6 士官学校への入学2
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
ランスロの母親マーゴの作った昼食はとてもおいしかった。
グネビア王女がいつも宮殿で食べている料理とは異なり、味付けはとてもシンプルであったが素材のよさを最大限に生かしていた。
王女の食事のスピードが遅くて、母親が心配した。
「王女様、申し訳ありません。あまりおいしくないですか。」
母親のその言葉を聞くと、王女は大変びっくりして否定した。
「反対です! とてもおいし過ぎて、飲み込めないのです。ずっとかみしめて、味わっていたいのです。」
「そうですか。よかったです。夫と息子がものすごい早さで食事をするのを毎日見ているから、慣れてしまったのですね。」
食事をしながら、王女が言った。
「ランスロさんは今何歳ですか。」
「今6歳で来年には7歳になります。」
「ランスロさんは、剣術がうまくなりそうですね。あんなに幹が太い大木を、木の棒を振り続けて倒してしまうのですから。それなりの剣士に教えてもらえば、相当な剣の使い手になれます。来年7歳になった時、どこかの学校に入学するのですか。」
王女の問いに父親のトーマスが答えた。
「いいえ。王女様、私達のような平民の子供は学校には入学できません。仮に、才能があってそれを高めるため、学校に入りたいと思う子供がいても不可能でしょう。」
「なぜでしょうか。」
「王女様にはとても言いづらいのですが、身分の差とはそういうものです。身分の低い平民に生まれた子供は、身分の低い平民の大人になるしかないのです。逆に身分の高い貴族に家に生まれた子供は、必ず身分の高い貴族の大人になることができます。」
「ほんとうに申し訳ありません。私は王女として十分に恵まれているから、そのようなことを全然知りませんでした。学校に行けなければ、剣術やさまざまなことを学ぶことができません。ランスロさんのこれからの未来は、完全にノーチャンスだということですか。」
「完全にノーチャンスではありません。実はいくらかのお金さえあれば、ゴード王国の士官学校に入学することができるのです。士官学校に入学するのは貴族の子供がほとんでですが、今年から大金を国に寄付することができれば、平民の子供でも入学できるようになったのです。」
「大金って、どれくらいでしょう。」
「公にされていません。たぶん公にしないことで、大金持ちの平民の親から大量の寄付を集めようとしてしているといううわさです――すいません。王女様の前で国の悪口を言ってしまいました。」
ランスロの家から宮殿に帰った後、グネビア王女は国王ヘンリーの執務室に向かった。
「父様、入ります。」
「グネビアか。今日は森の方に行ったとか、危ないことはくれぐれも止めてくれ。」
「お聞きしたいことがあります。」
「なんだ。」
「士官学校のことです。来年から平民の子供でも親が寄付すれば入学できるようになったのですね。」
「そうだが。」
「どれくらいの寄付が必要なのでしょうか。」
「なんでそんなことを聞くのだ。」
「教えてください。」
「秘密にしておいてほしい。……実は、必要な寄付の額は決まっていないのだ。」
国王の答えを聞いて、ランスロの父親が言ったうわさどおりだと王女はあきれてしまった。
「平民から入学できるのは何人ぐらいになるのでしょう。」
「そうだな、親の寄付金が多い方から5人くらいにしようと思っているが。」
「父様。ゴード王国全ての国民の上に立つ国王として、それで良いとお考えですか!!! 」
グネビア王女はとても大きな声で怒りをあらわにした。
「グネビアよ。これはやむを得ないことだ。ゴード王国が発展していくためには、莫大な国家予算が必要なのだ。大金持ちの平民、大商人が国に貢献してもらうには良い方法ではないか。」
「父様。潤沢な国家も必要ですが、それよりももっともっと大切なことがあります。」
国王はわずか6歳の自分の娘である王女が訴える姿に、大変驚いた。
(いつの間に、こんなことを言うようになったのか。大人としゃべっているみたいだ。)
国王はとても優しい顔をして行った。
「グネビアよ。私に教えてくれないか。」
「人です。最後の1人になっても、ゴード王国を守ろうとする真に価値のある宝物のような人はどこから現れるのでしょうか。もちろん、王族の中から現れるかもしれません。貴族の中から、お金持ちの平民から現れるかもしれません。……そして、貧困の平民から現れる可能性もあるのです。」
「グネビアはどうすれば良いと思うのだ。貧困の平民の子供を入学させるとすると、それなりの理由が必要になる。今、グネビアが言ってくれたことは大変すばらしいことだが、理想論でもある。多くの人を納得させることのできる現実的な理由が必要になる。」
「それではこうすればどうでしょうか。士官学校は、将来、ゴード王国を守る騎士を育成するためにあります。騎士は、どんな最強の敵とも戦うことができる剣技を取得する必要があります。そこで、入学選抜のための剣術大会を開くのです。」
「全ての入学希望者が参加するのか。」
「もちろんです。王族、貴族、大金持ちの平民、そして貧困の平民の子供、全ての入学希望者が参加するのです。――そして、貧困の平民の子供は、優勝した場合のみ入学を認めるのです。」
「貧困の平民の子供には、ワンチャンス与えるだけなのか。」
「はい。そうです。」
グネビア王女は心の中で密かに思った。
(私の勇者ならワンチャンスあれば大丈夫です。全く問題ありません。)
お読みいただき心から感謝致します。
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少しずつ頻度を増やし、計画的に更新できるようにがんばります。
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