表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

ヨンブンノイチのカノジョ

家庭菜園が趣味の父が蒔いた種。

無耕作、少除草、放置ではない栽培法を試している。


購入した種は、味とか見ためとか、商品として成立させるための交配や遺伝子操作などで、一世代限りだけだが優秀な作物が育つという。

父は、再生栽培もやっている。

それほど広くはない畑なので、それなりだが、父は楽しんでいるみたいだ。


兄の趣味はメダカの飼育。

新種を作り出すのが目標というか、あまりお金をかけずに、知人からもらったという貴重な品種も大切に育てているが、兄から教えられる遺伝子の話は面白い。


たとえば、メダカの体色の白は劣勢遺伝となるので、他の色のメダカと交配させると、子供たちはみんな白以外の色となる、

その子供同士の交配で生まれるメダカは、4匹のうち1匹が白になる。


その兄が言うには、購入した種から育つ野菜が成熟して、再び採れる種からの野菜は、味だけが良かったり、形だけが親野菜と同じだったりするらしい。

組み上げられた遺伝子が別々の個体に遺伝するからだそうだ。


面白いねって、ぼくの反応はすこし薄いかもしれないけど、知的な興味はそそられる。

多少、コミュ症の傾向があるのを自覚している。


もちろん学校でも、それなり。

たとえば友達とお弁当を分けあうとかは無理。潔癖症ということにしているが、本当は違う理由のような気がする。

たとえ親友であっても、男同士で肩を組むとかもイヤ。なので自分を主人公にしたBL作品なんて想像すらできない。


そのぼくにも彼女はできた。

彼女にも兄がいる。

その兄は、信号の赤は識別できるけど、たとえば野イチゴは見つけられないそうだ。

アルバイトで土木工事の仕事をしているときも、目印の赤いラインなどはわからなくなるそうだ。

書いてある場所が分かっていれば、見つけられるそうで、なんだか本末転倒な話だよねって、ぼくの前で笑った。

「赤い印があるだろ。そこにメジャーのゼロを合わせて。」

とか言われると、その印を探せないという。


先輩や親方には色弱なので赤はわかりづらいんですと話して、理解してもらう。

印を黄色に変えてくれる人もいるし、印のところまで来てから、指差しで教えてくれる先輩もいる。


試しに、赤い車の色はどこまで離れると色がわからなくなるかやってみたら、約30mで色調が失われたそうだ。

明暗しかわからないので、赤い車と言われても?みたいな。


もちろん同じ両親から生まれたので、彼女にも色弱は遺伝しているが、その遺伝子は劣勢遺伝なので、女の子の場合はめったに色弱にならないという。


難しい話をすると、遺伝子の中の染色体はX型とY形があって、X型が2つあると女の子になる。

男の子はX型とY型を持っている。


色弱の遺伝子はX型の染色体によって、次の世代に継承される。

色弱の遺伝子を持っていないX型染色体と色弱の遺伝子を持っているX型染色体が結ばれて女の子が生まれた場合、色弱の遺伝子は持っていても、その女の子は色弱にはならない。


父親も色弱で、母親も色弱の遺伝子を持っていて、その両方から色弱の遺伝子を持つX型染色体を受け継いだ場合のみ、その女の子は色弱になるそうだ。


「わたしも色弱なんだ。」

「ある意味、4分の1の貴重な確率で生まれた幸運の子かもね。」って笑う。


彼女の母は色弱ではないというので、本当は2分の1だけどねっては言わない。

いやむしろ、4分の1で合っているのかな?

でも、兄と妹の2人だけで、2人とも色弱になる確率がすごいような気がする。

宝くじが続けて2回当たるくらいの?


「だから、ごめんね。」

「わたしとエッチしたら、カズ君の子供はみんな色弱になっちゃうんだもんね。」

また、微笑む。


「結婚前提のエッチかよ!」って、すこし嬉しいんだけど、彼女にツッコミ入れたら、どんな風に返してくれるんだろう?


もちろん、きちんと避妊具はしてるけど、しなければどんなエッチなんだろうって想像しちゃう。


ぼくとしては、このまま大人になっても、彼女と付き合いたいと思うし、仕事もしっかりすれば、結婚してもいいと考えている。


そんな話を祖父から聞いた。

母の兄、僕の伯父さんは色弱ではない。

もちろん母も。そして父も。

姉は、もしかしたら色弱の遺伝子を持っているかもしれない。

確率としては、きっと4分の1だろう。


祖母に似ているという僕は、色弱。

性格も容姿も似ているねって、祖父は嬉しそうに話す。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ