25.夕食会2
四人とも席につき、ご馳走の並んだ食卓で食前の祈りをささげる。
「さあ、召し上がれ。このスープはうちの料理人の得意料理なの」
お義母様はそう言うとスープを飲み始めた。
私も目の前のスープを一口飲んで、パンをちぎり口に運んだ。肉と野菜の入ったクリームスープは優しい味で、とても美味しい。
ブラッド様はソースのかかった薄切り肉をフォークにさして食べている。
「お口に合うかしら?」
お義母様が私に言った。私は笑顔で答える。
「とても美味しいです」
「ところで、仕事は順調か?」
お義父様がブラッド様に尋ねた。
「はい。皆の手助けもあり、問題ありません」
「そうか」
その後は四人とも無言で料理を食べていた。
お義母様は時々様子をうかがうように私のことを見ていた。
食卓が沈黙でおおわれる。
お義母さまが思いついたように軽く両手を叩いて言った。
「ねえ、ローラ? ブラッドとは仲良くやっている?」
「はい、お義母様。ブラッドはとても優しいし、頼りになります」
私がはにかんで微笑むと、お義母様は満足そうに口角を上げる。
お義母様は意味深げに頷いて、もう一度言った。
「そう。それで、ちゃんと仲良くしてるのね?」
「はい?」
「じゃあ、孫の顔が見られる日も近いってことね?」
「!!」
私は魚のパイをのどに詰まらせそうになった。
「母上、その件は私たちにまかせておいていただけませんか?」
ブラッド様が口元をナプキンで拭いながら、右眉を上げてお義母様をじろりと見た。
「まあ、ブラッド。大切な話よ? ちゃんと後継ぎがいないと困るでしょう?」
「ですが、母上。望めば手に入るというものでもないでしょう?」
「頑張りなさい」
私は食べ物を吹き出しそうになるのをこらえた。顔が熱くなる。
横目でブラッド様を見ると、ブラッド様は憮然とした表情で食事を口に運んでいる。
お義父様が見かねてお義母様に言った。
「お前、気持ちはわかるがもう少し場所を考えなさい」
「あら? 別に悪いことを言ったわけじゃないでしょう?」
お義母様はきょとんとした顔でお義父様を見つめている。
「ローラが困っているだろう?」
お義父さまがやれやれ、という口調でお義母様をたしなめた。
「あらまあ、ローラったら真っ赤になって……。ごめんなさいね」
お義母様はいたずらっぽく笑った。私は口角だけ上げて、無理やり笑って言った。
「良いお知らせが出来ることを祈っています」
食事を終えると、私とブラッドは部屋に戻った。
私が寝間着に着替えてベッドに腰かけると、ブラッド様が隣に座った。緊張が走る。
「気まずい思いをさせて悪かった。母上も悪気はないのだが……」
「……気にしていないわ、ブラッド」
ブラッド様が私の頬にキスをしようと顔を寄せた時、私は思わず身を引いてしまった。
「ローラ?」
ブラッド様が悲しそうな目で私を見た。
「いえ、あの……ごめんなさい」
「……私は別の部屋で寝ようか?」
ブラッド様が立ち上がった。
「いいえ! 大丈夫です。一緒に寝ましょう!」
私は微笑んだが、頬がひくつくのを感じていた。
「ローラ……。ちょっと待っていてくれ。何か飲み物を持ってきてもらおう」
ブラッド様は呼び鈴を鳴らして召使を呼び、お酒とホットミルクを持ってくるよう頼んでくれた。
「何か飲んで、落ち着いたらゆっくり寝ると良い」
「ありがとう、ブラッド」
私がブラッドの手を握ると、ブラッド様は優しく微笑んだ。




