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16#過去~真実~

 時は遡り…

 ――今から約四年前。


 カレスティア十歳。ダズルス十九歳。


「兄さん、父さんが呼んでたよ」

「…父上が?」


 カレスティアに声をかけられたダズルスは『すぐ行く』と言って席を立った。


「呼び出してすまないな」

「いえ、構いませんが…」「もうすぐお前も二十になるだろう?」

「一週間後ですね」


 そう。一週間後にはダズルス、つまりこのローレンス国第一皇子の聖誕祭が行われる。

 王はその前に、と心を決めていた。

 どんなに辛いものであったとしても、知る権利がある。どんなに聞きたくないことでも、知らなければいけない義務がある。

 この国の王として…いや父親として、伝えなくてはいけないのだ。

 ダズルスは何かを感じ取ったのか、黙ったまま。


「…言わなければいけないことがある」

「……はい」

「この国での最機密事項だ」


 機密事項。

 それはたとえ王族であっても、むやみに知ることは許されない。外部に漏らす事は固く禁じられ、行った人物はそれなりの罰を与えられる。

 機密事項はいずれも国に深く関わっている。その中でも特に深い関わりを持つ"国が揺るがされかねない"程の機密事項を最機密事項と呼ぶ。最機密事項は、知ってはいけない、そういうものなのだ。

 それを一般市民よりも遥かに知っているダズルスは、表面上はいつもと変わらないものの心中は穏やかではなかった。勿論、王はそのことを察していた。


「…それは、どのようなことでしょうか…?」

「お前の母、つまり王妃のことだ」


 ダズルスとカレスティアの母はそれはそれは綺麗な人であった。亡くなる寸前まで強い母で居続けた。

 王妃としても、聡明で立派な人であった。王を支え、国民を愛した。優しい人だった。

 そんな母に国を揺るがす程の秘密が…?


「王妃、ツレアには二つの知ってはならない秘密がある。その一つはお前にも関わりがあること…いや、お前自身のことと言って良い」

「はい」

「ダグラス、」

「はい」


「お前は、私の子ではない」


「……!?」


 ダズルスは瞠目し、父親を見つめ返す。

 王、サレストの目は曇ることなく澄み切り、嘘などついていないと訴えていた。

 ただ、目と対照的に眉間には皺が寄り、口元は何かに堪えるように引き締められていた。それがサレストの決意の表れでもあり、苦渋の上の決断だとダズルスは悟る。

 これは嘘でなく、真実である、そう口にしなくとも察したダズルスは困惑した。


「…カレスティアは、父上と母上の子であることは皆承知しています。では私とカレスティアは…異父兄弟ということでしょうか?」

「ああ、そうだ。お前の本当の父親は…」

「無理に教えて下さらなくても結構です。本当の父親など…私にとっては何の価値もない」


 ダズルスは聞くことを拒否した。

 それは真実を受け入れられないからではない。

 本当の父親が誰であろうと、王であるサレストと血が繋がっていなかろうと、自分の父親と呼べる相手はただ一人、サレストである。そう思っていたからだ。

 だが、本当の父親を知りたいという気持ちが全く無いわけではなかった。知れるなら知っても良い、それ位の気持ちではあったが。

 そして真実をただ一人の父親の口から聞き、聞いたことを後悔することになる。


「……いや、聞いてくれ。お前の本当の父親はテストア国の王、キリアマテスだ」


 テストア国。

 暴虐の限りを尽くす、最凶最悪の国。

 国には罪人がはこびり、取り除く事などもはや不可能。安全などという言葉など程遠い。安心、安堵する場は一ミリもなく、善人…いや、普通の国民は国民全ての一割もいないと聞く。

 良い噂など一つも聞かない悪逆非道の王国。

 それがテストア国の現状である。

 そんな国の王も例に漏れず善人などとは程遠い。善人ではテストア国をまとめ上げるということは出来ないのだ。それ故、誇り高くあるべき王族も堕ちた。誇りは金に成らず。誇りはとうに捨てた。ただ貪欲に地位と金と力を求めた。

 今代の王であるキリアマテスは歴代の王の中でも悪名高い。テストア国に最も相応しい王だとの噂だ。…良い意味では決してないが。


「……テストア、国…」


 ダズルスの頭の中に詰め込んだテストア国に関する知識が駆け巡った。

 ……私は…あんな国…あんな王の実子だと言うのか…?


「公表など出来ないが、テストア国はツレアの出身国だ」

「……」

「少し昔話をしようか」


 これは、私とツレアが出会う前の話。私がツレアから聞いた全てだ。

 そう前置きして、サレストはゆっくりと語りだす。


 ――辛く悲しいツレアの過去を。


 ――辛く悲しいテストア国のある少年と少女の物語を。



過去編1。作者である私もツレアの過去がどんなものか未だはっきりとは分かっておりません…いいのか、それで。

もう一つの真実は出来ておりますが…過去編下手すると大分長く…いえ、三話くらいで詰め込みます。…詰め込むほどありませんが…。次回はツレアの過去。

急に名前が出てきたテストア国とキリアマテス様。皆様話に着いていけてますか?私には無理です← ところで、キリアマテスって名前、キリマンジャロとアマテラスから出てきたのかしら…。

そういえば、姿形も出なくなったリー君。復活の際はたんと出してあげましょうかね。。




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