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04 アラン

宝珠宝玉探索の途中だったな…



-ダミエ山脈 遺跡隠し通路-



4人とマウロは油断無く歩を進めた。

金属製の通路は、彼らが一歩踏み出すたびに床がぼぅっと薄赤く光った。


「一本道だね」


アランは先頭を歩く。


「どこまで続くのかなぁ~~」


マコが相変わらずの口調で、しかし、手には小さな薬瓶を3、4本持っている。


「本当に今のところは危険な気配はないわ…」


キッカはちょっと拍子抜けしたように呟いた。


「…あるものと、ないもの…か」


トーティアムはミーシャの謎のヒントを先ほどからぶつぶつ口の中で繰り返していた。


「わかれへん…」


マウロは彼の肩の上で嘆息する。

4人の足音だけが通路に反響する。

アランがやや疲れたのか、歩調を緩めた。


「どしたの?」


マコが気付いてアランの横に立った。

アランは足を止める。


「床の光の色が……」

「んにゃ?」


足元を見下ろすマコ。


「そういえば、すこ~し色が薄くなったかな?」

「うん…」


小首をかしげつつ、再び歩き出したアランの足元の床が…


「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」

「アラン!!」


咄嗟にトーティアムが走る。


「床が!!」


あるはずの床がその一角だけぽっかり消え、暗い口を開いていた。

ためらいを瞬時もみせず、彼はアランの落ちた穴へ飛び込んだ。


「まってぇ~」

「ちょっと!」


マコとキッカが続こうとすると、床が淡く赤く光っていた……



-遺跡隠し通路 第二層-



「いつっ!」


左の太ももに激痛を覚え目を覚ました。


「動かないほうがいい」


耳元でトーティアムの声が、彼女の動きを制した。


「応急の手当てはしてある。もう少し様子をみよう」

「うん」


手探りで患部を触ると、太ももまであるタイツが膝まで下ろされて応急用の絆創膏が貼ってあった。


「あ……」


トーティアムに手当てされている気絶している自分…


『愛している…』


管制室での彼の声が耳の奥でよみがえる…


(な、なによ!)


身体が、顔が火照るのがわかってあわてた。


「どうした?」


彼の声で、周囲が鼻をつままれてもわからないほどの闇であることを知る。


「な、なんでもないよ」


とりつくろう言葉が小さく震えた。


「痛むか?」


彼が勘違いしてくれたのをいいことに、彼女はあかんべをして、


「痛い…痛いよ!」


と彼の手を捜してすがりついた。



しばらくそうしていると、本当に痛みが薄れてきた。


「もう、大丈夫…と思う…」


自分のしたことに気恥ずかしさを覚え、そういうと彼女はそっぽをむいた。

ごそごそと彼の動きを感じる。


ぽぅ


っと淡い青い光が灯った。

緊急用の小型探査灯だった。


「アラン、歩けそうか?」


彼の顔が間近にあった。


「う、うん。たぶん…」


立ち上がってみる。


「ちょっと違和感あるけど…歩けそうよ」

「おっけ~」


彼も立ち上がる。

探査灯で自分達が今いる場所がほんのりと確認できた。


「あ、あそこ…」

「ああ」


2人はアーチ型の出入り口を同時に見つけた。

トーティアムはアランを常に視界の隅に気遣いつつ、ゆっくりと前進した。

探査灯の光が照らし出す通路は、やはり金属製の床と壁が続いていた。


「マコっちゃんたち、大丈夫かな…?」

「そう信じるしかないな」


彼はそう言って、少し左足を引きずるように歩くアランの手をとった。


(わ!)


アランの動揺を気付いているのかいないのか、彼は手を握ったままゆっくりと歩を重ねた。



-遺跡隠し通路 第二層-


「参ったな」


トーティアムとアランは広い円形ドーム状の広間に立っていた。

周囲に巨大な盛り土がしてあり、そこからひとひとりが抱えられる程の金属の筒が突き出ている。

入口に近い順に筒先から炎が吹き上がった。

そして一番奥に舞台の様に一段高い場所があり、彫像が炎の環の中で威嚇するように鋭い視線で彼らを射抜いていた。


「あれって…」


アランが両手に赤華剣を構える。


「イフリアン…炎の獣神だな」


下半身が獣の剛毛で覆われ逞しく発達しており、上半身は明らかに人のもの。

頭は前方へ歪曲して突き出している角を2本持つ、鼻面の長い獣だった。


「てことは?」

「俺の召還獣にできる…」


霊的銃の銃身を太いものに換え、油断無く広間の中央まで進み出た。



ぐむぉぉぉぉぉ!!!!



くぐもった鈍い吼え声。

彫像が彫像でなくなり、炎の環からトーティアムとアランへ向かって地響き立てて歩き出す。


「このままじゃ無理だ!援護頼む!」

「はいっ!!」


アランが剣を頭上で交差させる。


「宝水剣っ!!」


彼女の剣刃が青白く澄んだ色に染まる。

跳躍し、イフリアンへ交差させていた両手の剣を左右へ開いた。

剣刃から膨大な水流があふれだし、それは鋭利な刃になって灼熱のイフリアンの皮膚を削ぎ切った。

前進する巨獣神の足が止まり、刃傷からどろりとした溶岩の体液が地へ滴った。


「見事っ!!」


トーティアムが賞賛の声を上げ、着地したアランが彼ににこっと笑う。

彼の手の霊笛銃から霊気の塊が射出される。

アランは剣を逆手に右手を顔の前に、左手を背に隠す。


「極氷剣……」


ぽつりと呟くと彼女は肩膝を着いて左の剣を前方へ、右の剣をくるりと持ち替えイフリアンめがけて突き出した。

剣先からきらきらと尾を引いて、白いものが一直線にイフリアンへ襲い掛かった。

氷の槍が炎を突きぬけ、またもイフリアンを痛みに誘った。

彼女の背後に立ったトーティアムが、彼女の肩に手を置いた。


「ありがとう」


彼女は頭上から優しい声に包まれた。


「炎を司る聖なる者、イフリアンよ。我が命に従い、我と伴にあれ!」


霊笛銃から弾丸が発射され、霊気の尾がイフリアンを縛り上げる。


「我と伴にあれっ!」


彼の命に応える様に、イフリアンが叫び声をあげる。

そのまま霊気の尾に縛られた半獣神が霊笛銃に吸い込まれた。




【続】


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