04 ◇中卒でごめんなさい◇
「エントリーすら……できないっ!」
自宅のリビングにあるパソコンに向かっていた私は、現実に打ちのめされて頭を抱えていた。
遅れている遅れていると言われていた日本のIT化も、いまやすっかり完了。
郵送で履歴書を送る時代なんかとっくに終わっていて、今やどんな零細企業の求人でも、Web上の入力フォームなどからエントリーするのが当たり前になっている。
紙とペンなんかより、よほど効率的だ。
そう……中卒を効率的に排除するには、もってこいの仕組みだ。
「学歴不問、つっても、高校を卒業してるのが大前提だもんなあ……」
中卒になって帰宅した私は、すぐにパソコンにかじりついて、大手冒険者法人から零細冒険者事務所に至るまで、あらゆる求人に目を通した。ハローワークまでチェックした。
……でも、検索条件に『中卒』って入力するだけで、
『申し訳ありません。条件に合う求人が見つかりませんでした』
って謝られちゃう……。
謝らなくていいんだよ、Webサイトくん。
中卒が悪いんだから……。
いや、もちろん清掃会社の求人とかならあるんだけど……私はあくまで、冒険者志望だ。
だって冒険者こそが、私の才能を、一番生かせる仕事だから。
スキルを生かせる仕事に就ければ、きっといっぱいお金を稼いで、お父さんやお母さんに親孝行ができるから。
……とはいえ、エントリーすらできないのでは、スキルを生かすも殺すもなかった。
どうしよう。
もしかして……18歳未満であることに付加価値がついちゃうような、いかがわしい仕事に就かなきゃいけないのかな。
なんていう恐ろしい考えさえ脳裏をよぎってくる。
もちろん、他の高校に編入学、という手は考えた。
両親もきっと、それを一番望んでいるだろう。
しかしその場合、来月から返済が始まる教育ローンが返せない。
調べたところ、私が借りている教育ローンは両親との連帯債務で、破産しても免責されないらしい。
だから、私が働いて返さなければ、両親の再出発に大きな悪影響を与える。
だから……やっぱり、私は働きたい。
「いっそ個人事業主として、ソロで冒険に出るっていう手も……いやいや!」
私は自分で言っていることに、自分で首を振った。
「未経験でいきなり実戦に出るのは、危なすぎるよ……最初はちゃんとベテランの下について、仕事を覚えないと」
待っている両親がいるのに、棺桶に入って帰宅するわけにはいかない……ソロは却下だ。
にしても、本当にどうしよう……両親が会社のことで忙しくしている間に就職を決めて、安心させてあげる計画だったのに……こんなこと、友達にも相談できないしなあ……。
とはいえ、ここで絶望してへたり込んだりしないのが、私の良いところ。
「よし! こうなったら!」
私はA4のコピー用紙を取り出して、ボールペンで書き込み始めた。