碧いもや
取り留めのない夢の話です。
中学の頃の友人と大学の友人がなぜか一緒に居り、たぶんなにかの武道であろう。の、試合で新発田にいた(景色は全く新発田ではない。)試合会場の近くにある魚市をその仲間たちと見ていたところ、自分だけはぐれてしまった。魚市は壁で遮られておらず、まるで巨大な東屋のような構造で、東屋と唯一違うのは、大きな硝子板によって外界と区切られており、魚市の中から外がよく見える点である。先刻の競売の名残りであろう。床には、試食用に大量の白身魚の切り身が直接散りばめ置かれていた。その光景がまるで月明かりに煌めく薄野のようで、なんとも印象的である。
話を戻そう。はぐれた私は必死で仲間を探した。だが、ついさっきまでそこらにいたはずの仲間は誰一人として見つからず、遂には魚市の人間が自分を残して残らず消えてしまっていた。
私はさらに焦った。探すうちに、隣接している水族博物館の前広場まで来た。その瞬間である。私は以前そこを訪れた記憶があることを思い出した。しかもそこが父母子殺害事件の現場であったことまで直感した。私は仲間を探して走っていたが、それから程なくして、妙な人影が見え始めた。
それはまるでテレビ画面に残る焼き付きで、碧色の電波のようなものが空中で3つの人の形を成していた。大きいものが2つ。小さいものが1つ。
嫌な直感が的中した。私は無我夢中で走った。そして広場を抜けると大きな通りに出た。だが、誰もいない。私は藁にもすがる思いで必死に人を探した。後ろを振り返ると、着実にその"もの"が追ってきているのが見えた。恐怖恐怖恐怖。 ふと、通りにあるベンチが目に留まった。そこに現代風の、キャップを被った若者がひとり惣菜を食べていた。私はすぐさま駆け寄った。「助けてください!助けてください!幽霊に追われているんです!お願いします!!」…「………」若者はこちらを怪訝そうに見つめるばかりで一向に助けてくれる素振りを見せない。「お願いします!!一刻も早くここを離れないと!」そうする内に、私の後ろから迫ってくるモヤが見えたのか、やっと青年は私を連れるようにして走り出した。だが、青年の走る速度は私を上回っていて、私は置いていかれない為に、必死で青年の服の裾を掴みながら走った。やっと見つけた蜘蛛の糸をここで離してなるものか!そうしてしばらく走った後、青年はなにかを見留めたようにふと、止まった。(なぜ止まったんだ!奴らがすぐそこまで来ているというのに!!)青年はおもむろにバッグから玩具の銃を取り出し、構えた。照準の先を見ると、横断歩道の手前で止まる男が見えた。なるほど。あの男をこちらに誘き寄せて囮になってもらおうという訳だ。しかし、時間が無い。影はすぐそこまで………。そう思い、振り返った瞬間。目の前いっぱいに碧いモヤが広がった…
…………………フヘェン!!!!!!!
私は情けない叫び声と共に目を覚ました。心臓が早鐘のように鳴っている。窓の外は碧であった。