70 テイク・ラスト・ワンチャンス5
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
完結が近づいてきました。
大きな穴である連結空間から完全に出て、ゴーレムのクレイは立ち上がった。
見上げると1つの山が動いていると思えるくらい、かなり背が高かった。
「魔界ではたびたび姿を見たことがあったが、人間界で見るとさらに巨大に見えますね。」
炎人バーンが驚きの声を上げた。
連結空間から出た後、クレイはそこで止り動かなくなった。
「やはり、1000年魔王から指示を受けている。連結空間を守ることに撤するのか。」
魔神グリゲイドが言うと、バーンもうなづいた。
「それでは、我が動かすしかないか。」
魔神はそう言うと、手で印を結んで詠唱した。
「疾風――」
先の戦いの影響で、回復度合いはまだ半分程度だったが、魔神は今自分の能力で出しうる最大の魔力を使い暴風を起した。
それはゴーレムのクレイを横殴りに強く吹き付けた。
しかし、巨大な体は少し横に動いただけで、あいかわらず連結空間をカバーする場所に立っていた。
「やはり、1億人の魔族と戦った魔力の消耗は激しいのか。」
悔しそうに魔神は言った。
「どうでしょうか。我々獣人がクレイを挑発して、動くかどうか試してみては。」
先に人間側に10万人の眷属とともに加わっていた獣人レオが提案した。
「そうだ、お願いしましょう。」
炎人バーンの了解を得て、獣人の中から特に早く動くことができる者が飛び出し、ゴーレムのクレイを挑発し始めた。
「でかいだけの土人形、俺たちを捕まえられるか。」
「ダンスができるかい。こんな感じさ。」
「ほんとうに生きているのかい。うすのろやろう。」
その様子を見て魔神グリゲイドが言った。
「バーン殿。いかに戦いに必要でも、あんな下品な言い方は許されるのか」
「そうです。そうですが、仕方が――」
バーンは最後の言葉をごまかそうとしたが続けた。
「――ゴーレムのクレイは、はるか古代に人間の伝説的な王が、自分の城を守るために生み出した人工の生命体。生命がない機械のようなものだから、挑発してもその意味を深く受け取らないんです。連結空間を守るため動くなと命令されたら、動く可能性は少ない。どうすれば…………」
獣人達は、聴くに堪えない挑発をしつこく続けた。
彼らは一生懸命にやっていたが、効果は全くなくゴーレムのクレイは全く動かなかった。
「あまり長くなると、魔界が魔族8億人の進軍に踏み切るだろう。ここはもう仕様がない。私は今できる最高絶対高温の炎球を放とう。クレイがそれを土で作られた自分の体で阻止できるかどうかは、かけになるのだけれど。」
炎人バーンが決心したと同時に、戦場にハプニングが発生した。
背中に何かを入れている袋を背負い、走り回っている狼の獣人がいた。
ところが、あんまり複雑な動きをした瞬間、背中の袋を落してしまった。
すると中から、まだ獣人に成りきっていない3匹の子狼が飛び出し、3匹そろって走り出した。
「えっ! 戦場に子連れとは――」
指揮をしていた獣人レオが驚いて叫んだ。
3匹の子狼は獣人達が走り回っている真ん中に出てしまい。踏みつぶされそうになった!
ところが、3匹の子狼の回りに突然壁ができて、獣人達をブロックした。
戦場にいた誰もが、いったい何が起こったのか全くわからなかった。
しかし、落ち着いてよく見るとゴーレムのクレイだった。
立っていたクレイが、子狼達があぶないことを察知して、かがんで手を差し伸べたのだった。
序列第1位とされた炎人バーンは、強いだけではなく状況の理解と判断が素早かった。
クレイがかがんだことで、連結空間の上部までの空間が開いた。
バーンは一瞬で、できる限り最大の魔力を体に集中させ炎のかたまりとなり絶対高温の炎球を放った。
炎球は見事に連結空間の上部に命中して、絶対高温が連結空間を形づくる魔術式を解かし始めた。
連結空間は全て溶かされ消滅したようだった。
あっけない最後だった。
バーンが言った。
「これでは、魔界と人間界との間の次元空間が少ない場所の調査、魔術式の構築をゼロから始めなければならない。魔族の大群が通過できる大きな連結空間は、後百年くらいできないだろう。」
竜人ドランが獣人レオに、半ばふざけたような口ぶりで話しかけた。
「獣人族の長レオどの、あなたの部下には戦場に子連れで来るような戦士がいますね。それは軍法違反ではないですか。厳しいレオ殿がどのように処分されるんだろう? 」
レオは困ったような口調で答えた。
「それは………………家族サービスも大切な仕事だ。だから問題ない。」
それを聞いてドランはにっこりと微笑んだ。
ゴーレムのクレイは座り込んで、3匹の子狼と遊び始めていた。
その時だった。その場にいた上級魔族5名は巨大な力を感じた。
炎人バーンが叫んだ。
「来た! 早く勇者ランスロに連絡を! 」
全部消滅したと思われた魔界との連結空間は、ほんのわずかな面積だけ残っていた。
そして、まぶしいほどの赤い光りで輝いた。
そこから投射されるように、背の高い完璧な美しさをもつ女性が現れた。
彼女の背には黒を基調にした剣がしばられていた。
髪が長い完璧な美貌の顔が笑いながら言った。
その両目は赤く光っていた。
「おやおや、出迎え御苦労だな。私に服従しなければならない5人の上級魔族達。 」
お読みいただき心から感謝致します。
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年末年始はできる限り更新をがんばります。




