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02 青の世界の住人 弓術士ホタル

ふたりは橙世界にあったシェルターに閉じ込められた……


壮大な規模の円筒形の吹き抜け…天井も最下層の床もまったく見えない。

トーティアムとホタルが乗って来た球形のエレベーターは、各層のにある発着ステップのひとつに停止していた。


「凄いな…」

「うん……」


息を飲む2人。

壁面には通路がぐるりと各層ごとに取り付けられていた。


「各層を行き来する手段はこのエレベーターしかないのかもしれないな…」


通路を歩きながら、壁面に出入口がないかを確認していた。


「お、扉だ」


彼が扉横の点滅するボタンを押すと、難なく扉が左右に割れた。


「中に入ってみよう」

「は~い」


足を踏み入れると自動的に灯りが点灯し、2人は一瞬目が眩んだ。


「痛っ!!」


トーティアムが肩を押さえた。


「トーティ!!」

「構うなっ!気をつけろっ!!来るぞ!」


彼女は弓を回転させて飛来するものを次々はね返した。

傷ついた彼を庇い、ホタルは果敢に前に出た。

正面の壁に銃眼があり、そこから短い光の矢が射出されている。

トーティアムが霊笛銃を短銃身に換装し、銃眼に照準を定めてひとつずつこれを潰して行く。

その間に彼は更にいくつかの浅い傷を受けていた。



攻撃が沈黙した。



「ホタル、大丈夫か?」

「それはこっちの台詞だしぃ」

「まぁ、な」


数十箇所の浅い傷。初撃で喰らった肩は貫通していた。


「油断するなよ」

「うん」


自分で手当てしている彼を尻目に、ホタルはじわりと前進する。


「下がれ!!」


彼の絶叫に彼女はびくりと身を退いた。

天井から光のカーテンが落ちてきた。

彼女の矢壷から落ちた矢がすっぱりと分断されていた。


「こりゃたまらん罠だな」


背後の扉は固く閉ざされている。


「出口…なくなっちゃったよ…」


ホタルの声に怯えが混じる。

痛みによるうめきが彼から漏れる。

傷の手当てを彼女が代わる。


「酷い……」


かすり傷と思っていたものも、傷口は擦過傷になっており意外に鋭利にすっぱりと切れている。


「こういう傷が一番痛いな」


強がる彼にホタルは苦笑する。


「全部手当てしてたら、きりがない。その辺でいいぞ」

「ダメ!」


座り込んだ彼に、四つんばいになって彼女はにじり寄った。


「お、おい…」


彼女は小さな傷をひとつずつぺろぺろと舐め始めた。

青世界の半獣人の唾液はひとのそれよりも殺菌効果が高い。

腕、腿、横腹……

顔に出来た細かな傷もぺろぺろとひとつ残らず舐めてゆく。


(痛みが和らいできた…)


彼は天井を瞳だけ動かして見る。

細いスリットがそこに穿たれている。

その奥にキラリと何かが光を反射している。


(なるほど…)


「どう?」

「ありがとう。痛みが引いたよ」

「よかった」


胸の前で細い指を組み合わせて、にっこりと安堵の笑みを見せるホタル。

笑顔でうなずくトーティアム。


「さて…」


彼はひとつの弾丸を床に置く。


「我が使役する契約者セレン、我の求めに応じて現れよ…」


水の召還獣セレンが現れた。

彼の指差した天井のスリットの下にセレンが進む。

光のカーテンがセレンを切断すべく落ちてきた…が、水の精霊のセレンは全く意に介さずその場に立っていた。

ふわりとセレンの両手の人差し指が天井へむけられる。



パパパパパパパッ!!!



セレンの指先から噴出した水流の針が、スリット内に仕込まれたカーテンの発射レンズを一気に粉砕した。


「セレン、感謝」


彼がそういうとセレンは弾丸へ微笑みを残して吸い込まれた。

正面の壁、銃眼のあった場所がせり上がり口を開いた。

その奥に続く通路の床が点灯している。


「前進できそうだね?」

「歩ける?」

「お陰で自分で手当てしたとこより、ホタルに舐めてもらったところのほうが痛みが少ないよ」

「よかった♪」


それでもホタルは彼の手を取って立たせ、肩を貸す仕草をした。


「ありがたいが…」

「あっ、そうだね。いきなりに対応できないね」

「そう言う事だね」


2人は部屋を後にした。


「さて、鬼が出るか蛇が出るか……」

「どっちも嫌だなぁ…」


左肩の貫通創がズキズキと脈打っていた。

通路の先行きには、明らかに何かが群れていた…



【続】

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