仮想現実:地球外
「博士、どうしても地球に戻る必要があるんですか!?」不満と怒りをこめて言い放つ。博士は少し緊張気味に「どうしてもだ・・・。少しやっかいなことになった」
火星の移住計画よりも重要なことなのだろうか!?
「実は現在進行しているプロジェクトに重大なミスが発覚してな・・・。どうしても私が必要なんだ」
「そんなっ!地球はもう長くはもたないでしょう!?これからのことを考えると火星の移住計画を続けるべきです。そんなに地球が大事ならあなた一人で帰ればいいでしょう?」
地球が大事なのは彼女の生まれた星で思い入れあるからだろう。しかし私には関係のないことだった。
「機材は置いていってもらいます。それでも帰りたければご勝手に!」博士はしかないと諦め少し安心したように見えた。荷物をまとめる博士を引き止めたいとも考えたたが、決まったことを蒸し返すのは気が引けた。後日彼女と私はステーションから別々の方向へと出航した。
火星での移住計画が始まって10年経った今、もともとの状態からは想像もできないほどに変化していた。この星に純粋なヒューマンはいない。アンドロイド、クローン、遺伝子操作された生物、ヒューマンから見れば、人類のおもちゃ箱のようなところだ。
仕方がない彼らでは適応するのに時間がかかりすぎる。ちなみにこの星でヒューマンに近い存在は私だけだ。
今日も見回りから一日が始まる。まだアーコロジーが進んでいない区画は、完成図が立体映像として映し出されている。この計画は地味な作業の繰り返しなので根気と時間が必要とされる。そのため私は歳をとらないように設計されている。後から変えることもできるが計画が終わるまではこのままでいるつもりだ。
夢で見たことに少し脚色しました