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15#抜け目ない洞察力

 あたしは手早く炒飯を作って厨房の皆さんにご馳走した。

 料理長さんの説明の時に米っぽいものがあり、目を付けていたのだ。

 炒飯なんて手抜き料理、誰にでも作れるはずだけど、皆絶賛してくれた。

 米のようなもの、ツアバスの実は炊いたり、焼いたりして食べるなんてことはしないらしい。煮て、どろどろにし、デザートの暈増しに使うんだとか。

 暈増しとか、王族相手に使っちゃうんだ…と一瞬思ったけど、すぐに訂正された。王族ではなく、使用人用らしい。

 使用人のご飯は、料理長さん以外のコックさん達が担当している。でも、たまに料理長さんも気分で加わるそうだ。気分で参加とか良いんだろうか?…良いのか。料理長さんは王族専属っぽいし。


 ちなみに大絶賛の嵐の後、料理長さんはあたしの近くまで寄ってきてこう言った。


「セナ様が作って下さった料理、チャーハンを今後メニューとして加えたいのですが…」


 あたしはそれを聞いて、爆笑した。

 『王族でも使用人でも出せそうな料理ですから是非!』そう力説する料理長さんの目がマジで、あたしはまたも笑ってしまった。

 こんな一般庶民が食べる炒飯を意地でも王族に出そうとする料理長さん。

 それに賛成する厨房の皆さん。

 結局あたしは笑いながらも許可し、めでたく炒飯は使用人から王族まで幅広く食べられるメニューとして名乗りを挙げたのだった。


 そんなこともあって、あたしと料理長さんは、週一で互いの料理を披露し評価し合うという"料理試食会"を開催する程の仲となるのだが、それはまた別のお話。










 ――夜。

 廊下でばったり出会ったカレンと挨拶し、そのまますぐ別れてあたしは第一皇子の部屋へと向かった。

 厨房に向かう途中にカレンが案内してくれていたので、迷わずたどり着けることだろう。


 誰もいない廊下を進み、目の前に大きな扉が立ちはだかった。

 そう、第一皇子、ダズルス様のお部屋である。

 あたしが軽く扉をノックすると、待っていた『どうぞ』と言う許可の言葉はないまま、扉がゆっくりと開かれた。


「ようこそ、セナさん」


 あたしだと分かっていたらしい。

 微笑みを浮かべて優しい声で紡ぐ言葉が甘ったるい。何故だ。

 あたしはこういう奴は苦手だ。こういう…色気?が溢れて、無意識にでも相手を虜にしてそうな、そんな奴は。ホント扱いにくい。


「お入り下さい」

「ありがとうございます」


 ダズルス様は、あたしを高級のふかふかソファーに座らせ、自分は一人掛けの椅子に座った。

 ダズルス様のお部屋は余りに豪華すぎて、目がチカチカする。シャンデリアは勿論、床は大理石、カーペットは光沢を放って存在を主張している。壁にはキラキラと輝く…ダイヤモンドの欠片のようなものが散りばめられていた。それがシャンデリアの光を反射して、目に毒。いや本当に。

 よくこんな部屋に住めるなぁと逆に感心してしまう。王族とはこのようなものなのだろうか。


「ところで、セナさんは私の父を救って下さったとか」

「…そうですね」

「カレスティアから話を聞いたのですが、不審な点があるのですよ。カレスティアは『父が襲われかけた時、すぐ傍にいたセナさんは瞬間移動でもしたかのように父の前にいた』と」

「……」


 何を言いたいのですか?なんて言えない雰囲気だった。

 彼はあたしが何者なのか、疑っているんだ。敵なのではないか、と。

 あたしが敵なら、辻褄が合わないこともない。

 髪と瞳を何らかの方法で奇抜な色に変え、怪しい奴として城に送られる。それにより、城に堂々と入ることが出来る。そして、あたしの目の前で王様を襲わせる。あたしはそれを助けて、王様からの信用を得、信用仕切った頃になってから王様を襲う。

 緻密な計算の上に起つ、計画的な犯行。

 でも、残念ながらそんな裏は無い。そんな計画は全くない。考えすぎだ。


「私、セナさんならこの国の秘密を教えても構わないと、そう思っているのです」

「…そうですか」

「セナさんも何か隠していることがあるのではないですか?」


 隠していること。

 ダズルス様はそう言った。

 あたしは何と返そうかと一瞬だけ迷い、そして口を開く。

「勿論ありますよ。ですがいくらダズルス様であろうとも、全てをお教えするわけにはいきません」

「それは…少しなら教えて下さる、そう解釈しても?」

「構いません」


 ダズルス様は目を見開いて驚いた顔をした後、すぐにまた微笑みを浮かべた。

 あたしの言葉が予想外だったらしい。


 ダズルス様は『先に私からこの国についてお話させていただきます』と口を開き、顔を床に向けた。


「話が長くなるかも知れません。それでもよろしいですか?」


 俯いていた顔を上げあたしを強い目で見据えて言うダズルス様。

 その質問、いや確認にあたしも顔を引き締めこう答えた。


「どんなに長くなっても最後まで聞かせて下さい」



 ダズルス様は、優しいいつもの微笑みで笑った。




はわーこんちはです。

今回の前半部分…前回に入れ込んじゃえば良かったかもと今更ながら後悔しております。

ダグラス料理長様、結構気に入ってます。短編一本くらいすらすら書けそうな程。書きませんが。

後半ですが…あれ?こんなんでいいの?

国の秘密とか、プリアは知りません← 次回どうなることやら…微妙な過去編突入。ローレンス国編がいつ終わるのか、セナにとって何日後か、そんなことは神様しか知らんことなのです。


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