魔女と侍女と美味しい紅茶
とんがり帽子を目深にかぶった女性が、物が乱雑に積まれた店内で、のんびりと紅茶を飲んでいる。
目の前にはメイドの服を着た侍女が同じように紅茶を飲んでいた。
メイドがカップを置くと、静かに頷いた。
「確かに、これだけの味であれば問題ないでしょう」
「それじゃあ、お代を頂けるかしら?」
「こちらを」
そう言って差し出した袋には金貨が詰まっていた。
中身を確認してから頷くと、とんがり帽子をかぶった女性が杖を振る。
彼女の背後にあった大きな戸棚の、その中でも大きな場所が開き、中からティーポットが出てきて、二人の間に降りてきた。
侍女は手早くそれを包むと、ぺこりとお辞儀をして店内から出ていった。
魔法で勝手においしい紅茶が注げるティーポット。
侍女は満足したようだったが、仕えている主はそうでもなかったようだ。
「手間暇かけて注がれた紅茶が美味しいから良いんだ」
そう主が言っていたと侍女が次の日に愚痴を言いに来たが、とんがり帽子をかぶった女性は「バレないように使いなさい」と彼女を追いだした。