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第二話!!

 オレが母親と最後にした会話は、母さんがオレに「あんたに私は希望もなにも託してないから。あんたは、私にとって不必要な存在なの」と云ったことだ。オレはただ出て行く母さんの背中を呆然と見ていただけだった。


             〜弐〜

 「え〜っと・・・」

これはきっと暑いせいだ。オレの眼がおかしいんだ。自分で自分を納得させていた。目の前にあるものは、ありえないだろう。一つずつ整理していった。

1、 ベランダにウサギ(人形)が干してある

2、 同じく謎の少年が干してある

3、 これは現実ではない

このようなことである。眼を細めて何分か見ていると、ウサギの人形が動いた様な気がした。この現実を逃れるわけはできないと、感じたのか体がベランダに向かっていた。ちょうど差し込む夕日が眩しかった。そして、眼を少し下へ下ろすと苦しそうにピクピクと動くウサギの姿がある。

「あ、あのぉ〜だ、大丈夫ですか?く、苦しいですかねぇ?」

その人形を持ち上げてみた。そして、その顔が上がった。

「心配するならぁ、もうちょい早くしなさーーーーーい」

「ごふっ・・・」

その、小さい体からは想像もできないくらいの「蹴り」があった。机の所まで飛ばされたオレが眩しいながらも、前を見ると腰に手をやったウサギがいた。そう、これは現実だった。


「あ、あの、もう顔あげていいよ。気にしてないから」

さっきオレを蹴ったウサギは今オレの前で土下座をしていた。

「い、いえ誤らしてください。こんなウサギがいたら怪しむのが普通なのに・・・蹴ったりしてしてしまい本当に申し訳ありません」

涙は出ていないものの、声はすごい状態になっていた。もう気にしなくていい、そう何回も云っているのに、顔を上げない。正直、面倒だ。

「あ、あのぉ・・ご飯食べれますか?」

この一言でこいつの表情は変わった。

「はいっ、好きなものは飴玉に玉蜀黍、嫌いなものはしっけたお煎餅です」

ある意味操りやすい奴だった。


食事中にいろいろの話を聞いた。こいつの名前は「磨仔芦ましろ」年齢は不明。なぜここに来たのかは、教えてくれないが「鬼衣瑠きいる」という少年と来たという。

「・・・・で、まっしー(磨仔芦のあだ名)と一緒にきた、鬼衣瑠って子は?」

「えっ?さっきから私の横にいる・・・・・・」

まっしーは横を向いた。だがそこにはだれもいない。オレも見えないからいるはずも無い。

いない、いないと大騒ぎしているまっしーを見てオレは、一つ忘れていたことを思い出した。

「ねぇ、まっしーと一緒にきた子ってあの子じゃない?」

えっ?というようにオレが指さした方を向く。それは、まっしーと一緒に干されていた少年だった。そして、それは的中だった。

「き、鬼衣瑠様ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」

と少年に飛びついた。だが、鬼衣瑠はピクとも動かない。寝ているのだろう。ベランダに行き鬼衣瑠を抱きかかえると髪の色が目立った。白色にオレンジ色が少しかかっているのだ。身長は、オレより低い。もちろん体重も軽かった。

「き、鬼衣瑠様は、死んでないですか?」

大丈夫と答え少年をソファーに寝かせた。その日はぐっすり寝ていた。


布団をかけすぎたせいなのか、体が重かった。まだ寝ているのだが、何か・・・そう「金縛り」にあっているような感じがした。

「おいっ!起きろ睦!説明することがあるんだ・・・」

ナニカキコエル・・・?ナマエヲ、ヨンデル?睡眠についていながらもオレは、考えた。

「起きろっつてんだよ!」

そのパンチは、オレの頬に命中した。ようやく眼を覚ましたオレが眼にした者は、昨日寝たきりだった「鬼衣瑠」だった。その肩には、まっしーもいた。おはよう!とつぶやいた鬼衣瑠の笑顔は、朝日よりも眩しい。そんな様だった。

「うんっ・・・おはよう」


今日は、横にいる少年のせいで早く起きすぎた。まだ、眠気がさめない。そんな細い眼で鬼衣瑠を見つめた。よく見ると鬼衣瑠の顔は、整っていた。声も男らしい声で、ジャニーズでも入れそうな顔である。その横に・・・ウサギの人形か。

「一つ聞きたい。何でオレの家のベランダにいた?てか、何でオレの名前を知っている?」

パンにかぶりついていた鬼衣瑠に尋ねてみた。

「そりゃあ、オレがお前を選んだからだ。お前には「魂操者ソウルタティ」としての才能があるんだ」

こいつまだ寝ぼけてるんじゃないか?と思うような質問の答えだった。

「魂操者についての説明はあとだ。次はこっちの質問だ。この家には家族が居ないのか?」

自分でも、オレの顔色が変わったのがわかった。一番聞かれてほしくない話題だった。だが、こっちの質問に答えてもらったのだからこちらも答えなければいけないだろう。一息ついてオレは喋り始めた。

「家族全員で過ごしていたのは、オレが小学2年生までだった。そのときは、年の離れた姉が一人暮らしをすると出て行っただけだったんだ。そして、親子3人で過ごしたのはそれから2年だけだった。親の離婚、それはオレにとって悲しい出来事だったさ。オレは、母さんに引き取られた。だけど、ショックのせいかオレは思うような成績を学校で残せなかったんだよ。それからだよ・・・母さんの帰りが遅くなったのは。はじめはちゃんと帰ってくるには帰ってきてた。でもオレが中学1年の半ばには、帰って来なくなった。それからは、慣れさ!」

暗い話題をしてしまったので無理に笑うことしかできなかった。オレの胸の中は寂寥で埋もれている。

「わ、悪かった・・・そんなこともしらずに聞いちゃって」

鬼衣瑠が気を使ってきた。まっしーには手を握られた。涙がすぐそこまで押し寄せてくる。

「なぁ、魂操者ってなんだよ!いきなり云われてもわかんないって」

涙を我慢した。しなくてもいい空気だったのに。ふっと鬼衣瑠が笑った。

「しょーがねぇ!教えてやる。魂操者っていうのは人間が生まれつき持っている性質が強く、それだけで魂を操れる奴のことをいうんだ!その性質は何種類かに分かれていて、一人に1つ〜2つ持っているだ。この力が使えるヤツだけがオレたちの国「シャイング」にいけるんだ!」

オレの眼をずっとみて説明してくれていた。ありがとうとつぶやくと鬼衣瑠は、照れた様子だった。

「オレの性質は炎と雷だ!睦は・・・・水だ!」

「オレは、水の性質?」

そう、と答えたあいつは手から炎とスパークの様なものを出した。これが、魂操者の能力なのだと云う。

「よっし、おい睦今から練習だ!」

「悪い。オレ今から学校だから!3時くらいには来るから、待ってて!」

コクリと鬼衣瑠とまっしーは頷いた。

「いってきます!」

何年かぶりに云ったいってきます・・・だった。


 

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