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18.呼び出し

 水曜日の昼下がり。ブラッド様と私は中庭でのんびりとお茶を飲んで過ごしていた。


「ブラッド様、お客様がいらっしゃいました」

 ブラッド様はいらだったように方眉を上げ、ため息をついた。

「ローラと過ごす時間より大切なものは無いと思うのだが?」

「騎士団のモーリス様がお急ぎのご用事とのことです」

「……仕方ない、今行く」

「それが……」

 ハロルドの後ろから、柔らかい印象の見目麗しい青年がひょいと顔を出した。育ちのよさそうな品の良い、それでいて親し気な笑みを浮かべてブラッド様に歩み寄る。


「ブラッド様! いらっしゃってよかった! あ、その美人さんが奥様ですか? はじめまして、騎士団第二小隊長のモーリスと申します」

 人懐こい笑顔でモーリスさんは私に右手を差し出した。ブラッド様が間髪を入れずその手を払いのける。


「わ、ひどいなあ。結婚式に誰もよんでくれないし、薄情ですよ、ブラッド様?」

 モーリスさんは払われた手をさすりながら、にこにこと笑っている。ブラッド様にこんな風に扱われることに慣れているのかしら?

「貴様、ローラに汚い手を伸ばすとはいい度胸だな? 今日を命日にしてやろうか?」

 剣を抜こうとするブラッドの手を私は慌てて抑えた。

「ブラッド!」


 私はブラッド様とモーリスさんの間に入り、モーリスさんに声をかけた。

「初めまして、モーリス様。ブラッドに何かお急ぎのご用件ではないのですか?」

「あ、そうそう。緊急事態なんですよ、ブラッド様」


 呑気な人だ、と私は内心あきれた。


「実は近くの町にむかう街道で、商人が盗賊団に襲われたようなんです。見回りをしていた兵士が城に助けを求めてきました」

「盗賊団? 隣町で最近被害が増えているという話は聞いていたが……」


 ブラッド様は厳しい顔をしてモーリスさんを見つめている。

「騎士団はもう盗賊団の討伐に向かったのか?」

「今、盗賊団が根城にしていると思われる洞窟に向かって第二小隊と第三小隊が向かっています。副騎士団長は城の警備にあたっているので、ブラッド様を呼びに来たんです」

「分かった、すぐに行こう」


 ブラッド様は私の頬を指でなぞると、寂しそうな表情を一瞬浮かべた。

「すぐに片を付けて戻ってくる」

 私がブラッド様に「気を付けて」と言うと、ブラッド様は微笑んで「大丈夫だ」と私の耳元でささやいた。


「さあ、ブラッド様、行きましょう!」

「分かった。モーリス、盗賊団の討伐が終わったら次は貴様の始末をつける。ローラを不埒な目で見た罪は重い」


「やだなあ、綺麗な女性に目が行くのは自然なことじゃないですか?」

「貴様の視線でローラが汚れる」

「ひどいなあ、ブラッド様」


 モーリスさんは面白がっているような口調だった。ブラッド様は舌打ちをして、馬番の連れてきた馬にまたがった。

「仕事に向かうぞ、モーリス」


 キリリとした表情でモーリスさんとブラッド様は屋敷を後にした。

「盗賊団なんて……」

 私は不安な気持ちでブラッド様を見送った。


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