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19.5#『王族』という価値

 不思議な方。

 それがセナさんの第一印象でした。


 父を救ったというセナという少女は、私達王族を前にしてもあくまでも自然体で。

 最初は戸惑った。本当にこんな少女が?と。

 黒い髪と黒い瞳。容姿は奇抜ではあるけれど、それを含めても整っているとしか言えない顔立ち。そこらの貴族の娘には持ち得ない洗練された雰囲気と、穏やかながらも決して油断してはいけないと思わせるオーラ。

 父から魔術士だと聞いていた。それも、父やリウナスさえも越えるだろう大魔術士。

 そんな者がいるのだろうかと最初は訝しがった。

 顔を合わし、軽い挨拶を交わすも、セナという人物が掴めない。

 この国に害をもたらすような相手ではないことは何となく掴めた。だが、それ以外はさっぱり。何故この国にいるのか。何故その存在し得ない、いや存在を確認したことが無い色を纏っているのか。

 肝心なことは何一つ分からないままで。だから。


「セナさんも何か隠しているのではないですか?」


 なんて、らしくもないことをしてしまったのだ。


 二回目に会ったのは、私がセナさんを呼んだから。

 その時、私は本当にらしくもないことをしてしまった。

 遠回しに囲んで相手を逃げられないようにするのが私であるはずなのに。このように、直接的に相手に問うなど断じてしてはいけないと知っているのに。


 例え、王位に付く身ではなくとも王族たる者の心得位身体に染み付いている。

 感情を無闇に表してはならない。相手に考えを見抜かれてはならない。

 そうやって教え込まれていたはず。

 それなのに、どうして。


 私はセナさんの前では王族としていられないのでしょう。


 弟の婚約者。そう聞いたはずなのに、どうしてか無理矢理にでも抱き締めてしまいたくなる。

 そんな感情知らない。知りたくない。

 いつかはこの国から出ていく私が、この国で一生を過ごすであろうセナさんの傍にはいられない。

 例え、カレスティアの婚約者でなくとも、私はこの感情を伝えるつもりもない。


 この国の秘密、つまり王妃の真実を話している途中、真剣に耳を傾けるセナさんの瞳に吸い込まれて、話を中断させてしまった。

 一段落したのは本当。でも、中断させるつもりはなかった。…セナさんの何処までも深い瞳に見惚れてしまうまでは。

 黒。私は神秘的で妖しい色だと思う。それを纏うセナさんも神秘的で妖しく、そして美しい。

 まるで、牙を持っていると知っていても惹かれてしまうヴァンパイアや刺を持つバラのように、触れては危険だと本能で悟っているのに。それでも、近づきたいと彼女を知りたいと思う私は愚かなのだろうか。


 王族という立場故、貴族の娘であっても私に何処かよそよそしい。それが無いセナさんに恋情のようなものを抱くのは仕方がないのではないだろうか。

 きっと、カレスティアも同じように感じ、だからこそ彼女を慕っているのだろう。










 セナさんは全てを話し終わった私の頭にふと手を乗せて優しく撫でた。


「お疲れ様です。少し位肩の力抜いて下さい。ちゃんと、分かりましたから」


 彼女は何と心が綺麗なのだろう。

 王族だと崇められはしなかった。それでも、王族だからということもあるはずなのに。純粋な王族でないと知っても尚、セナさんは。

 心を探ってみても黒い感情は見受けられない。

 私は自分の『相手の心情を探る力』を信頼している。自信過剰ではなく、王である父ですら私を頼る程。周りの人間の心の動きを気にしながら生きてきたからだろうと思っている。

 それに引っ掛からないということはセナさんは本当に『王族』にこだわりを持っていないのだろう。そんな人は初めてだった。

 表面しか見ない周りから逃げ出したかった。セナさんなら、表面じゃなく内面を見てくれる気がした。


 セナさんはゆっくり、優しく私の頭を撫で回していた。

 母親が子供をあやすような、そんな手付き。

 本当は王族相手に不躾な行為だと少し思ったのだけれど、自分の心が穏やかになっていくのを感じて口には出さないで黙ってその行為を受けていた。

 なでなでなで。

 セナさんの暖かさに傾いてしまいそうだった。


「ダズルス様は、」

「ダズルスで結構です。様付けは苦手なんですよ」

「……では、ダズルスさんは、」


 ダズルス『さん』ですか。

 少しそれに私は不満だった。カレスティアのことは『カレン』と親しく呼ぶのに。

 カレスティアの婚約者だからだと分かっていても、不満を持つ私はさぞ滑稽だろう。

 初めての『嫉妬』という感情。しかし、私はそれに気付かなかった。


「ダズルスさんは、王様と血が繋がっていないと知ってしまったから王位を継がないのですね?」

「はい。弟のカレスティアは血が繋がっているのですから、迷う必要などありませんでした」


 そう言って私はいつものように笑う。

 セナさんはそれを見て、何かを考えるような表情を一瞬だけ見せ…そしてゆっくりと私と目線を合わした。

 セナさんの黒い瞳に何もかも見透かされているような気がした。


「……そうですか。カレンには話すつもりは?」

「まだ計りかねています。セナさんはどうするべきだと思いますか?」

「……あたしは…、」


 強い決意が黒い瞳に宿ったのが確かに見えた。




さて、こんにちは。

今回も酷いぐだぐだ感。もうこれは一生直りません。大人になったら、改訂でもするか。……出来るのか?


今回のお話、一応ダズルス様視点。ダズルスが微妙に計算高くなってきた今日この頃。ただの優男が何故?王族という付与価値のせいなのか?そうなのか?

次回は、一応この続き。けど時間軸は一気に飛ぶかもです。…え?何故かって?この話、時間が全く進んでないからですよ!←理由これだけ。



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