7 士官学校への入学3(剣術大会)
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
士官学校の入学者を選抜するために剣術大会開催が、ゴード王国全域に知らされた。
全ての町のメインストリートに大きな看板が立てられ、その前には常に人だかりができた。
「それにしても、不公平だな。」
「入学を許可する条件がひどい。」
「王族、貴族の子供は参加すること。大金持ちの平民の子供は、国にできる限りの寄付をして参加すること。それらに比べて、寄付ができない貧困の平民の子供は、剣術大会に優勝することだとは……ほとんどチャンスがないということだな。」
大人達の話を真剣に聞いている子供がいた。
ランスロだった。
彼は出場して優勝することで、士官学校に入りたかった。
自信はあったが、それ以上に大きな不安が彼の心に芽生えていた。
剣術大会は、ゴード王国最大のイベントになるに違いなかった。
派手な場所で負けてしまい、両親を大いに失望させることを恐れていた。
決心が定まらないまま、彼は町の外に続く道を歩き、森の中の家まで帰ろうとした。
下を向きながら歩いていたランスロの背中を、誰かがポンとたたいた。
「ランスロ! もう決心した! 」
グネビア王女だった。
王女だということを隠すかのように、フードをかぶって目立たない姿をしていた。
「王女様。何のことをおっしゃっているのでしょうか。」
「剣術大会のことよ。今、そのことを考えながら歩いていたでしょ――」
「正直いうと、参加しようかどうか大変迷っています。」
「自信がないの。」
「負けてしまい、両親を失望させることが恐いのです。」
「自信を持ちなさい! 絶対大丈夫だから! 」
「……」
「ゴード王国中で、あなたに勝てる子供はいません。毎日毎日真剣に木の棒を振って、何百年間も育った大木を切り倒すことができたあなたには、特別な力が宿っているのです。」
「……」
「あなたを愛している御両親は、例えあなたが負けたとしても決して失望しないわ。あなたの未来にある成功を絶対に疑わないでしょう。」
「……」
そう言った後で、王女はランスロの顔をじっと見つめて目を合わせた。
王女の大きな美しい青い瞳に、彼の姿が映っていた。
「ゴード王国のグネビア王女が騎士ランスロに命ずる。あなたは勇者ランスロとなって、魔族からこの国を救わなければならない宿命があるのです。だから、わずかなチャンスしかなくても必ず未来を切り開きなさい。」
「王女様、わかりました。剣術大会に出場して優勝し、士官学校に入学します。入学して何倍も何倍も自分を高めて、ゴード王国の騎士、勇者になってみせます。」
彼は王女にために、なにがなんでも実現したいと思った。
剣術大会が開催される日になった。
国中から、その年に7歳になる数百人の子供達が集まった。
予想どおり、ほとんどが王族、貴族の子供、その他は大金持ちの平民の子供が数人、貧困の平民の子供はランスロ1人だけだった。
彼をばかにして嘲笑する声が、あちこちから上がっていた。
「おい見ろよ。汚い姿だな甲冑も着ていない。剣術をばかにしているな。」
「そうだ。そうだ。今日使う木剣もあんなに不格好なものを持っているぞ。」
「身分の高い我々は、良い先生に剣術を長い間学んでいる。勝てるわけない。」
大会に参加する不安を紛らわすために、みんなひたすらランスロを徴収していた。
そのような時だった。
嘲笑する声がピタリと止り、雰囲気ががらりと変わった。
黒い甲冑をつけた全身黒ずくめの騎士が、子供達の集団に分け入ってきた。
背は高く周囲に不思議なオーラをまとった格好いい騎士だった。
その騎士がランスロに近づいて、その前に止った。
「きみはランスロだね。」
騎士は面を外したので、その顔を見ることができた。
目は小さいがとても鋭く、髪をオールバックにしていた。
「ホーク様! ナイトグランドクロス! 」
子供達から歓声が上がった。
ゴード王国最強の騎士、その名前は国外にも鳴り響いていた。
ホークは木剣を取り出し、ランスロに渡した。
「今日は木剣での戦いだが、良い木剣を使うことも必要です。さあ、持ってみて――」
ランスロは驚いたが、丁寧におじぎをして木剣を受け取った。
「構えてみて、戦うつもりでだよ――」
ホークにそう指示されたので、ランスロはもらった木剣を持って構えた。
その姿を見て、最強の騎士ホークは全てを悟った。
「全身の気を一瞬で、人間の限界を超えて最大限に集中させている。その年でそこまでできるとは、神のギフトを受けている。その木剣は私が自分の練習用に作ったものだ。君に献上するよ。」
「え―――――っ!!! 」
見ていた子供達が大変驚いた。
ホークが言った。
「君達、今日ランスロ君と戦う時は、攻撃しない方がいいよ。彼は攻撃には容赦なく反撃するはずだ。大けがをしないように十分に注意したまえ。」
高い所に設置されている観覧席にホークは戻った。
王女の席の前に行き、ひざまずきながらホークは報告した。
「王女様。確かに確認しました。ランスロ君は神のギフトを受けた人間です。努力を重ねれば必ずこの国を救う勇者になるでしょう。」
「ナイトグランドクロス、ホーク様。ランスロは戦うために神のギフトを受けているかも知れませんが、チャンスは1回しかない与えられていないのです。もっとも、1回のチャンスを必ず生かすことができますが。」
お読みいただき心から感謝致します。
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少しずつ頻度を増やし、計画的に更新できるようにがんばります。
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