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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

【異世界派遣妹】父と母、義妹にざまぁをした令嬢、知らないで良い事実を知ってしまう話

作者: 山田 勝

「お義姉さまぁ、ズルい。私に跡取りの座を譲ってぇ~」


 甘ったるい声を出して媚びている悪魔、奴は嵐の日にやってきた。

 親戚の子らしい。


 お父様とお母様も、


「そうだ。うん。それがいい」

「ええ、そうね。社交をしなければならないわね。エミーリアは苦手よね」

「代わりに、是非、エミーリアに来て欲しいという職場があるから紹介しよう」



 いつだってそうだ。ドレスやネックレス、最後のプライドまで奪う。

 でも、本だけは欲しがらなかったのは褒めてあげる。

 たとえ頭が空っぽで本に興味がなかったとしてもね。



「お父様、お母様、申し遅れました。私と婚約をしたいと言ってくれる殿方がおりますの」



 今日、大事な話があるからと言われていたので、彼にはあらかじめ話しておいた。

 多分、こういう事であろうと。



 パカパカパカ~


 馬車の音が聞こえる。

 すると、お父様とお母様、義妹のリリアは顔を青ざめる。


「王家の紋章!」

「王家の馬車」


 先触れ無しでも、王族は訪問できる。

 彼とは、図書館で知り合った。




「あ、ごめんなさい」

「いえ、先にどうぞ」


 偶然、同じ本を手に取った。

 彼は、学園で見たことがある。

 第四王子殿下の、


「グリエールと申します」

「第四王子殿下!失礼しました」

「いえ、ここは図書館です。儀礼は無用ですよ」


 それから、話をするようになった。

 主に詩の話だ。


「外で話しましょう」

「ええ、そうですね」


 喫茶店で詩の話をするようになった。これって、デート?かしら。


「フフフフ、まあ、ロマン派の詩をご自分で書かれているのですね」

「ええ、下手な横好きですが」


 そのうち。

 家庭の状況を話すようになった。

 私は総領娘、なのに、脅かされている。

 使用人達からも無視される。


 伯爵家なのに婚約者もつかない。それは仕方ない。私が断っている。

 どの殿方も、俗物で嫌になる。金や領地経営の話ばかりだ。



「一緒に、孤児院へ慰問に行きませんか?孤児達に詩の朗読を聞かせます」

「え、それは、婚約者と行かれるべきではないですか?」

「それが・・・中々、婚約者が見つからなくて・・・」

「まあ、それは私もですわ」



 ・・・・・



「私は、王宮の文芸局の局長になる予定です。ええ、望んでいます」

「まあ、素晴らしいですわ」

「その、これを受け取って下さい!」

「指輪・・・」


 しかし、義妹のリリアは、フワフワの薄い金髪に紺色の瞳、一目で殿方を魅了する。

 義妹と会って、心変わりをしないだろうか?



「いえ、私は女性を体型や美しい醜いで判断しません。心です」


 試しに、義妹を見てもらったが、


「・・・俗物だ。いや、失礼」


 この殿方は信用できる。

 指輪を頂いたわ。




 ・・・・・・・



「殿下!ようこそおいで下さいました」


「フム、たった今、エミーリアは廃嫡になったのだな」

「いえ、図書館に職についてもらおうと思ってました」

「同じ事だ。エミーリア嬢をもらい受ける。当家とは全く関係のない令嬢だから文句をいえまい」


 フフフ、リリアは下を向いて涙をこらえている。震えているわ。


 お母様はオドオドしているわ。


「殿下、お考え直し下さい。娘の事を全てご存じの上で婚約を申し込んだのですか?」



「そうだ。心根の美しい女性だ。そこの俗物とは大違いだ」


 そして、私は、日用品だけを取り。

 家を出た。




 ・・・・・・・





「プププ~~~~もお、ダメ~~~~、ゲラゲラゲラ~!」


「リリア殿、やめないか。私達の娘だ」


「だって、だって、デブ、失礼、ふくよかな高等遊民にーととあの王子だもの~!夜どーすんのよ」


「リリア嬢、はい、成功報酬ですわ」


「有難うございます。またのご利用がないことをお祈りします」




 ・・・・・・・


 ☆数年後


 あれから、私達は王宮に住み。仕事を始めたはずだった。



「また、私は佳作?殿下は文芸局の局長ではないのですか?」


「いや、局長補佐だ。王宮が仕事場だ」


 王宮で一日中、詩を作っている。



 時々、詩人ギルドの方々が来る。


「殿下、今年の詩集の賞候補です。確認とサインをお願いします」

「はい、サインしたよ。私の詩もあるから持っていってくれないか?」

「分かりました」

「ところで、この前の応募作、どこが悪かったか言ってくれないか?」

「全部でございます」



 サインをして終わり。選考に関わっていない。


 私はいるだけ。



 ドン!ガタン!


 また、椅子が壊れた。


 メイドたちは意地悪を言う。


「エミーリア様にはソファーに腰掛けて頂きます」

「それじゃ、集中できないわ」

 ペコと頭をさげてそのまま退出した。


 実家と同じじゃない。



 ☆回想



「何?タライ!馬鹿にしているの?これは洗濯用じゃない!」


「ですが、お嬢様に会う浴槽はございません」



 ・・・・・


 私は少しプラスサイズよ。


 そうよ。実家はどうなっているかしら。あの頭の悪い義妹が継いだ家だわ。

 没落をしているに決まっているわ。




「馬車を出しなさい!慰問に行くわ」

「殿下は?」

「仕事中です」



 ・・・・・



 孤児院を慰問した後に実家によろう。



「皆様、私が作った詩を朗読しますわ」


「「「「・・・・・・・・」」」」



「皆様、拍手を、拍手をして下さい」


 パチ・・・パチ・・・パチ・・・パチ



 まあ、これは深く考える詩だわ。シスターには、釘を刺しておこう。


「ねえ。子供の感受性が大事なの。感動を強要してはいけないわ」


「はい、肝に銘じます」



 そして、実家に寄った。いえ、凱旋よ。



「王子妃殿下が参りました!」



「これは、王子妃殿下、ようこそ当家へ。子息のデービットと申します」

「婚約者のフローラです」



「貴方たち、誰!」


全く知らない人がいる。



「エミーリアよ。何故、帰って来た」

「お父様!」



 話を聞くと、私がいなくなった後、リリアとは離縁して、寄子から婚約者ごと令息を養子に迎えた?

 そんな。では、この家の血統は?



「ほお、お前から血統の話を出るとは、ワシの父上、お前のお爺様も寄子からの養子だ」



「何故・・・」


「それは、優秀な血を入れるためだ。お前には無理だ。好きな詩を作ってくらせる日々を送れるように算段したつもりだが、あの学園退学の第四王子と結婚をするとはな」



「そんな話は聞いていないわ。病気療養なので王宮で講義を受けたと聞いた」


「そうだ。そうなっているか。なら、その通りだろう」



「じゃあ、リリアは?何故、私を苦しめたの?」


「察しろ、出て行きたくなるように仕向けたのだ。おねだりもな。部屋から一歩も出なかったお前が図書館に行くようになったではないか?

 娘の幸せを願っていたのは本当だ」



「嘘!」



「王子妃殿下!」



「はあ、はあ、はあ、はあ」


 私は逃げた。

 現実が足元から崩れるような感覚に陥った。



「ええい。メイドの方々!お願い申し上げます」


「「「はい」」」


「「「キャアアーーーー」」」

「すごい力だわ」

「体重100キロはありますもの」

「すまない。男子が触れることは出来ないのだ」




「はあ、はあ、はあ、リリア!」


 私は見つけた。オープンカフェの野外席だ。また、誰かになりすまして騙しているのね。



「ワーイ。有難うお爺様、お祖母様!」

「フフフフ、ソフィ、そろそろ夜会に連れて行こうか」

「まあ、お祖父さん。まずはお茶会ですわ」



「あんた。今度は、ソフィという名になりすましているのね!」


「ギャアア、何をするの!」


 腕を逆方向にねじられた。


「お祖父様、お祖母様、躾の悪いメイドが追いかけてきたの。少し、席を外させて下さい」


「ああ」

「何て言うことをせっかくの時間が」

「ごめんなさい。少し、延長を、いえ、お父様に言うわ。おくれても大丈夫よ」



 ・・・・



 パチン!


 路地裏に連れて行かれてビンタをされた。


「あの~聞いています?あの老婦人はお孫さんを流行病で亡くされて、せめて誕生日を祝いたいとの依頼だい」



「ヒィ、貴方は・・・」


「派遣妹でーす。名前は教えられませーん」


 派遣妹・・・・


「そんな仕事、人の心の隙間に入り込んで、まるで寄生虫ね」


「フン、人の心を動かせない詩を書いて暮らしているアンタの方がよっぽど、寄生しているさ。あんたよりは幾分マシさね。長女だけで家を継げるほど甘くはないのさ」



「お~い。ソフィ。大丈夫かい?」

「ソフィちゃーん」



「は~い。何か人違いみたいで、ごめんなさい」


「大丈夫かい」

「フフフ、ケーキ、もう一個食べたい」



 リリアは去った。振り向きもせずに・・・・



 その後、メイド達に捕まった。

 馬車に押し込まれ。


「いいですか?貴方が逃げると周りは困るのです」


 執事に説教された。




 ☆☆☆数年後



 子供が生まれた。相変わらず状況は変わらない。

 私の詩もやっと佳作に入るくらいだ。


「エミーリア、この表現はどうかな。『ああ、昼食を昼に食べるべきか頭痛が痛くなる幸せ』どうかな」


「・・・・・」


「エミーリア?!」


「お~ヨシヨシ、この子は、お父様みたいになってはいけないわ。幼児教育を始めるわ」


「エミーリア!」


 後にエミーリアは教育ママになった。


 媚びへつらいをして暮らしているように見える宮廷伯も、機に乗ろうとする商人たちも、皆、生きるためにやっている。

 気がついたのは幸せだったのか。

 それは本人も分からない。




最後までお読み頂き有難うございました。

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― 新着の感想 ―
[一言] 気づくことなく自分の世界で暮らしてるのが王子様で、自分のいる場所が誰に支えられてるか気づいたのが主人公なのかも。 派遣妹も良く言えば図太いタイプで、依頼主以外配慮が無い感じの要領よく生きてる…
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