表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/8

約束の日に僕は

前話の男の子視点です!!


 約束の日の、前夜のこと。

 僕は、彼女にどう言って着いて来て貰おうかと、頭を悩ませていた。

 今も、昔も。

 僕の隣には彼女が居て、それは、未来も同じが良くて。

 それは、あまりに身勝手な思いだけど、僕の本音で。

 彼女に断られたら、と思うと、どうにも心苦しくて。

 そんな気持ちを紛らすために本を読んでいると、気疲れからか、ぐっすりとした眠りに、僕はついていた。

 

 いつもの合図で起床すると、窓を開け、顔を覗かせる。

 その時、昨夜は彼女で頭が一杯だったからか、その存在に僕の鼓動は高まり、より、近い距離で感じたくなった。

 彼女に顔を近づけると、彼女の可愛さに、僕の鼓動は高鳴っていく。

 そんな、ドキドキしている僕に、彼女が可愛い声で、可愛い仕草で驚くものだから、僕の心臓は、八切れんばかりの速さで、更に鼓動を打つ。

 ほんの数秒の間、彼女と見つめ合っていると、彼女は話したいことがあると言い、二人の思い出が詰まっている砂浜の方へと、走り去って行った。

 

(話したいことって、あのことだよね……。来てくれると嬉しいなぁ。離れたくないなぁ……)

 

 僕はある花を持つと、覚悟を決め、涼しい潮風に背を押されながら、ゆっくりと、彼女の待つ所へと向かった。

 彼女の所に着くと、僕は彼女の肩に、手を置いた。

 本当はいつもみたく、後ろから抱きつきたかったけど、今は真面目に、真摯に接しなくてはならない。

 これは僕たちの、未来に関わることだから。

 甘ったれた接し方では、駄目なのだ。

 と、そんなことを思ったからこそ、僕は後悔をした。

 僕の方を向いた、小さくて可愛らしい筈の、彼女の顔が曇っていたのだから。

 綺麗だった瞳からは、光が消え、闇が侵食していた。

 悲しそうな彼女は見たくない。

 楽しそうに、あの頃みたく笑ってて欲しい。

 この海辺の砂浜に、僕を初めて連れ出して笑った、あの頃のように。

 だから、僕は呟く。

 どうしようもなく身勝手に、海で遊んでいたあの頃の思い出を蘇らせて。


「海はいいよなぁ……」

 

 その言葉を聴いた彼女は俯く。


「わたしは、こわいわ……」


 そう言った彼女は、まるで、あの頃のようだった。

 だからかな。

 一瞬だけ、ほんの一瞬だけ、ついさっきの事を忘れ、昔に戻ったかの様な無邪気さで、言葉を交わした。

 が、僕は、そこでも後悔した。

 僕が海の何が怖いのかを聞くと、彼女は泣きじゃくりながら、僕と離れるのがこわいと言う。

 僕の隣に、居たいのだと言う。

 僕はそれが、どうしようもなく、嬉しかった。

 でもそれと同じ位に、自分が馬鹿で、愚かだと思った。

 だからこそ、不安そうに震えている彼女を、自分の胸に抱き寄せて、その頭を撫でた。

 

 それからの僕は冷静に、感情的な言葉を彼女と交わす。

 そこには、嘘偽りの無い、本心だけが交り合っていた。

 彼女の言葉を受け止める度に、楽観的だった自分が、彼女の心の蟠りを察することの出来なかった、愚かな自分が許せなくなった。

 でも、だからこそ。

 これからの彼女には、悲しい思いをさせてしまった、三年間を忘れられる様な、そんな人生を歩んで欲しい。

 でも、そこに。

 出来ればで良い、悲しい思いをさせてしまった僕を、彼女が許してくれるのなら。

 ──僕が彼女の隣に立って、幸せにしたい。

 ──幸せだって一緒に笑える未来を、築いていきたい。

 それは、どうしようもない僕の我儘だけれど。

 それが、僕の本心だから。

 

 そんなどうしようもなく我儘な僕に、彼女は色んな気持ちを吐き出してくれた。

 

 自分は、ただ明るいだけじゃなくて、不安になったら、悲観的なことを考えてしまうこと。

(僕のことで悩んでくれるなんて、男冥利に尽きるよ)

 

 僕が好きだということ。

(僕も好きだよ)

 

 僕にふさわしくないと、思っていること。

(君以上に素敵な女性はいないよ)

 

 でも、これだけは言わせない。

 僕の隣には居られない、なんてのは。

 だから僕は、彼女の言葉を遮った。

 僕の言葉で、塗り替えようとした。

 でも僕は、ここでもまた、間違えてしまった。

 ──彼女の瞳からは、光と涙が失われていたのだから。

 ──涙で濡れていた筈の瞳が渇き、闇で包まれていたのだから。

 自分の間違えに気づいた瞬間、意識を繋ぎ止めていた糸がプツンと解け、自制が効かなくなった。

 

『………!?』

 

 僕の意識が覚醒した時。

 彼女の目が、鼻が、耳が、頬が、髪が、抱き合っていた頃よりも、近くに在った。

 そして、僕の唇には、人生で経験したことの無い、柔くて温かな感触が、あったのだ。

 僕はそこで、初めて気づいた。

 僕が初めてのキスを、彼女としていることを。


「う、うわぁあっ!!」

 

 気づいた瞬間、僕は羞恥心に駆られ、声を荒げながら、大きく後ろに退く。

 今までの人生で経験したことが無いくらい、僕の顔が紅くなっていて、胸の鼓動は、波の音を掻き消す程に、大きく鳴っていた。

 でも、それ以上に。

 顔を紅くしながら涙を流すも、今までの人生の中で、一番の笑顔で僕に微笑む君が、とても、綺麗だった。


ご精読くださりありがとうございます。感想、評価、ブクマ、拡散の程をお願いします!!(* ˊ꒳ˋ*)


これがXアカウントです!

https://x.com/GUMI_ubu



【毎日投稿中】


『神とゲームと青春を!』

https://ncode.syosetu.com/n3915ji/



【高評価短編】


『いつも二人で』

https://ncode.syosetu.com/n3372is/


『恋文』

https://ncode.syosetu.com/n0200jn/



『ハネ』と『弱虫勇者』は

ランキング1位獲得作品です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ