9 士官学校への入学5(剣術大会)
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
初戦で勝利してから、ランスロの快進撃が始まった。
どの相手も試合開始後一瞬にして、その場に倒れていた。
ところが、ランスロが勝ち進んだ反対側のブロックでも同様なことが起きていた。
快進撃をしていたのは、士官学校に入学することを希望した大金持ちの平民の子供だった。
名前をザラという女性だった。
彼女は準決勝まで勝ち進んだ。
会場に現れたザラを見ると、会場のあちらこちらで驚きの声が上がった。
「おい見ろよ。女の子だぞ。7歳のはずなのに大人のような完璧な美しさだな。」
「親はゴード王国で一番の大金持ちだ。どのくらいの大金を寄付するのかな。」
「士官学校に初めて入学する女性になるな。伝統を打ち破るのか。」
ザラの相手はヘンリー国王の弟チャールズの息子アルフレッドだった。
グロスター公爵家のフィリップと同じように、剣士ザガンが剣術を教えていた。
試合開始前に、ザガンはアルフレッドにアドバイスした。
「殿下、相手が女の子だからといって、決して油断してはなりません。グロスター公爵家のフィリップ様が負けられたのも、油断したのが大きな理由です。自分より剣が強いことを認められて、相手の攻撃からできる限り逃げて防戦に撤してください。」
「先生、それだけでは勝てないが……」
「相手が疲れるのを待つのです。7歳の女の子です。持久力や体力はないでしょう。」
「女の子に対して、そのような戦略をとらなければならないのか。」
「フィリップ様の時にも申し上げました。もしかしたら卑怯だと思われるかもしれません。勝つために割り切って考えることは大切です。」
「叔父上の国王陛下が見られている前で、敗北は許されないか――」
アルフレッドとザラの試合が始まった。
剣士ザガンのアドバイスどおり、アルフレッドは決して攻撃しようとしなかった。
ザラが言った。
「王族の恥さらしだな。剣術の試合なのに攻撃してこないのか。確かに、攻撃してきたら一瞬に勝負を決めてしまおうと思ったが。それならば、こちらの方から攻撃するぞ。」
彼女のすさまじい連続剣戟が始まった。
計画どおり、アルフレッドは防戦に専念するとともにひたすら逃げ続けた。
あきれた口調で彼女が言った。
「女の私からひたすら逃げ回るのか。もしかしたら、私が疲れるのを待っているのか。ふ――ん」
ザラは再び、前よりも厳しい連続剣戟を始めた。
そして特殊なことは、一撃一撃の振り先を体に打ち込もうとするのではなく、アルフレッドが剣で受け止めることができるよう計算されていた。
やがて、その効果が現れた。
逃げ回り彼女の剣を受け続けてきたアルフレッドの疲労は限界を超えた。
そして、その場にくずれるように倒れ意識を失った。
審判はアルフレッドに駆けよって、状態を確かめた。
そして宣言した。
「アルフレッドは寝ている。いやいや意識を失っている。よって、ザラの勝利を決定する。」
実際、アルフレッドは極限の疲労に達し、眠ったように意識を失ったのだった。
試合を観戦していたグネビア王女は、心の底から驚いていた。
(「ザラ」という名前の女の子。そして、完璧な美しさをもつ顔も似ている。魔王のように強い。ランスロも大変苦戦するわ。魔族ではなく確かに人間みたいだけど……)
決勝戦を前に近くの待合場所に作られた休息所で、ランスロは母親のマーゴと父親のトーマスとともに軽食を食べていた。
母親が聞いた。
「ランスロはいつの間に、あんなに強くなったのかしら。毎日、大木の太い幹に向かって木の棒を振り、最後は切り倒してしまったことは知っていたけど、それだけで動く人間を相手にする剣術がとても強くなれるとは思えないわ。」
「母さん。僕は毎日、動かない大木の幹に向かって木の棒を振り続けただけではありません。その他に森の中に入りこむと、なぜかたくさんの精霊が僕の練習相手になってくれたのです。人間よりも数倍早く動くことのできる精霊達が、僕のいろいろな能力を高めてくれました。」
その時、父親のトーマスが言った。
「ランスロ。あの女の子が決勝戦の相手だね。」
近くをザラとその従者が通り過ぎようとしていた。
ランスロの視線がザラの方に向けられたことに気がつくと、ザラがこちらの方に歩いてきた。
「ごきげんよう。あなたが、決勝戦で戦う相手か。相当強いみたいだな。お願いだから、逃げることなく全力で戦ってくれ。」
「はい。そのつもりです。」
ザラの従者はとても暗い疲れたような顔をした男だったが、目つきはとても鋭かった。
「ランスロ様。私はロスチャイルド家で執事をしておりますアスタロトと申します。失礼ですが、あなた様の試合も拝見させていただきました。どんな練習であんなに強くなられたのですか。」
「たいしたことはしていません。大好きな森の中のいろいろな存在に練習相手になってもらっているだけです。」
彼に答えを聞いて、ザラが言った。
「そうか。私といっしょだな。私は暗い場所がとても好きで、闇の中のいろいろな存在に練習相手になってもらっている。」
お読みいただき心から感謝致します。
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