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13#"利用できるものは利用する"

 一人の少年がいた。少年は一人の少女を求めて昼夜関係なく街を彷徨う。

 自分の人脈と立場をフル活用させた。自分の力を惜しみなく発揮した。

 だが、少年は少女の足取りさえ掴む事が出来なかった。


「くそ…っ、何処に居るんだよ…っ!」


 携帯を握り締め、仲間からの連絡を待つ。

 少年は、その街の暴走族の副総長。

 所謂ブレーンという奴で、喧嘩にはほとんど参加しない。喧嘩が弱いわけではなく、寧ろ総長と同じ位の強さを持っている。

 そんな彼が喧嘩に極力参加しないようにしているのは、一人の少女、彼の姉に心配をかけたくはないから。そう、この姉こそ、今血眼になって捜している少女である。


「………セナ」

 姉の名を呼ぶ少年。

 彼の姉は二日前に突如家族の前から消えてしまった。

 何処に行ったのかなど誰も知らない。

 少年はただ、姉の無事の帰還を願うばかりだった。










 違う場所にも同じ少女を捜し求める一人の青年がいた。

 彼は少年と少女の兄。職業はエリートサラリーマン。

 そんな彼は今まで使っていなかった為に溜りに溜まった有給を使って会社を休んでいた。

 期限は一週間。たったそれだけ。

 一週間を過ぎたらまた以前と寸分変わらない日常が待っている。少女、セナという存在などまるで最初からいなかったかのように、日常を送らなければいけない。耐えられなかった、彼女がいないなど。

 これからも家族みんな、変わらずに過ごせると信じていたのに。そうであるはずだったのに。


「セナ…お前は…」


 ――今、何処にいる?

 青年の切実な思いは空に溶けて、消えた。

 誰もその問いに答えてはくれなかった。










 少女、セナは、彼らとは別の次元、別の世界にいた。


「カレン」

「ん、何?」

「お兄さん、好き?」

「どうしたの、急に」

「うん、ちょっとね」

「……勿論兄さんは好きだよ」

「……だよね」


 セナは一度目を伏せて、それから空を見上げて、悲しそうに笑った。

 この空は、あっちにも続いてくれているのかな。


「セナ」

「とうしたの」

「僕、セナも好きだよ」


 そんなことをカレンがちょっとばかり真剣に言うものだから、セナは笑った。

 今度は純粋なとても綺麗な笑顔だった。










 あたしは元の世界に帰りたいなど思わない。

 それでも元の世界が、暖かい家族の存在が恋しくなることだってあるのだろう。

 それがいけないことなどとは思わない。思えない。

 彼らの存在は忘れない。

 もし、帰れるすべがあるのなら、その時はこの世界に未練がましく縋りつこうなんてしない。帰るんだ。

 この世界はあたしの世界では決してなりえないのだから。


「セナ、そろそろ戻ろうっか。夕ご飯の時間に間に合わなくなっちゃうよ」

「そうだね」

「今日はペシチーナがメインなんだ」

「ペシチーナ?」


 この世界の料理名など一つも知らない。昼に出された料理は見たことも聞いたこともないものばかりだったことを思い出した。


「あれ?知らない?麺を海鮮で味をとったタレに絡ませたやつなんだけど…」


 カレンの言葉を聞いてあたしの頭に浮かんだのは、あさりのパスタ。あたしの大好物だったりする。

 あさりのパスタじゃなくてもそれっぽいものだったらいいなあ…。


「お城に戻ったら、厨房のに案内してくれる?」

「厨房に?」

「うん」


 あさりのパスタがなければ、作ればいいのだ。

 作り方は知ってるけど、材料がない。その材料も料理長などに似たような食材を教えてもらえれば何とかなるだろう。

 カレンか王様に頼めば、きっとすぐに取り揃えてくれる。

 何とも酷い話だと自分でも思う。

 でも、利用できるものは利用する!これ鉄則!

 あさりのパスタの為なら、有りったけ使う所存だ。


「分かった、厨房ね。でも、厨房に行って何するつもりなの?」

「んー…料理、かな」


 というよりは、料理の下準備かな…。


「ふーん。その料理、僕にも食べさせてね」

「え、別にプロが作ったの毎日食べてるでしょ。今更あたしの料理なんて…」

「セナのが食べたいの。婚約者の料理を食べて何が悪いの?」

「いや、婚約者じゃ…」

「別に僕の為に作れなんて言ってないよ。まあ、将来は僕の為だけに作ってもらうことになると思うけどね」


 話が飛躍しすぎだ。

 なんて突っ込めるはずもなく、あたしは皇子を前に敗北を認めるより他になかった。

 この若干14歳である皇子は強引かつ有無を言わせない。

 実は世界で最強なのはこの少年ではないかと思ってしまうのは否めない。

 このままではどうなってしまうのだろう、と将来に不安を感じてしまう。

 プレイボーイにはならないでくれ、頼むから。

 女泣かせの皇子様なんて笑えない。

 あたしはそう思いつつも、心の何処かでそんな心配は必要ないと思う。

 あたしがこの世界を見捨てた時点で、彼の未来は閉じてしまうのだから。

 未来など、そんなものを考えることは不必要だ。


 それでも、未来に想いを馳せてしまうのは、きっと人間の習性ってやつなんだろう。

 それが間違っているとも合っているとも思わないけど、ただ、そうであれば良いと思ってしまう。


「ねぇ、カレン」

「何?」

「カレンにとって何が一番大事?」


 この国、と答えられたら、あたしはきっと少し気持ちが傾くだろう。

 あたしの使命。色んな人、色んな人生、色んな幸せ、不幸を見て決める。

 それはあたし独断の判断ではいけないのだ。


「僕の一番大事なもの?」

「うん」

「今の僕にとって一番大事で一番必要なものは…」


 ――セナ、かな。

 ちょっと照れ臭そうにしながらも満面の笑みでそういうカレンに、何も言い返せなかった。

 カレンの気持ちが真っすぐすぎて。

 カレンの瞳が綺麗すぎて。


 ――ねぇ、カレン。

 あたしは……





お久しぶりです、プリアです。またゆっくりとちょびちょびと更新していくつもりです。

編集は実はまだ終わってないのですが…暇な時にしようと思ってます。

小説の字数ですが、また2000文字超位に戻りますので悪しからず。


久しぶりの更新過ぎて、あれ、こんな感じだったっけ?長く書けない!!と奮闘しましたよ…。大変でした…。

設定も何か訳わからん方向に…弟の不良設定とかいらない(笑)


こんなテンパりまくりなプリアですが、これからもどうぞ温かい目で見てやってください。


Merry Christmas☆彡




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