13.外出
「すこし派手かしら?」
私は濃い桃色のドレスを身にまとい、鏡に向かった。
「水色のドレスのほうが良いかしら?」
ブラッド様が返ってくるまで、あと二時間はある。
私は持っているドレスを片っ端から体に当てて、どれが一番似合うか頭を悩ませていた。
ブラッド様と並んで歩くのなら、すこしでも魅力的に見せたい。
「このドレスにしましょう」
私はレモン色のドレスを着て出かけることに決めた。
「おかえりなさいませ、ブラッド様」
「ただいま、ハロルド」
玄関の方でブラッド様の声がした。
「おかえりなさい、ブラッド」
「ただいま、ローラ」
ブラッド様は外套を脱いだ。いつもながら騎士団の制服がとてもよく似合っている。
「昼食は食べたか?」
「いいえ。たまには一緒に外で食べるのも素敵だと思って」
「そうか。着替えてくる。少し待っていてくれ」
ブラッド様はハロルドを連れて自室に戻って行った。
しばらくすると、ブラッド様は黒のフロックコートを着て現れた。
「ローラ」
「はい?」
ブラッド様は赤いバラを一輪とりだし、私の胸元に飾った。
「まあ、素敵」
「君の美しさにはかなわないが」
私が頬を染めると、ブラッド様は満足そうに頷いた。
「さあ、出かけようか。どこに行きたいんだ? ローラ」
「まずは、食事をしてから、お菓子屋さんに行きたいです」
「分かった。ハロルド、馬車の準備はできているか?」
「はい。いつでも出発できるかと思います」
「それでは行こう」
ブラッド様は私の手を取り、馬車に向かって歩いて行った。
馬車は町に入ると、一軒のレストランの前で止まった。
ブラッド様が先に馬車を降りる。
「さあ、気を付けて」
「ありがとうございます、ブラッド様」
私はブラッド様から差し出された手を取り、馬車を降りた。
ブラッド様とレストランに入ると、奥から立派な紳士が現れた。店長だろうか?
「ブラッド・クレイズ様、お待ちしておりました」
「急に来てすまないな」
ブラッド様が言うと、紳士は首を横に振って微笑んだ。
「いつでも歓迎いたします。席はこちらです」
紳士が窓際の席に案内してくれた。
紳士が椅子を引いてくれたので、私は腰かけた。
「ありがとうございます」
「ごゆっくりとおすごしください」
ブラッド様も椅子に座ると、ウエイターがやってきた。
「食前酒はいかがいたしましょうか?」
「どうする? ローラ?」
「私はあまりお酒はつよくないので……」
「では、炭酸水とシェリーを頼む」
「かしこまりました」
ウエイターは、すぐに炭酸水とシェリー酒を持ってきた。
「ありがとう」
ブラッド様は笑顔で受け取ると、私を見つめた。
二人で見つめあって、グラスをあげる。
乾杯をするとそれぞれ一口飲んで、微笑みあった。




