第8話 移動3 異能★4 巨蟻
カチリ!脳内に響くクリック音、そして駆け巡る衝撃波。
来た来たー!
ヨルク:ハイヒューマン 17才
異能:空間使い★4 探 結 斬 孔
スキル:刀術 槍術 投擲術 盾術
孔とは、亜空間につながる穴を開く力。
発動すると、現状で最大10メートル四方の真っ黒な板。
5メートル四方の板にすると、同時に4枚まで出せる。
小さな孔なら、100メートル遠方に出すことが可能。
連発できるまでのクールタイムは5秒。
面積とクールタイムは、偶然なのか、現状の斬と同じだ。
一方通行で、光まで入ったキリ出てこないので、黒く見えるのか。
結と同様、時間で消滅することはない。
ただし、結と異なり、出したその場に固定され、一旦開くと移動出来ない。
複数の孔で開く亜空間は、基本的に別々のものだが、つながるように設定すれば共通の亜空間になる。
一度閉じた亜空間は、通常はそれきりだが、指定して再度開くことも出来る。
ただこの辺の自由度は、出力と練度に依存するところが大きい。
亜空間に入ったモノを、出そうと念じることにより選択的に出すことは…練度が上がれば可能になりそう。
防御壁として利用できるほか、出し入れ出来るようになれば保管庫としても使えそうだ。
さて、銀色の巨蟻に対して、孔は有効に使えるのか。
蟻のサイズは、体長1メートル体高20センチ(触角を立てると40センチ程度)、幅は足の位置にも拠るが50センチ程度。
蟻の進路に高さ50センチ幅1メートルの孔を設置する。
蟻は、基本直進するし、臭いを付けているのか、前の蟻に追随して列をなす習性があるようだ。
お、一匹孔の穴に落ちた。おお、続けて後続がどんどん落ちて行くぞ。
別の進路から迫る蟻に向けて、もう一つ別の孔穴を設置。
50×100センチなら、200の孔穴を設置できるから、対蟻では効果抜群。
地中からトンネルを掘り進めて接近しようとする蟻には、トンネルの進行方向に向けて孔穴設置。
トンネルよりも少し大きめに直径1メートルの円形の孔穴にする。
小さいとトンネルの壁に足を引っかけて踏ん張られてしまうからな。
探は地中にも有効なので、死角なし。
孔穴のトラップで、面白いように蟻が釣れる。
ただ、同じ位置で10分も続けていると、さすがにそこには到達できないと理解して、寄って来なくなる。
10分未満で頃合いを見て、俺自身が移動しながら、新たなトラップ場を設定すると、まだまだ釣れる(笑)。
孔による蟻釣りを続けること数時間、初期の頃に釣った蟻がどうなったのか探ってみた。
なんと、亜空間の中を無限に落ち続けながらも存命中だった。
うーん、気持ち悪い…。
蟻釣りを始めてから5時間は経過した。
控えめに見て、1秒に1匹は釣れているので、5時間だと18,000匹か。
いくら蟻でも無限ということは無いだろうから、どこかで限界は来そうなものだが。
今のところ、蟻の数が減少する兆しは見えない。
まさか、瘴気から生まれるから限界はないのか?
おっと、空中から接近する蟻の気配がある。
目視すると、羽蟻だ。
精密探に入ったところで、サイズを確認すると、体長2メートル。地上蟻の倍だな。
羽の先から先までは10メートル。でかい。
単騎なので、斬で対処しよう。まず羽を切る。
くるくる回転しながら落下してくるので、落下先に収容可能な孔穴を設置。収容。終了!
羽蟻が現れたら、今後もこの手法で行けそうだ。
この頃から、地上蟻にも若干の変化が現れる。
羽蟻本体と同程度のサイズの大型蟻が出没し出した。
兵隊蟻だろうな。頭部と顎が巨大で凶悪な感じだ。
蟻酸も、より遠方から射出してくる。
兵隊蟻に対しては、収容可能な大き目の孔穴を設置して釣り込む。
蟻酸の対処は孔穴でも良いが、動かせる分だけ結盾の方が使い易いな。
盾も頻繁に使っているので、いつの間にか盾術というスキル表示を獲得していた。
孔が使えるようになったので、巨蟻への対応は、格段に楽になった。
蟻どもは、数は多いし個々の防御は固いけれど、スピードが無いし知能が低いので、対処そのものは楽。
そして一旦開いた孔穴への対応が遅く、どんどん連続で釣れてくれるので、非常に孔向きの敵だ。
というか、孔を獲得してなければ、とっくに撤退していたな。
探、結、斬、孔、全てを駆使しながら、数はあれども速度が無い巨蟻どもへの対処を続ける。
対処が楽なだけあって、経験の貯まり具合はイマイチだが、それでもこの数だ。
既に器の半分程度貯まっている。いやいや、まだ半分って、魂の器、大きくなり過ぎでしょう。
空間異能各種の出力も練度も向上している。特に孔の練度。
試みに、通常の孔と背中合わせの裏側にもう一つの孔穴を設置し、亜空間を共通にして、表から入った可視光のみを裏側からそのまま出してみると、あら不思議、真っ黒だった孔穴が透明になるじゃありませんか。
孔穴を出す専にして、何を出すか選択できるので、こんな技も使えるようになった。
そうやって、遊び感覚で蟻釣りを続けていると、突然異変を感じた。
ぞわり。何か大きな気配が来る予感。
探には感知なし。通常空間からではない、
亜空間経由だ。
出す専として設置した孔穴の一つから、選択していない何かが出て来た!
小さい。蟻じゃない。何だ?