエルと共に守りきる。
女の拳銃の弾が無くなり、リロードする瞬間。
無防備な女の顔面に炎を叩き込んだ。
「リエル、大丈夫?」
「一応…大丈夫……こっちも治ってきたみたい」
リエルの手や心臓、眼球などは少しづつ傷が修復されていた。
しかし、
「…歩ける?」
「…うーん…ちょっと厳しいかも…」
足は未だに回復が追いついておらず、血だらけのままだった。
「流羽人と合流の危険が上がってしまうからな……」
リエルに背を向けて、おぶった。
「…れ…玲人兄さん…!」
「仕方ないだろ…」
…?……なんかリエルが顔を赤くしていたが、敵地の中なので気に留めなかった。
職員がいないことを確認して、外へとリエルをおぶって走って行く。
ブルースターの出始めた頃、一つ目の戦いを勝利で終え、次の戦いへと動き出す。




