出発!!
「ねぇ、いつ出発するんだ?」
「ん?今日の午後だけど?」
「夏休みの宿題は、どうするの?」
「・・・・捨てろ!!」
最終段階の修行も終わり、今日出発ということになった。夏休みの宿題なんてもう知らない。
持っていく物は、無かった。服も向こうの世界にあるという。その日も、快晴で下を見下ろすと小学生の子供がプールに走っていくのが見えた。
「おいっ!いくぞ!」
鬼衣瑠の掛け声により、オレの身は引き締まった。シャイングの入り口は、最後の修行でやったソウルを身にまとい、ベランダへ行くと開くという。オレは、天に拳を向けてあの言葉を云い、ソウルが体を包んだ。鬼衣瑠は綺麗なオレンジ色だった。(まっしーは鬼衣瑠の肩に乗っていれば大丈夫みたいだ)そして、鬼衣瑠はベランダを通り過ぎて行った。オレも追いかけた。
ゾクッ・・・・
少し寒気がしたが、無事世界と世界の空間の中に入れた。
「なんか変な感じだろ?」
周りがピンク色のせいか、鬼衣瑠がよく見える。
「変な感じって云うか・・・歩けてることが凄い」
ははっ、と笑い彼は色々と説明してくれた。
「まぁ、歩いてりゃ30分くらいかかるな、我慢しろ!あと、自分より強いと思ったヤツには敬語使えよ・・・常識だけどな。」
「鬼衣瑠は使ってるのか?」
そこらへんは、一番気になるところだった。
「いいえ。使っておりません」
まっしーの即答の答えには驚いたが、鬼衣瑠の堂々としている態度にも驚いたものだ。
「俺はいいんだ!睦は新人だろーが!・・・特に-零-ってヤツには敬語使ったほうがいいぞ」
零って人は、会えばわかるとそこまでしか教えてくれなかった。
「お前・・何型?」
「えっ?AB型だけど・・・」
突然、なんなんだ?聞く必要あるのだろうか。
「やっぱり!天才肌だっ!うんうんっ、そうだな」
オレは、からかわれながらシャイングに向かって行った。
空間を抜けると凄い風が吹いてきた。そして、霧が晴れたかのように大きな街が現れた。
「ここが、シャイングだっ!」
両手を広げ、鬼衣瑠は笑顔で云った。
シャイングは予想以上に綺麗な所だった。水も綺麗だし、緑も多い、風も気持ちい。何よりにぎやかだった。
「雷と炎の魂操者、鬼衣瑠様と付き添いの磨仔芦様ですね。そして、人間界からの雨の魂操者、睦様ですね」
お、おいっ!プライバシーの侵害ですよ!門番さん!なぜ、オレのソウルの属性と名前を知っている??ここの人すげぇー!
「あぁ、そうだっ。オレは本部へ行くが、睦は探検させてやってくれ」
「はい。かしこまりました。睦様、ここの地図でございます。広いのでゆったりと回ってきてください」
そう云われ地図を渡された。こう見ると本当に広かった。
「じゃあ、俺たちはちょっと本部行ってくるから。満足したらでかい塔とこ来て!」
何の本部かは、知らないがそれを承知しオレは歩き始めた。
本当に自然が多い場所だ。そして、人がよい。オレが歩いていたら、挨拶をしてくれたり、景色が綺麗な場所を教えてくれたりした。
「うわっ、凄いな・・・」
目の前には広大な草原があった。野花が咲いていてとても綺麗だ。オレは一瞬でここが好きになった。そして、寝転がってみる。暖かかった。上を見ると蒼い空が広がっていた。あぁ、空は同じなんだ。オレは、そのまま眠りについていた。
「君・・・・誰?」
小鳥のような声で眼が覚めた。目蓋を開くと、そこにはオレと同い年くらいの少女がいた。
「睦・・・だけど」
ボソリとつぶやくと、彼女はにっこり笑った。
「あなたが!きぃちゃんの!」
きぃちゃん?誰だ?勝手に手を握らないでくれ。頭が混乱しそうなこと多いなぁ。
でも彼女の手は、暖かかった。




