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17#過去~狂気~

 腐れきった王宮で二人の少年少女が無邪気に笑う。

 それはとても異質で…それでもその光景が当たり前だった。


「キー君、今日は何して遊ぶー?」


 少女が問い掛ける。この少女こそ後のローレンス国王妃となるツレアである。


「うぅ~ん…今日は鬼ごっこにしようか!」


 少女、ツレアの問いに答える少年。少年は後のテストア国国王となるキリアマテスである。

 後に呼ばれることとなる『暴虐非道』という二つ名など微塵も感じさせない少年、キリアマテスはただ無邪気に笑った。

 ツレアとキリアマテスは恋人という関係ではなかった。親友でもなかった。友達ですらなかった。

 兄弟でもない、従兄弟でもなく、普通は限り無く親類と呼ぶに相応しい『はとこ』という関係。

 それでも彼らは心で繋がっており、二人にとってお互いは半身…双子の片割れのようなものだった。

 片方が悲しめば、もう片方も悲しくなる。相手が幸せだと自分も幸せ。

 そういう存在だった。


 ……だったはずだった。


 いつからか少年は変わっていった。見た目も大人になったが、それ以上に中身が汚染された。

 国に。親に。国民に。立場に。

 純粋なままで、無邪気なままでいられるはずがなかった。

 周りにうずめく狂気に少年は為す術もなく捕えられた。

 何が少年の心を瞳を笑顔を変えてしまったのだろう。何を間違えたのだろう。

 少年、キリアマテスがもっと別の清らかな土地に生まれてさえいれば、少年は闇に飲み込まれることも無かったのだろうか。

 キリアマテスは少しずつ、でも確実に心を失くしていった。止めることなど誰にも出来なかった。


 いつからか少女は悲しそうに笑うようになった。

 少年を見つめながら苦しそうに笑った。

 少女、ツレアは知っていたのだ。

 もう二度と、昔には戻れない、と。

 ツレアは幸か不幸か狂気には飲み込まれることが無かった。清らかな心は昔から変わらずにその胸にあった。

 その代わり、ツレアは笑顔と少年を失った。

 少年はもう少女を視界に入れて何かを思うことはなかった。それはツレアにとって地獄と同じであった。

 傍にいるのに。誰よりも近くにいるのに。キリアマテスはツレアを見ることが無かった。


 国王が退き、キリアマテスが王になると国の治安はさらに悪くなった。

 ツレアにはそれを止めることなど出来なかった。


 ただ黙って傍にいた。


 キリアマテスは王となってから益々変わっていった。

 欲望のままに荒々しくまるで使い捨ての道具のように女を抱いた。

 気に入らないものは直ぐ様斬り殺した。

 感情を抑えることなく貪欲にただ貪欲に上を求めた。

 何処が上なのか、何が上なのかそんなことはキリアマテスにとってどうでも良かった。


 そんなにも変わってしまったキリアマテスを見つめるツレアの瞳は相変わらず悲しみを纏っていた。鮮明な輝きだったはずのそれは徐々に曇っていった。


 そんなツレアをキリアマテスは傍に置いておくことは拒否しなかった。

 ツレアを見ない代わりに、駒のように扱うこともなかった。他の女達とは、扱いが全然違った。

 きっとそれは無意識の行動だったのだろう。

 例え昔のことであっても自分の半身には手を出したくない、否、手を出してはいけないという子供の頃に刻み付けられた本能のようなものが働いたのだろう。

 …それにツレアが気が付いたのは、ツレアが既に国を去った後だったが。


 いつしかキリアマテスの変わりように耐えられなくなってきたツレアの心。

 ツレアの清らかなままの心では受けとめきれなくなった。それは当然の結果。黒く染まったキリアマテスの心は国中の狂気を集め、取り込んでいたのだから。

 キリアマテスが取り込んだ闇は深くどす黒い。

 白は他の色に染められてしまうように。黒は何物にも染められぬように。

 ツレアにはキリアマテスの闇を薄くすることさえ出来ずに徐々に狂っていく。


「キー君…」


 ツレアは変わっていく自分に気付いていた。

 そして、ツレアは自分を取り戻す、その為に。


 ――国を。自分の半身を。――捨てた。


 ツレアは国を後にして、ただひたすらに安息の地を求めた。

 キリアマテスが上を目指したように。いや、それ以上に。

 そして辿り着いたのがローレンス国。

 ローレンス国にはテストア国にはない光が溢れていた、そう後にツレアはサレストに語ることとなった。










 話が一段落したのか、ダズルスは『一息しましょうか』と言って笑った。

 あたしはただ黙って首を縦に振る。ダズルスはそれで分かってくれたようだ。寧ろ、分かってもらわないと意味が無いのだが。

 ダズルスは紅茶…ではなく白湯を用意してくれた。

 何故に白湯?とは思ったが口に出すことはしない。もしかしてこの世界にはお茶も紅茶も存在しないのかもしれない。

 存在していたとしても、せっかく皇子自ら用意してくれたんだし、白湯は嫌いでは無いのだから、文句を言うつもりはない。


「今までの話で理解出来なかったところなどはありましたか?」

「いえ」

「…では、続きをお話しても?」

「はい」


 ダズルスは優しく笑う。

 あたしも頬が緩んだ。

 この先の展開が予想するものであるだろうことも、カレンには話せない理由がこの話の続きにあるだろうということも何となく分かってはいたけれど。


「…父上は母上の過去を話し終わった後に母上との思い出を語ってくれました」


 そうダズルスは続きを語り出す。

 あたしは黙って耳を傾けた。


「それはそれは沢山の思い出を見たこともない優しい顔で語ってくれました」





おはようございます、プリアです。

今日はテスト…勉強してません← まぁ、どうにかなるんじゃないですか?


今回のお話、こんな感じになりましたが…どうでしょうか?細かく過去をお話すると長くなりそうだったので大分省いたのですが、省き過ぎて理解しにくいという…すみませんっ!

このメテオに着いていけてる人は勇者だと思います。…というか、想像力豊か過ぎる御方です←


次の過去編はツレアの秘密ぱーとつー。セナちゃんは既に気付きかけているようですが、皆様はどうでしょうか?



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