02.5#貴女の全てを我の手に。されば、
「あたし…この世界を、知りたい。どんな所でどんな人がいるとか、あたしはちゃんと知らなきゃいけない。そして…結論を出すことがあたしに課せられた使命だと思うから」
そう言って美しく微笑んだこの世界ではあり得ない黒髪黒瞳の少女。
この世界を救う必要はないと…我は貴方に言った。
……確かに救う必要はなかったのだ。
だが、もうそんなことは言っていられない。
貴方は既にこの世界に喚ばれ、元の世界に帰ることなど…出来ないかもしれないのだから。
この世界は着実に滅びの道を歩んでいる。
それを止める可能性を持つのは貴方だけ。
貴方が止めなければ、元の世界に帰れない貴方はこの世界と共に…
――しかし、そんなことはさせぬ。
ずっと握り締めていた自分の耳にあるものと対になるピアス。
それに魔力を込めて形を変化させる。
このピアスは我の魔力の結晶。
我の核とも言える力の塊。
竜は一生を添い遂げる相手を見つけると、自分の魔力を半分に分け、相手と分け合う。
だが、我の力は大きくて、強い。
それ故に半分にすることは出来なかった。
この魔力の結晶は我の力の10分の1にも満たない。
それでも我は…与えたかった。
この弱い弱い人間の少女に。
強く抱き締めたら壊れてしまいそうな危うさを持ち、初めて会った竜にさえ、優しさをくれたこの少女を我は守りたいと思った。
我が守るのだ。…この、手で。
「セナ、これを」
我はピアスからブレスレットに形を変えた我の魔力の結晶を少女、セナに差し出した。
セナがこの世界を見限るならば。
セナがこの世界を嫌うのならば。
セナがこの世界を疎ましく思うのならば。
我は、古くからの親友、創造主を亡き者にすることになろうとも。
セナの願いを叶える事を誓おう。
セナ。我のセナ。
貴方はただ我の傍に居れば良い。
貴方の手を汚すことなど絶対にさせぬ。
やっと見つけた我の半身。
貴方が望むのならば、我は神になり、世界の全てを貴方の手に――
我は微笑む。
何よりも愛しい少女に愛しみを込めた目で。