第二節
静かな夕焼け、その淡い光が道行く人々と赤目の少女と少年を照らしている。この小さな少女、マリーは貴族の一人娘で、周りからの期待による重圧が嫌になり家出をしている。そして隣にいる少年、フェングに綺麗なものを見せてあげると言われ、王国で二番目に大きな街ドゥリスパーに来ていた。
「なぁザイフェング、ここで私に何を見せてくれるんだ?」
マリーは少しワクワクしながらフェングを見る。彼女は世間的に言う箱入り娘で、街を歩くのもほとんど経験がない。だから何か新しいものが見れると思うととても心浮かれた。そんな彼女の様子は本当に周りからの重圧が嫌になって家出してきているのか疑うほどだ。今にも踊り出しそうなマリーを手で静止しつつ、彼はマリーの問いに答える。
「それは見てからのお楽しみだよ」
マリーはとても気になった。この言い方をされると大体の人間は気になる。それでも彼女はそれ以上は聞くことはせず、目的地まで鼻歌とスキップ混じりで歩いた。
歩いて数分、彼女たちは太陽の光が十分に行き届かない路地裏に建っているボロ小屋にたどり着いた。
「…これが、見せたかったものか?」
彼女の疑問は当然だった。見てからのお楽しみと言われてたどり着いたのがボロ小屋だったら、誰でもがっかりする。だけど彼はそれを気にする様子なく、小屋に呼びかける。
「プレイス、サクラちゃん、いる?」
彼がそう呼びかけると、中から一人の少女が出てきた。その少女は小柄だがマリーよりも少し大きく、全体的に凛々しさが漂う。サクラは呼びかけてきたのがフェングだということに気づくと、その表情の少ない顔に笑みを浮かべてフェングに駆け寄る。
「お久しぶりです、フェングさん」
フェングは変わらない笑みで言葉を返す。
「久しぶり、サクラちゃん。プレイスは本部に?」
「はい、曲兄は先日の報告書を届けに。フェングさんはなんの用で来たんですか?」
「うん、秘密」
「もぉ、フェングさんはいつもそればっか。たまには話してくれてもいいのに」
どうやらフェングは秘密事が多いらしく、サクラは呆れ混じりの笑みを返し、深くは詮索しなかった。
しかしそれよりも、マリーは自分が空気になってることの方が気になり、話に割り込む。
「おい、楽しそうなとこすまないが、私のこと見えてるか?」
「…フェングさん、なんですかこのガキは」
サクラは無表情でフェングに問う。しかし、その言葉はマリーの琴線に触れてしまったらしく、マリーはサクラに食って掛かる。
「ち、ガキだと…!?今お前私のことガキって言ったか!?」
「えぇ言いましたとも、このガキ!」
サクラはマリーのことが気に入らなかったらしく、強い当たりをする。その態度を見かねたフェングは話に割り込む。
「サクラちゃん、それは言い過ぎだよ。マリー、サクラちゃんはちょっと…」
フェングはマリー覇気に近いものを感じ、黙り込む。
「私は…だ」
「はい?なんてい…」
「私は今年で十五歳だ!!」
「…はい?じゅ、十五?」
サクラはマリーが自分より年上だったことに驚きキョトンとしている。しかしフェングはマリーが自分と同い年だったことをわかっていたらしく、思わず苦笑している。
「いやいやいや、どう見てもわたしと同じ年くらいじゃないですか!見栄張らないでください!」
サクラは納得がいかないようで、すぐに言い争いをはじめる。
「お前と同い年だって?じゃあお前は何歳なんだよ!」
「十三です!ですがわたしのほうが背も胸も…」
二人はそれをしばらく続けた。主に歳と身長のことで。ちなみに、サクラの身長は約150cmくらい。マリーは約140cmくらい。フェングが170cmくらい。マリーはこれからも身長でいじられ続けるので参考に覚えておいてほしい。
しばらくして、彼女たちは疲れたのか睨み合いながら息を整えている。フェングはそこに口を挟めず、傍らで傍観している。そしてここぞとばかりに口を挟む。
「もう、いいかな?」
「はぁ、はぁ、まだ言いたいことはあるけど、今はこれぐらいにしてやる」
きっとフェングはこのとき、「またやるのか」と思った。
「え〜、こほん。サクラちゃん、彼女はマリー。しばらく僕と一緒に旅することになった。マリー、彼女はサクラ。僕の友人の妹だ」
「よろしく」
「よろしくお願いします」
二人は口では利口だが、睨みあっている。
「二人共、仲良くしてね?」
「「ふん!」」
フェングはこの先、二人がどうしたら仲良くできるのか考えるのだった。




