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夢が夢で終わりません!  作者: ソフィア
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目覚めたら一人ぼっちでした

まるで現実のような夢なのか


はたまた、夢のような現実なのか、


運命を握るのは私




目を開けると見覚えのない白い天井。

片目、頭、手足の至る所に包帯が巻かれている。

上半身を起こそうとすればズキズキと痛みが襲いかかってきた。


「ッ……」


どれくらい眠っていたのか、声が掠れて大きな声が出せない。

まずは状況確認をしよう。

深く深呼吸をし、一つ一つ記憶を辿る。




あの日、海斗(かいと)に放課後話があると言われて人通りの少ない屋上に向かう階段で待ち合わせをしていた。

約束している日に限ってHR(ホームルーム)が長引いてしまい、駆け足で向かうと海斗は階段に座って待っていた。


「海斗、遅くなってごめんね。」


「やっほ、全然大丈夫。こっちこそ急に悪かったな。」


遅れたことをあまり気に止めていないようで声も表情も柔らかい。


「それで話って?」


海斗の横に座り込み、話に耳を傾ける。


「夕のことなんだけど、今日偶然、聞いちゃったんだ。好きな人がいるって。その人に今度の夏の合宿で告白するって…」


空気がどんよりとし、早口に話し始めた海斗からは焦りが見えた。



私と(ゆう)はクラスも同じ親友である。

海斗は男子バスケットボール部所属で、私たちはマネージャー。

海斗は夕に恋心を抱いているようで前々から夕と仲のいい私によく相談をしてきていた。

今回の相談内容は夕の告白問題についてのようだが、私は全く焦っていない。

むしろやっと進展するのかと嬉しく思っている。

察しがつくかと思うが、夕が好きなのは海斗なのだ。

なので、この問題は何も心配することはない。

どちらかというと今の状況の方が危ういだろう。

いつもなら電話やSNSでしか相談をしてこない海斗が会って話したいと言うので何かあったのかと気がかりでしかたなく、二つ返事で承諾した。

だが、開けた箱は思っていたものとは違く、私には安心感を与えるものであったということだ。

特に問題はなかったということで、出来れば早めにこの二人っきりの状況から脱出したい。

夕に見られて勘違いでもされたら困る。



だが、海斗にはどう言えばいいだろうか。

まさか、


「大丈夫だよ、その相手は海斗だから」


なんて言えるはずもない。

どうしたものかと頭を悩ませていると良い案が浮かんできた。


「なら、思い切って海斗も夕に告白したらどうかな?望む結果が得られるかなんて分からないけど、自分の気持ちを伝えることが大事だと思うなぁ。夕ならちゃんと受け止めてくれると思うよ」


上手くいかないはずが無い。

このシナリオなら二人ともお互いに幸せであろう。

海斗は少し驚いている様子だが、納得したようで


「そうだな、男なら当たって砕けろ、だよな!俺も夕なら受け止めてくれるって信じてる。」


「じゃあ、問題解決だね、上手くいくことを願ってるよ。」


「おう!ありがとな」


ニカッと笑顔を見せる姿は迷いや心配を吹っ切れたようだ。

互いに軽い挨拶を交わし、私は急ぎ足で教室へと戻る。



夕の姿が見えず、まさかと思う。

海斗のことになると前が見えなくなる子だから勘違いさせて、傷付けてしまっていないといいのだが…


「美月、早く帰ろ。どこ行ってたの?探したよ。」


背後には頬を膨らませた私を呼ぶ夕の姿があった。

考え事をしていたからか、全く夕の気配に気がつかなかった。


「わっ、ごめん!うん、帰ろー」


カバンを肩に提げる夕の声も表情も足取りもいつも通りである。

最悪の場合は回避出来たのかもしれない。

安心して夕の隣を歩く。



だが、突然その時はやってきたのだ。

信号が変わるのを待っていると


「ねぇ、美月。私に隠してる事ない?例えば海斗との事とか。」


たわいない話をして笑っていた夕に笑顔がない。

二人で話しているところを見られている上に勘違いさせてしまったようだ。

ここは思い切って言ってしまうべきだろうか、話の内容は言えないけれど、二人でいたことに深い意味はないことは話せば夕なら分かってくれるはず。


「もしそれが今日の事を言ってるのなら、海斗からちょっと相談受けてただけだよ。」


「どんな相談?私には言えないこと?」


「その、あの…」


まずい、やっぱり聞いてくるよね。


「私には言えないようなこと話してたんだ。」


「ち、違う!海斗が、その夕に好きな人がいるって聞いたみたいで本当かって聞いてきただけ!海斗だよとか言ってないから、ごめんね。勘違いさせるようなことして。」


「えっ、それ本当に?私の方こそごめん。疑うなんて…」


顔が真っ赤に染っている夕は海斗が自分に興味を示してくれていることに嬉しいのだろう。

あながち嘘は言っていない。

ちょっと内容がズレたことは二人がくっついた後にでも謝れば大丈夫だろう。


「いいの、それよりも夕の恋が順調そうで嬉しいよ。」


その言葉を聞いた夕は抱きついてきて、ありがとうと言ってくれた。

私も嬉しくってムギュって抱き返した。


信号が変わり、足取りの軽い夕の姿に再度安心する。

だが、今日はやはりついてないようだ。



クラクションの音。

猛スピードでやってくる車。

夕はそれに気づいていない。

考えもなく体が動いた。

夕の背中を強く押す。

よかった…

間に合った…

そこからは強い衝撃と夕の驚いた顔だけ覚えている。



こうして今に至る。

段々、状況の整理が出来てきた。

あの衝撃によってら死んでしまったかと思ったのだが、どうにか生きているようだ。

体の痛みが生きている実感を湧かせる。

では、ここはどこ?

病院では無さそうだ。

横になっているベッドやいくつかの装飾品、明かりの灯ったシャンデリアは見るからに高価な物ばかり。

体が痛くて一人の力ではこの部屋から出る事も出来そうにない。

だれかが部屋に訪れてくるのを待つしかないようだ。

私が起きたことに早く気がついてくれるといいな。

この度は夢が夢で終わりません!を読んでくださりありがとうございます。楽しんで頂けているでしょうか?作者も楽しく書き進められたらと思っております。申し訳ないのですが、誤字脱字がありましたら教えて下さると助かります。沢山のご感想、お待ちしております。



ソフィア

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