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少年は、全てを捨て復讐者となる。~Another World~   作者: 高瀬利糸
第三部〜ロビンズギルド編〜

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18章〜依頼:リクエスト〜

 仲直りを終えて昼飯にするところだった


 ノック音が部屋に響き、玲人と顔を見合わせ首を傾げる


「リエル」

「何?」

「誰か家に呼んだか」

「?誰も呼んでないよ」


『警戒して開けてくれ…Red bloodの可能性もある』

 玲人が小声で耳打ちする


「探偵事務所はこちらでしょうか?」


 女性の声が扉の外からして……探偵事務所だったことを思い出した




「はい…どうぞ」

 玲人が扉を開けて、部屋の中に招き入れる…

 金髪の30代くらいの女性が入ってきた。身なりもよく、そこそこの階級の家庭だということが一挙動一挙動から伝わってくる


「依頼をしてもよろしいですか?」

「はい、どうぞ…あ、リエル…カメリアを全員分頼む」


 リエルが頷き、キッチンへと入る。カメリアをいいティーカップに注いでいく


「私が、探偵の藤堂玲人と申します。そっちが助手の流羽人とリエルです」

「助手とは聞いてないが?」「私も聞いてない…」

「助手です」

 玲人は無視して言い切る


「私は、ローリー・ベルウィンと申します」


 …ベルウィン…?あの、有名ファッションブランドの……?


「えっと…ベルウィンファッション社の…家系の方…ということですか…?」

 玲人もわずかに動揺している


「はい。社長:ログ・ベルウィンの長女です」

「そんな方が……なんでこんな探偵事務所へ?…ツテがある所の方がいいのでは?」

「それも依頼内容と関係しているんです」


 ローリーさんは、カバンからニ枚の写真と資料を取り出した


「こちらの写真が私の大事にしていたブレスレットなんですが、先日盗まれてしまったんです。そして…恐らく、裏市のオークションにかけられてしまったみたいなんです…」

「それと…僕らへの依頼にはどんな関係が?」

「こちらの資料が…オークションの日程や会です…ここまでは、上流階級から依頼を受けている探偵が完璧にやっているんですが…それ以上はやってくれないんです」

「やってくれない?」

「はい…上流階級側の探偵は、危険を犯そうとはしないので…それで、何件か探偵に依頼したのですが…裏市は危険すぎると断られてしまったんです…ただ、ここの広告に裏仕事等も受けると書いていたので…」


 ………?

 裏仕事も受ける?

 そんなの聞いてない……


 裏市…ラブラが組織的になり、犯罪の温床となっている地域であり、裏組織も関わっているので一般人が近づくには危険すぎる場所だ…


 いくら能力があるとはいえ……


「引き受けましょう」

「待てよ玲人!」「危険な匂いしかしないよ!」


「…引き受けてくださるんですか?」

「ちょっと待っていただけますか」



「玲人どういうことだ…?俺完治してないんだけど…」

「私もまだ風を使いこなせるとは限らないよ…」


「こんな高額依頼受けないはずがないだろ!」

「いや、高額とは限らないからな…」


「それでしたら…リスクに対しては少ないかもしれませんが…このくらいでいかがでしょうか…?」

 札束が差し出された


 三人共、唾を飲み込んだ

「1、2、3………18、19、20……………29…30…」

「「「30Ar!」」」


「可愛い服…もっと買える…?」

「実験用具…!」

「……特にねぇ…」


 …あれ、俺何か欲しいものあったっけ…

 元々の生活でも、基本的に…欲しいものは…


「こちらが前金です…」

「「お引き受けいたします!」」

 玲人とリエルは完全に乗る気だった


「そして…成功報酬なんですが…80Ar程でいかがでしょうか…?」

「………それなら…一つお願いがありまして…」

「はい」

「その…上流階級の探偵への依頼をしていただいていいですか?」

「何についてをですか?」

「最近、この国で組織的殺人が多発していますよね」

 ローリーさんは頷く

「その組織についてです…できる限り詳細を」

「そんなことでいいんですか…?」

「あぁ…あとできれば…この子…リエルの可愛い服をもらってもいいですか」


「はい…本当にいいんですか…?それだけで…」

「はい。では、15ツム後にもう一度来ていただけますか?…僕らが生きてたらご報告はしますので」

「分かりました」


 ローリーさんは、狐につままれたような顔をして帰っていった




「…本当に引き受けるのか…?」

「まぁ報酬もいいし…ここまで正確に調べられているのならね…」


 玲人が見せた資料は、確かに詳細まで情報があり、かなり信用できた

 …確かに…この地域の情報がない今、多少のリスクを冒してでも…やる価値はある…



「とりあえず…オークションは10ツム後…準備は5ツム間しかできない」

「…リエルは、本当に行くのか…?」

「私も行く」

「…危険だよ」


「私は…記憶を取り戻したい……私の格好的には…裏市みたいな劣悪環境で過ごしていたとすれば…記憶を取り戻せるかもしれない……それから…お兄ちゃんたちに助けてもらったんだから…感謝はしっかりと返したい…!」


 リエルの目には、はっきりとした決意が映っていた

 玲人と頷き合う……ここで、止めるのは…彼女の意思を踏み躙ることになる…


「そうか…じゃあ……三人で行こう」


 その日は、捜査に必要な物の追加の買い出しを行った





「リエルの戦闘力を上げようと思う」

「「?」」

 朝食中に玲人が唐突に宣言する


「リエルの…?」

「あぁ…リエルの能力なんだけど…直接的な攻撃力がない…だから、ナイフの扱いは覚えた方がいいと思う」


 確かに考えてみれば…俺と玲人の能力は火や雷による直接的な攻撃ができるが、リエルの物はほとんど自分の身体強化だから…基本的な立ち回りが必要だ


「それに、いつ魔力が枯渇するかわからない…だから、流羽人も俺も基本的な戦闘の練習はしておいた方がいいと思う」


「う…うん…そうだね…」

「リエル…体調悪いのか?」

「い、いやそんなことじゃないから…大丈夫」


 明らかに昨日より疲れている


「実は…ちょっと寝不足で…」

「そうなのか…?」

「うん…だから全然大丈夫…」




「ナイフは…そうそう…基本的には順手で…」


 ナイフの使い方については、孤児院で教わっていた玲人が教える

 試しに何度か振って、感触を確かめる


「確かに…使いやすいかも、今までは思いっきり振り下ろす感じでやってたから」

「逆手だね…確かにそれも正しい持ち方の一つ」



 リエルも同じように振るが………明らかに振るスピードが早すぎる


「…リエル……何か戦闘経験があったのか…?」

「確かに…俺よりもすごく早いな」


 その言葉を聞いた途端、リエルは体を震わせた


「い、いや…なんとなくでやってるけど……何かやったことが…あるのかも…」

「…?リエル…大丈夫か?」

「うん…大丈夫」


 その後もナイフの練習をするが…リエルの振る速度は明らかに落ちていた

 …睡眠不足が続いているのか…?




 昼時に休憩になった



 じゃんけんで負けた俺は、今日も買い出しの担当になる




 玲人の様子が戻ったと思えば、次はリエルの様子が変だ

 …昨日の夜はあんなに調子が良かったのに…夜に何かあったのか…?

 リエルは昨日玲人の部屋で寝てて…


 ……一晩玲人と二人?………

 一瞬脳裏によぎった思考は完全に忘れる



 …昨晩……何か……印刷の音がしていた…?

 買った電子テキスト送信機…?


 …でも、依頼人に教えて連絡する用だったから、ローリーさん以外には教えていない……


「お…魚が安い…」


 〜♪

 ローグウェイが鳴った

 …玲人からだ


「どうした?」

 返事は返ってこず、クラップ音が聞こえる

「・・・・/・」


 再び、スマホを爪で叩く音が聞こえる


 …これは……タッピング暗号…?

 昔、姫咲教授から習った暗号で、よくこれを使って遊んでいた

 最初のクラップ数で行を表し、二回目のクラップ数で段を表す


 だから、これは…四行一段目…「た」


「・・・/・・・」

「・・/・・・・」

「・・・・/・・・・」


 ……す……け………て…?


 …たすけて…?

 助けて…!?


 魚を棚に置き、何も持たずに家に駆け出す



 狭い路地を走り抜け、一目散に戻る



 玲人に何かあった?

 あいつが「助けて」と打つなんてかなりまずい状況のはずだ…

 そしてリエルも…同じく危険なはず…


 さらに、タッピング暗号を使うシチュエーションは限られている…

 声を出してはいけない時…バレないように作戦を伝える時……


 そして、体が自由に動かない時……!




 アパートの階段を駆け上がる

 扉を開け、ナイフを構えた


「玲人!リエル!」




 ……その場で見たものを信じたくはなかった



 縄に縛られて床に転がっている…玲人

 そして、なんとかそれを取り押さえようとしている……



 リエルの姿があった



「リエルっ………」


 昨日の玲人が言っていた言葉が蘇る



 こちらに気づいた玲人が口を動かすが、声が出ず咳き込む

 しかし、玲人は諦めず大きく息を吸う


「流羽人っ…情を捨てろ!」

 そう叫んだ直後、玲人の体が動かなくなった


「玲人っ!」


 …目立った外傷はない……恐らく…睡眠薬の類だろう…

 そして、近くには踏みつけられて、壊れたローグウェイが転がっている


 ……信じたくない…この状況を



 リエルが立ち上がり、ナイフを逆手に持ってこちらを向く

 俺を攻撃しようとしていることは明らかだった



「情を捨てろ」という玲人の言葉が聞こえる


 ただこの状況であっても、俺は武器を向けられなかった



「流羽人お兄ちゃん……武器を持たないなら一撃で決めるよ…」


 いつものリエルからは考えられない、冷たい声が放たれる



「くっそ……」


 リエルは間合いをジリジリと詰め寄る

 ナイフを順手で握り、初撃に備える



 …来る…!

 リエルが変則的なステップでナイフを持って一気に走ってきた

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