39 勇者になりたくない
一生懸命に作話しました。是非是非、お楽しみください。
なろう投稿する第2作目です。
士官学校は8年生までで、15歳になって卒業する。
今日、校長のロダンが卒業生の一覧表と今後の配属について、卒業式に出席するヘンリー国王とグネビア王女に王宮まで報告に来ていた。
「今年の卒業生は98人、例年とほぼ同じくらいです。全体的にみて、教官達の評価ではここ数年間で一番高く、卒業生は今後必ず我がゴード王国のために働いてくれる者ばかりです。ただ一つの問題点を除いて。」
「ただ一つの問題点とは、何があるのだ。」
「ランスロです。彼は剣技や戦術など、全ての科目について最高の成績を収めました。入学した時からみんなが噂した最強の騎士、不敗の将軍になれることも間違いないでしょう。しかし、卒業後の彼の任地の希望ですが、なんと辺境デザートなのです。」
辺境デザートとは、王都イスタンからはるか遠くの南側にあり、雨が全く降らない植物や動物にとって生存が難しい広大な砂漠地帯だった。
年中、強い風が吹き荒れる砂だらけの死の土地で、全く価値が無いばかりか、他国から侵入されることも予想されないので、最小限の砦が置かれ申し訳程度の守備兵が守っているような場所だった。
誰が守っても良い砦なので、怠け者で弱い騎士や兵士ばかりが集まっていた。
いわゆる「島流し」の場所だった。
グネビア王女が心配そうに言った。
「ロダン校長、辺境デザートに赴任したいという理由について、ランスロは何か言っていませんでしたか。」
「はい。一言『勇者になりたくない』と…………このままでは、魔族の大侵攻があった時、ゴード王国の先頭に立って魔王と戦う勇者がこの国にはいないという最悪の事態になってしまいます。」
「そうですか。彼はいい加減な考えだけでそのようなことを言う人ではありません。私が確認しましょう。」
王女は心の中で思った。
(1回目の時間と異なり、ランスロが士官学校に入学して剣技や戦術の実力をつけたことで、勇者が魔王に勝利し魔族の大侵攻を退けることができると確信してしまったわ。どうしたの、ランスロ…………)
士官学校の剣技訓練場だった。
背の高い上級生が、複数の下級生を相手に訓練中だった。
下級生達は、上級生がほんの短い瞬間に見せる隙に、代わる代わる組織的に木剣を打ち込んでいた。
ところが、隙だと思って打ち込んだのに、上級生の木剣はことごとく正確な軌道で振られ下級生の木剣を跳ね返していた。
何回続けても同じ結果だった。
「終わりましょう。」
ランスロが訓練の終了を告げた。
「先輩の空間を支配する剣技、完全防御はすごいです。」
「数人で先輩を攻撃していた僕達が、こんなに疲れているなんて、どういうこと。」
下級生達は、疲れ切って全員、そこに横たわってしまった。
大人の中に入っても目立つほど背が高くなった彼は、少しも疲れていないような足取りで士官学校の中を流れている小川までの岸辺まで行って、顔を洗った。
「見違えるほど背が高くなったのですね。だけど、くせっ毛と大きな目がかわいらしいのは変わっていないから、遠くからでもすぐわかりました。」
ランスロが顔を洗っていた川面に、心の奥底までの優しさを秘めたきれいな青い瞳の、輝くように美しい女の人の顔が映っていた。
「グネビア王女様。」
振り向くとグネビア王女が優しく微笑んでいた。
「もうすぐ卒業ですね。ところで、ランスロは人があまりいない場所、そして熱い所が好きなのですか。」
突拍子もない王女の質問だったが、彼にはその意味がわかった。
「………………すいません。王女様、僕は勇者になりたくないのです。」
それは、王女にとって予想外の驚くべき言葉だったが、彼の目を見て深い理由があることを悟った。
「深い理由があるのですね。でも、私はゴード王国の王女として、例えあなたに嫌われたとしても言わなければならないことがあります。勇者になれるのはあなただけです。そして勇者がいなければ多くの人の命が奪われ、ゴード王国だけではなく人間世界全てが魔族に支配され、悲惨な未来だけが残るでしょう。」
王女からそう言われると、ランスロは下を向いて大粒の涙を流し始めた。
「ランスロの泣き顔は、私の気持ちをかき乱します。大きな目だから大粒の涙が目立つのですよ。」
「………………王女様。正直に申し上げます。士官学校に入学する時から一緒で、楽しい時を過ごしたとても大切な友人がいるのです。僕は勇者の候補ですが、その大切な友人が魔王の候補だったら――、お互いに戦いたくないのに、戦わなければ大切な友人には死が待っているとしたら――」
「ランスロ、大切なことを教えてくれてありがとう。あなたに今言えることはたった一つだけです。私は全く勝つ見込みがないノーチャンスの戦いに勇敢に挑んだ人を知っています。その人に比べて、あなたには少ないかも知れませんがチャンスがあるのです……
……勇者になったとしても、大切な友人の命も必ず救うことができます。私を信じてください。私の勇者なら必ずやりとげることができます。絶対に道が見つかります。」
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