おそらにぷかぷか
少年は、もう長いことベッドで暮らしていました。
たまに苦しいときもあるけど、お父さんとお母さんは優しくて、優やは面白くて、先生やおばさんはしんせつです。となりのこうきくんと話すことも楽しいです。だがら、ぼくは幸せです。でもたまに優やがサッカークラブの話をしてくれる時、ちょっとだけ悲しい気持ちになります。ぼくもそのクラブに入っていましたがずっとお休みしているので、ぼくもサッカーしたいなと思います。でも、優也には言いません。優也は僕が楽しい気持ちになるようにお話ししてくれているからです。優也がサッカーの話をするとき、僕はブラジルについて考えます。ブラジルは、世界で一番サッカーが強い国だとこうき君が言っていました。お父さんに、ブラジルがどこにあるのか聞いたら、地球ぎを買ってきてくれて、教えてくれました。日本を見るとブラジルが見えなくて、ブラジルを見ると日本が見えませんでした。とても遠いんだと思いました。地球ぎはベッドのとなりのつくえの上のサッカーボールのとなりにずっとおいています。名前だけ知ってる国とか、ぜんぜん知らない国とかも見れるのでおもしろいです。いつか、地球のいろんなところに行きたいと思います。
最近は苦しいときが多いです。いつもぼくが苦しい時、お母さんはずっと近くにいてなでてくれました。お父さんはいつもより仕事から早く来て、手をにぎってくれました。優やは、お兄ちゃんがんばって、がんばってと言ってくれました。でも、最近は苦しいことが多いので、先生とか、おばちゃんとか、おばちゃんと同じ人とかといることが多いです。その時はこうきくんとかと話せないので少しさみしいです。先生はぼくがさみしいとわかったみたいで、うちゅうの話をしてくれました。うちゅうは地球の外にある、とても広いばしょです。地球より大きい星もたくさんありますが、人間はだれもいないです。だから、地球にいて、先生といっしょにいるからぼくはさみしくないと先生は言っていました。あまりわからなかったけど、地球より大きいものがあると知ってびっくりしました。
今日は朝まで苦しかったのに、今はあんまり苦しくありません。お昼なのに、お父さんもお母さんも優やもいます。お父さんとお母さんは悲しそうな顔をしています。優やは、おこられてるときみたいな顔でした。
少年は、自分はもうすぐ死ぬんだと気づきました。長い間病院で暮らしていて、少年はただ純粋なままではいられませんでした。自分の体調、両親の表情、弟の視線、先生の態度、そういったものからいろんなものを感じ取ってきた少年にとって、今の自分の状態が何を示すか理解するなど、簡単なものです。
お父さんとお母さんと優やには、ごめんなさいという気持ちがあります。あと、ありがとうという気持ちもあります。なにか言おうかな、言わないほうがいいかな、と思っていたら、体が軽くなりました。プールにいるときみたいに、ふわっとうき上がりました。そして、苦しいのもなくなりました。とても気持ちがいいかんじです。お母さんにだっこしてもらっていたときみたいです。今から天国に行くのかなと思いましたが、そのままぼくはどんどん持ち上がっていきます。下を見ると、お父さんとお母さんは泣いています。優やはそれを見てびっくりしています。サッカーボールと地球ぎが見えました。もうサッカーはできないし、ブラジルには行けないんだと気づきました。気持ちいいけど、さみしい気持ちでした。それでもぐんぐん上がっていきます。病院の外に出ました。家と、学校も見えます。悲しい気持ちになってきました。もどりたいなと思いました。でも、まだまだあがっていきます。天国はずっと上にあるのかなと思いました。ぼくのちょっと遠くにも浮かび上がってる人たちが見えます。あの人たちも天国に行く人なのかなと思います。しばらく上がっていくと、内も学校も見えなくなって、日本全部が見えるようになりました。だんだん、まわりが暗くなってきました。下は夜じゃないのに、暗くなってきました。もしかしたら、ぼくはじごくにいくのかもしれないと思いました。ぼくがキノコをたべなかったら、お母さんはじごくにつれていかれるといっていました。その時はうそだと思っていましたが、本当なのかもしれないと思いました。でも、やっぱりぼくがついたのはじごくではありませんでした。宇宙だったのです。人は死んだら天国やじごくじゃなくて、宇宙に行くのです。先生も言ってなかったので、ぼくは知らなくて、びっくりしました。あんなに大きく見えていた地球がだんだん小さくなってきました。月のウサギに手もふりました。水星でひと泳ぎして、木星では工作をしました。お日さまを食べ終わった後、少年の世界は闇と星々の小さな明かりだけになってしまいました。退屈になったので、お母さんの事とか、ブラジルの事とか、いろんなことを考えました。でも、だんだん、考えることがなくなってきました。病院にいたときより長い時間がたっているように感じました。でも、気持ち良いので、平気です。ずっと、気持ちのいい暗闇を進んでいるうちに、少年は、自分が周りによってできていたのだと気づきました。おかあさんがいるからぼくが子どもで、優やがいるからぼくはお兄ちゃんだった。お父さんがおしえてくれたからブラジルがすきなぼくなんだ。簡単なようで実は小学校の同級生も、サッカークラブのいっくんも、もしかしたら先生も知らないかもしれません。人間は社会的存在。他人によって規定される。じゃあ、今のぼくはなんだろう、少年は思いました。今、周りには誰もいません。きもちいい、くらい、なんにもいない。ぼくはいワットなんだろう。今のぼくはなにもない。noがぼく。そう考えると、ちょっといやな気分になりました。でも、やっぱりなにもないので、それを受け入れるしかないのだ。ある種の諦めが私たちを襲う。そうすると、すーっとまわりがぼくを包み、しょうねんにはいっていきました。ぼくは溶け出していく。お父さぼくは薄くひろがっていきます。だんだんなにもわmamaからなくなっていく。少年=なにもないです ぼくはなに きもちい 悲しい? いちごじゅーす おかあさんありがとうとnihilいう気持ちになる 少年はならない いない ゆうやばっかり きもちい あいうえお ・ごk あたらしいかおよ い
消えた?