15.ジンジャークッキー
数日後、ブラッド様がベック公爵夫人の処遇を教えてくれた。ベック公爵夫人は王宮の牢に入れられた後、死刑の話も出たが、結局は国外追放となったそうだ。
「そうですか。これで一安心ですね。ブラッド様」
「ああ。そうだな。刑が軽すぎる気もするが。君の命を狙ったのだから、極刑に値すると思うのだが。ベック公爵も夫人も、こんなことをする人間だとは思っていなかった。私は人を見る目が無いのだな」
そう言ったブラッド様は、最近落ち込んでいる様子で笑顔も少ない。
「それでは、行ってくる」
暗い面持ちで王宮に向かうブラッド様を送り出し、私はため息をつく。
ブラッド様を元気づけるにはどうすればいいか、私は一人で考えていた。
「そうだ! ブラッド様の好きなものを作って食べてもらいましょう! きっと少しは気分が変わるわ!」
私はハロルドにブラッド様の好物をたずねた。
「ブラッド様の好物ですか? ……ご幼少のころはジンジャークッキーがお好きでしたが……」
「ジンジャークッキーね! それなら私も作れるわ!」
「ですが……」
私はハロルドの言葉を最後まで聞かず、メイドに言って台所を使わせてもらうことにした。
「それにしても、可愛らしいものが好きなのね、ブラッド様は。意外だわ」
私は焼きあがった人型のジンジャークッキーに、アイシングで可愛く笑った顔を描いた。
「今から王宮に行けば、ブラッド様の休憩時間には間に合うわね」
出来立てのジンジャークッキーを持って、私は下僕に馬の用意をさせた。
馬に乗り、王宮を目指す。
「ブラッド様、喜んでくださるかしら」
私はうきうきとした気持ちで馬を走らせた。




