72 テイク・ラスト・ワンチャンス7
完結しました。
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
勇者ランスロと1000年魔王ザラは、空中で間合いをとって静止した。
「すっかり勇者になったのだな。その手に持っているのは『勇者の剣』希望か。」
「そうです。僕はザラさんを止めて、ザラさんをとり返します。」
「どちらかか、それともどちらとも命を落すまで、魔王と勇者は戦うのが宿命だ。それに私は1000年魔王、魔族の宿敵である人間の血をできるだけ多く、この『魔王の剣』業火に吸わせなければならない。」
「業火は1000年魔王の心と完全に一体になって、支配すると聞いています。僕にはそれがよくわかります。士官学校での記憶があるから。あのザラさんがそんなことをいうはずがありません。」
「おかしいな。勇者であるランスロと同じ学校で学んだ記憶は全くないのだが。それでもかまわないぞ。今から私には、勇者を殺した記憶と人間を大殺戮した記憶が残るのだから。」
ザラを包む赤い光りが、最高に輝いた。
そして、人の目には全く見えない速さで、ランスロに業火の一撃が加えられた。
一方、ランスロを包む緑の光りも輝きをました。
ただ、自らだけで輝く赤い光りとは違うのが、緑の光りは周辺から全ての世界から、エネルギーを取り込んでいた。
ランスロはザラが打ち込む「魔王の剣」業火の軌跡を感じ、反対方向から正確に「勇者の剣」希望を打ち返した。
2つの剣がぶつかった時、巨大なエネルギーが爆発した音がした。
緑の光りと赤い光りとの衝突は何回も何回も繰り返された。
1回衝突すると、その反動で2つの光りの間にはかなりの距離ができた。
そして新たな場所を選んでさらに衝突した。
2人の戦いは、ゴード王国ほとんど全ての上空で行われた。
100回くらいの衝突が過ぎた後、勇者ランスロは自分の体に異変を感じた。
(体中が痛い。手首、腕……胸も痛い、心臓がどくどくする。でも、もう少し)
ランスロは次に剣がぶつかった瞬間、ザラの様子をしっかり確認した。
(僕と同じように、いやそれ以上にザラさんの体は痛みを感じている。ただ、本人には認識させないように『魔王の剣』業火が神経を麻痺させている。もうすぐ彼女に限界がくる。)
勇者ランスロは、ほんのわずかな一瞬で、とても大切なことを決心した。
そして空中を全力で蹴り後ろにさがり、ザラとの距離を最大限に広げた。
「はあはあ……おや、おや、勇者様はおじけづいて逃げたのですか……はあはあ…… 」
ザラの体は悲鳴を上げていた。
ランスロはザラに向かって、最大限の力を込めて空間を蹴った。
希望の剣を自分の頭上に構え、ザラが持つ業火だけに集中した。
緑の光りはビームのように空に輝き、ほとんど止っていた赤い光りに衝突した。
ランスロは構えていた希望を全力で業火に向かって振り下ろした。
「ラ ン ス ロ 」
ザラは心の中で精一杯『魔王の剣』業火に抗った。
業火は留まった位置で、ザラに全力の力で固定された。
2つの剣がぶつかった瞬間、大きな音がした。
爆発のような音ではなく、鐘の音のようなきれいな音だった。
魔王の剣「業火」は真っ二つに折れていた。
勇者の剣「希望」を全力で振ったランスロは、自分の力の余波で、その場からはるか遠方に吹き飛ばされた。
折れた「業火」はザラの手から離れ落下した。
遅れてザラも意識を失い、かなりの高度の空中から落下し始めた。
王都イスタンにある王宮の一番高い塔の上で、グネビア王女は上空を見上げていた。
かなりの高度でランスロとザラの戦いは行われており、緑の光りと赤い光りもはっきりとは見えなかった。
そのうち、王女の耳にきれいな鐘の音が聞こえた。
王女はしっかりと上空を見上げた。
「あっ、あれは、何か落ちてくる。」
上空から何かが落ちてきた。
最初は少し離れた場所に落ちそうだったが、突風が吹き塔のそばに流されてきた。
落下のスピードは弱まり、王女の目でもそれが何かはっきりとわかった。
「人だわ――――――ザラさん!!! 」
ザラは突風にさらに流され、王女が見ている塔の外壁のそのすぐそばに近づいて落ちてきた。
王女はなんでそうしたかわからない。
塔のへりのすぐそばにザラが落ちてきた時、両手でつかまえようとした。
王女は一瞬、ザラをつかまえることはできたが、落下の力に耐えられず一緒に落ち始めた。
そしてすぐに王女は意識を失った。
グネビア王女が意識を失うとは反対に、ザラは意識を取り戻した。
そして、状況をすぐに理解した。
「美しい王女様。人のことを思う気高い強さをお持ちですね。完全に負けました。側室でいいからランスロのお嫁さんになりたかったな……………………」
2人の真下には、王城の固そうな石畳が近づいてきた。
ザラは少しでもグネビアを守ろうと、その体を自分の体で包んだ。
……………………
公園のそばの噴水の前のベンチで、2人の幼い女の子が座っていた。
1人は雪のように色白で、美しい心が現われた大きな青い瞳をしている美少女だった。
もう1人は長いきれいな長髪で、赤い瞳をした完璧な美しさをもつ少女だった。
青い瞳の少女が、赤い瞳の少女に言った。
「おねえさん。おとうさんが焼いたパンを早く食べよう。」
「うん。おかあさんが作った飲みものを、ポットに入れて持ってきたわ。」
噴水の近くの石畳から、四葉のクローバーが一生懸命に生えていた。
お読みいただき心から感謝致します。
少しでもお楽しみいただけましたでしょうか。
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