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約束、そして去る・・

      「オレの願いはもう決まっている・・・」


 零さんが逝ってしまってから、運良くオレには攻撃がこなかった。零さんとの別れも終わりオレは零さんを安全な場所へ置いてやった。でも、オレに攻撃しようとしたのは何なのだろう。この傷は、武器のようなものではなかった。

「零さん、オレ貴方を尊敬してましたから。零さんはここで楽しい思い出沢山作ったんですよね?人間界で作れなかった分・・・・幸せでしたか?」

オレは最後に零さんに向かって笑顔を見せた。このくらいしか出来ないから・・・。

立ち上がり前を向くと、鬼衣瑠が居た。オレを心配そうな表情で見ている。

「・・・零も逝ったか。本当にありがとな・・・」

「え?もって他の人たちも・・・?」

聞くのが怖かったけど、聞くしかないと思った。鬼衣瑠は、俯き話した。

「あぁ、皆零がやられたのと同じ攻撃でやられた。見に行った時は、もう遅くて・・・」

「・・・零さんオレを庇って死んだんだよ。本当はオレだったはずなのに」

悔しそうに話すと、鬼衣瑠は励ますように云ってくれた。

「零にとってお前は守るべき存在だったんだよ・・・」

その言葉が心に響く。

その時、後ろからもの凄い殺気がした。そこには、寛和が居た。

「泣かせますねぇ。フフ、仲間を庇って死ぬなんて・・・・無意味な!!」

笑いながら話す寛和の体から、黒いソウルが放たれた。そこには、これまで見たこともない邪悪な魔物が姿を現した。そうあれなのだ、オレたちが封印するという魔物は・・・。

「おい!寛和。零たちを死なせたのは、その魔物の攻撃か?」

痛い殺気に立ち向かいながら鬼衣瑠は叫んだ。

「えぇ、そうですよ。こいつの攻撃は一瞬で放たれ、眼には見えないんです。よく見えましたよね、あの零とかいう少年は・・・・」

さぁ、フィナーレですと云った寛和は、どこかへ行ってしまった。魔物はオレたちに攻撃をする準備をしていた。

「睦!!水竜を呼べ」

鬼衣瑠の一瞬の判断でオレは魔物の攻撃から身を守れた。水竜が守ってくれたのだ。鬼衣瑠も朱雀(鳥)と虎を出して身を守っていた。

「いっけぇぇ!!」

オレは水竜と共に魔物へ攻撃を仕掛けた。オレも驚くほど水竜の威力は凄く魔物にこれは効いただろうと思った。だが、魔物は少し傷が付いたくらいだった。魔物は唸り声をあげた。その声は地響きを起こすほどだった。鬼衣瑠も攻撃をするが、魔物の大きな体には敵わないのだ。次は魔物が攻撃をしてきた。オレたちは少し当たったくらいで、出血するというのになぜ効かないんだ。やっぱり威力の差だろう。これでは、弱らせて封印もできない。この魔物は封印を解いてはいけなかったんだ。このままでは、死んでしまう・・・・。その時寛和が帰って来たのだ。

「フフ・・貴方たちを殺せばこの世界は私のものになります」

それは、オレたち以外生きているヤツは居ないと云っているものだった。

「死ぬのは俺だけで良かったのに・・・」

ボソリと鬼衣瑠が呟いた言葉は聞き取れなかった。だが、鬼衣瑠は顔を上げて叫んだ。

「寛和!お前はどんな世界を望んでいるんだ??」

「私を中心とした魔物の世界ですよ・・・この国だけではなく違うところも行きたいですねぇ」

その言葉を聞いて鬼衣瑠は、また攻撃を始めた。オレもそれに加わる。

でも、何をしても効くことはなかった。オレたちが傷ついていくばかりだった。

その時、鬼衣瑠から衝撃的なことを云われた。

「睦、お前人間界に帰れ・・・。願い叶えてやるから」

攻撃をしながら呟くように云われたその言葉は、本気だった。

「何で!!何でこんな大変な時に帰らなくちゃいけないんだよ!鬼衣瑠一人置いていけねぇよ」

もちろん素直に、あぁ帰るなんて云えないだろ。でも、鬼衣瑠は続けた。

「このままだと、お前まで死んじまうだろ!!死んじゃあ駄目なんだよ。」

直に攻撃をくらってしまった鬼衣瑠は、倒れこんだ。

「何でそこまでして、オレを守るんだよ!!」

「昔、お前の姉さんと約束したんだよ・・・弟は凄い力の持ち主だ、将来迎えに来て戦わせるかもしれないって云ったら、あんたが絶対守ってって云われたからな・・・」

昔?姉さんと・・・?もしかして・・・・

「何をほざいているのですか?そんなに早く逝きたいのですか?ならいいでしょう。あの岩はこの魔物の攻撃を受けると爆破するようになってます。してあげましょう・・・」

寛和はオレたちをあざ笑い、攻撃を再開した。

「早く帰れ!!」

鬼衣瑠が手を伸ばすとそこに別の空間が出来た。そこから人間界に帰るのだ。でも、

「いやだ!ならオレずっとここに居る!辛いことだけでもいい、ここでまた楽しい思い出・・」

魔物の攻撃が岩に放たれるのと同時にオレは鬼衣瑠に押され、空間に入ってしまった。

「・・・・・・・・」

「!!」

鬼衣瑠がオレの願いを云うとニッコリと笑った。オレがこの世界を去るとき、聞こえたのは凄まじい爆発音だった。


 「睦・・・・強く生きろ!!」

鬼衣瑠が云ったオレの願いだった・・・・。

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